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Story4

 闇。前後も左右も分からない、暗闇。その中に、存在感を放つ扉がそびえ立つ。その扉の向こうからは、水の流れる音と人間の賑やかな声が聞こえてくる。

 扉の前には、黒猫が丸まっている。ここは、「未成年者の自殺者の魂」がやってくる空間。この黒猫は、この扉の門番である。ここへ来た魂に選択肢を与え、送り出す役割をしている。

 今日もまた、一つの魂がやってきた。



 「・・・問おう、何故に自ら死を選んだ?」

 黒猫はいつもの静かな声で魂に問いかける。

 「俺は、・・・いつの間にかツレの借金の連帯保証人になってたんだ。でもツレが逃げやがって、毎日のように借金取りが俺の元へやってきたんだ。そんなだから、近所の人からは後ろ指さされるし、会社の人間にもバレて居場所がなくなって・・・。額もデカかったから、とても俺じゃ手に負えなくてさ・・・。」

 「フンッ、しょうもない理由だな。」

 黒猫は退屈そうに欠伸をする。

 「・・・は?」

 魂は困惑した雰囲気を醸し出しながら浮いている。黒猫は、いつもなら問いかけをしてから開くはずの蓮池鏡を出現させ、半ば強制的に現世を見せる。魂が驚いているのをよそに、蓮池鏡が映し出した場所はどこかの事務所のようだった。真ん中には高級そうな革製の黒い3人掛けのソファが、透かし彫りを施したガラステーブルをはさんで向かい合わせに2脚置いてある。テーブルの下には大型動物の白い毛皮が敷いてある。視点が変わって部屋の一角を映すと、質素な事務机が置いてある。後ろの壁には、テーブルの下にある毛皮とは違う、黒い大型動物の毛皮が掛かっており、その横には木刀や小太刀、脇差などが壁の刀掛けにかけてある。明らかに普通の人間たちがいるような空間ではない。それは黒猫でも分かった。すると複数の男が入ってきた。

 『おい、アイツ死んだじゃん。どーすんだよー。』

 『知らねぇよ。俺が知ることか。』

 ふてぶてしい態度で革製のソファに座って仕込み刀を手入れする一人の男。魂はその男に反応を示す。

 「アイツ・・・!」

 「ふむ、面白いこともあるもんだな。彼は取り立てる側の人間になったんだな。」

 「いつの間にアイツらの仲間に・・・!」

 「訴えようと思えば訴えることもできたのに。」

 「え・・・?」

 魂は疑問の色に変わる。

 「人間の世界には法律というものがあるだろう?脅迫やらなにやらで訴えればよかったではないか。あと、お前は監禁まがいのこともされていたらしいな。材料はいくらでもあるじゃないか。」

 「・・・はぁ。」

 「殺されかけたこともあるな?」

 「・・・はい。家ん中で待ち伏せしてて、リンチ状態でした。」

 「裁判というものもあるのだろう?人の世のことはよく分からんが、争おうとは思わなかったのか?」

 「・・・。」

 難しい話をしたからか、現世を受け止めきれなかったのか、魂は小難しい、困惑した色をしている。

 「そういえば、まだお前の名を聞いていなかったな。」

 いつものように虚空から名簿とペンを出現させる。

 「お前、名はなんという?」

 「安藤 賢(あんどう げん)。男です。」

 「歳はいくつだ?」

 「18です。」

 まだ若いのに苦労人だな、と黒猫がうなっている横で、ペンは名簿の上をすらすらと走っている。

 「お前はこの後、どうしたい?」

 「・・・どうしたい、とは?」

 「生きるか、死ぬか。」

 「え・・・。」

 黒猫はそれから先は何も言わず、未だ開いている蓮池鏡を眺めている。伏せた状態で尻尾をふわふわと動かしながら眺めていると、魂は言った。

 「・・・俺、アイツに一発お見舞いしてやりたい。」

 「ふむ、分かった。」

 黒猫はひと鳴きで扉を開ける。

 「この先をずっと進め。そうすれば、お前は現世に行くことが出来る。」

 「・・・分かった。ありがとう。」

 「せいぜい頑張ることだな。」

 初めて言われた感謝の言葉に驚き、黒猫はいつもと違う調子で、いつもは絶対言わない言葉を言ってしまった。魂を見送ると、扉は勝手に閉まる。ペンは「生」に丸を付けると、音もなく名簿と共に消える。


 ある暇な日。黒猫がうとうとしている目の前に突然蓮池鏡が出現する。黒猫は驚き飛び上がって毛を逆立てるが、蓮池鏡が映し出したものを見て目を細める。

 『・・・・・・被告人・・・は、懲役・・・年の有罪判決とする。』

 人の世の裁判所だ。その場にいる人間は黒猫にも見覚えがあった。


黒猫は結末を見届けると、再びうたたねをする。

この加筆修正シリーズは、今年は持つぐらいの量あります。

そして相も変わらず同時進行の方は進んでおりません。

恐ろしく進まないストーリー・・・、私でも筆折りそうだわ・・・(でも折らない)

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