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ルーティン・ルーティン

作者: ameri_snow

数年前の僕はだらしない男だった。

寝る時間も遅く、起きる時間も遅く、出社する時間も遅かった。

遅いと部屋の片付けも出来ず、税金の支払い期限も忘れてしまい、督促状が届いて初めて行動に移す。


僕はダメな人間だった。


————だったのだ。


遅刻ギリギリで出社したある日。

エレベーターで乗り合わせた女性に恋をした。

一目惚れだった。



ただその日の僕は特に酷くて、髪はぼさぼさ、汗も滝のように流していて、ネクタイもしていなかった。

多分同じ社会人とは思われなかっただろう。

それぐらい酷かった。


だからすぐに目を逸らした。

死にたいと思った。


その日はもう最悪で、過去のミスの発覚と集中力が切れて更にミスを重ねた。

もう働きたくないと思った。


でも同時に今のままの僕ではいけないとも考えた。


次の日から見た目を変えようと努力した。

だが起きる時間が遅いため、ろくに整えることもできない。

慌てて出社すれば、身なりも乱れ、無駄に汗をかいてしまう。

それに眠たくて頭も回らず、行動も後手になった。


そこで僕は眠る時間を早めた。

頭をすっきりさせなければ何もできない。そう感じたからだ。

だが中途半端な時間に目覚めてしまう。

調べてみると、食事をとる時間が遅すぎるのが原因のようだ。


なのでまずは18時までに、遅くても19時までに夕食をとるようにした。

すると就寝時間も寝つきもだいぶ良くなった。


朝早く起きられるようになると、片づけをする時間が確保できるようになった。

更にはゆっくり出勤ができるようになり、仕事に対するアプローチまで変わった。


それだけで満足しそうになった僕だったが、ある日を境に彼女と共に仕事をすることが増えた。


これはチャンスだと思った。


ただ同時に今のままでいいのだろうかと考えた。

実はもっと変えられる部分があるのではないだろうか。


そうなると今度は仕事に対する姿勢が変わった。

まずは本を読んだ。

読んだ後は実行に移した。

実行すると別で分からないことが増えた。

その度に本を読んだ。

時には人に聞いたりもした。

そうして仕事ができるようになればなるほど彼女は僕を頼りにしてくれるようになった。


ある時彼女を食事に誘った。

でも感触はそこまでよくなかった。


仕事ならなんだって出来るのに、男女についての問題になると分からないことだらけだった


だからまた本を読んだ。人に話を聞いた。

そしてまた声をかけた。


そうしているうちに彼女の優しさに気付いた。

学ぶほどに過去の僕がどれほど不格好だったかを知った。

それでも楽しそうにしてくれていた彼女。


ますます彼女のことが好きになった。


僕は頑張った。

人生でこれ以上ないって程に頑張った。

そのおかげか告白は成功した。

最高だった。


そんな幸せに浸っているとしばらくして同棲が始まり、結婚をした。


まさか自分が結婚できるとは思ってもいなかった。

そしてその先もあるとは想像も出来なかった。


きっとこれからの人生毎日が幸せだ。そう信じられた。


——ただ

これまでのルーティンを変える必要があった。


自分を支えてきた習慣。

それを変えてこれから先やっていけるのだろうか。

急に不安になった。

不安なったことを誰に話そうかと考えた。

誰に話すべきか。

答えは分かっていたけれど怖かった。

そんな経験もまた初めてだった。


間をおかず不安になったことを妻に相談した。

相談していい人だと信じて相談した。

すると彼女は笑ってこう言った。


「早起きはいいことだからそのままでいいと思う。掃除や片づけは一緒にやろう。筋トレは少し苦手だから初めは教えてほしい……お弁当はそうだね。私が作ってもいいかな?」


その言葉に僕は彼女を抱きしめた。


ただこれで終わりではなかった。

彼女は僕の腕の中で続ける。


「その代わりに私は私の習慣があるから聞いてほしい」


僕は彼女のすべてを知ったつもりでいたが、そう言うにはまだまだ知らないことがたくさんあるのだろう。だから僕は頷く。


「うん。聞かせて」


そしてこれから僕らの二つ目のルーティンが始まるのであった。


変わる事。変えないといけない事。いい結果が出ている中で変えなければいけない事。私たちって不思議な存在だと思う。ただ趣味が出来ると途端に怖くなる話だよね。

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