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Story6

 闇。前後も左右も分からない、暗闇。その中に、存在感を放つ扉がそびえ立つ。その扉の向こうからは、水の流れる音と人間の賑やかな声が聞こえてくる。

 扉の前には、黒猫が丸まっている。ここは、「未成年者の自殺者の魂」がやってくる空間。この黒猫は、この扉の門番である。ここへ来た魂に選択肢を与え、送り出す役割をしている。

 今日もまた、一つの魂がやってきた。


 「・・・問おう、何故に自ら死を選んだ?」

 「僕、周りからしたらネクラらしくて、でもそれは別に構わないんだ。周りからどう思われようと。だけど、なぜか全校生徒からいじめられて・・・耐えられる訳ないじゃないか・・・。」

 魂は悲しみに明け暮れた色をしている。黒猫がその話を詳しく聞いてみると、友人はそれなりにいたという。彼は友人としか仲良くできず、友人以外の人間には上下関係などお構いなく冷たく接していたらしい。それが仇となってか良くない噂が出回り、全校生徒の攻撃対象となってしまい、それに耐えきれず首を括った。事の顛末を聞いた黒猫は問う。

 「とりあえず、お前の名前を聞こう。」

 黒猫が問いかけると同時に虚空から現れる名簿とペンが準備を整える。

 「蔵本 晨暉(くらもと まさき)です。」

 「歳と性別を。」

 「16、男です。」

 書き留めると動きを止め、ふわふわと浮いている。そしていつものように、

 「では、お前に現世を見てもらおう。」

 黒猫のひと鳴きで蓮池鏡が現れる。映し出したのはどこかの学校。景色がコロコロ変わり、いろんな生徒が映し出される。だが、校内で自殺者が出たというのに、自分たちがいじめた人間が死んだというのに校内は普段通りだ。ふざけあったり、話し込んだり、笑いあったり。その反面、学校としては対応に追われているのか、教師たちは何とも言えない顔をしている。

 生徒たちの魂は、皆それぞれの色。楽しんでいる色だったり、無の状態だったり。会話が至る所で盛り上がっているため、うるさすぎて聞き取ることができない。

 次に映し出したのは、おそらくこの魂の家。両親と思われる大人を映し出すと、悲しみに明け暮れていた。母親は寝ていないのか、クマのある顔はだいぶやつれている。父親は何とか仕事には行っているが、帰ってくるとほとんど身動きを取らない。残念ながら会話もほとんどないようだ。

 両親の魂の色は、ここにやってきたときの晨暉と同じ色。それ以上かもしれない。今の彼の魂の色は、少量の怒気と、少量の後悔と、多少の悲しみの色。人が変わったような両親を見て悲しんでいるのだろう。

 もしかしたら、両親は精神的な病に侵されているのかもしれない。そんなことを考えているのだろう、魂の色は大きく波打っていた。

 そして黒猫は、いつもの話を切り出す。

 「お前は、どうしたい?」

 「・・・どう、とは?」

 「あの学校に戻るか、一生安泰で過ごすか。」

 「もうあんな所にはいたくない・・・!」

 魂は怒号を上げる。学校の様子を見て怯えたのだろう。否、フラッシュバックしたのだろう。一体どれだけの苦しみを受けていたのかは知らないが、魂は小刻みに震えているようにも見える。

 「親には申し訳ないけど・・・、あんな所にいたくない。」

 「学び舎が嫌なら、変わればよいではないか。」

 「きっと、僕の性格ならどこへ行ったって同じさ。今は通信教育もあるけど、就職のことを考えると厳しいかな、って。」

 「・・・分かった。」

 黒猫は扉の下に行って鳴き声を上げる。重い音を響かせながら開いた門の先には、たくさんの『人間』がいる。黒猫に案内された魂は吸い寄せられるように門をくぐっていく。『人間』に戻った魂は、その輪に溶け込んでいく。

 開門と同様、重厚な音を響かせながら閉まりゆく門を見届けると、黒猫はいつもの場所へ戻る。名簿に「死」と書き留めてあるのを確認した黒猫はため息を一つついた。

 名簿がもう半分まで埋まった。「もう半分」なのか、「まだ半分」なのか。黒猫はどこか遠い目をしながら考えていた。名簿と黒猫には因縁がある。名簿がすべて埋まると、黒猫は務めを果たさなくてはならない。黒猫は何をすべきか知っている。決して良いとは言えない記憶を思い出したがゆえに苦い顔をするも、頭を横に振って切り替える。いつもの凛々しい顔に戻す。

 「・・・あの名簿が全て埋まるのも、そう遠くはないかもしれないな。」

 そんなことを呟き、黒猫はあくびをする。

私生活が忙しくて何一つ進んでおりませんが、なんとか生きています。

完結させたい・・・

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