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すぐに読める短編の集  作者: 狩人二乗
学生時代の短編
10/16

崩壊までのカウントダウン

最近はやりの200文字小説に挑戦

 この世界は残り一日で崩壊する。

 僕がその事実を知ったのは、ちょうど三時間前の早朝だった。白服を着て怪しげなマスクを被った集団が、僕を無理矢理部屋に連れ出してこの事実を伝えてきたんだ。

 僕はそれからというもの、急いでこの世界を崩壊させる原因を探ろうとした。

 まず最初に見つけたのは、河原で遊んでいる子供達だった。五、六歳くらいの子供が二人で寄ってたかって白いチワワを虐めている。蹴ったり殴ったりを、キャンキャンと悲鳴をあげるチワワへ繰り返していた。

「やめろ! そんなことをしたらチワワ星の奴らが地球に攻めてきて世界が崩壊するぞ!」

「「いきなりおじさん何言っちゃってんの!」」

 やべーよたくちゃんこのおじさんあれだよよく聞く春の報せとかいうやつだよあーそうさあんちゃん間違いねーよこのおじさんやべーよと僕を見ながらぼそぼそ呟いた子供達はその後走り去って行った。よし、よし。これでチワワ星からの侵略は阻止出来た。これで世界は崩壊しない筈だ……。

「いや、ちょっと待てよ……」

 さっきの子供達が実はチワワ星に住んでいる変身可能なチワワなんじゃないか?よくよく考えてみたら子供がチワワを虐めるなんてベタなシチュエーションに鉢合わせ出来る訳がない。

「……マズイぞこれは!」

 つまり今のは地球人の器量をはかる試練! そして僕は単なる変なおじさんという評価を貰ってしまった!

 世界が崩壊してまうぞ!

「まてそこの子供達! 地球人の代表として話しがある!」

「「同じ地球人目の前にして何代表宣言しちゃってんのこのおじさん!」」

 やべーよマジやべーよやばさの度合いで言ったら昨今のゆとり教育並だよああたくちゃんあれはヤバかったなよかったよ俺達一瞬後に生まれてというかおじさんやべーよマジ顔で走ってくるよと叫んでいるチワワ星人(擬態化)だったが僕はおおいに構わない。とにかく誤解をとかなくては。

「おいチワワ星人!」

「どっちのこと言ってんだよおじさん!」

「てか今更だけど失礼過ぎるだろチワワ星人って! 犬なのか宇宙人なのかどっちかハッキリしろよ!」

「落ち着いてくれ! 僕は危ない者ではない! 故に君達に危害は加えない!」

「現在進行形で危害を加えてんだよおじさん!」

「え? あんちゃん、現在進行形ってどういう意味?」

「現在もこれからも続く事柄って意味だよ!」

「へぇ……深いねぇ」

「おじさんは黙ってろ!」

 やべーよおじさんやべーよフンフン言いながら迫って来たよたくちゃんうおおお近い近いこのおじさん鼻息が荒いうんまさに荒川アンダーザブリッジだねうるせーよあんちゃんと叫び合う子供達だったが、私はついに二人の肩を掴むことに成功した。

「悪い子はいねぇがー!」

「「悪い大人はいるよ!」」

「す、すまない。悪ふざけをしてしまった。落ち着いて話そう。えーと……ご趣味は?」

「お見合い!」

「おじさんが落ち着けよ! というか俺達おじさんが落ち着いたシーンを見たことないよ!」

 やべーよおじさんやべーよてか俺達これまでだけで何回やべーよって言ったかなあんちゃんそりゃお前あれだよえーとえーとやべーくらいだよその濁し方流石だよあんちゃんと未だ叫ぶ子供達の両肩を掴む私の金的に、いきなり大打撃が襲い掛かってきた。

「はうぅ……!」

「はん! どうだ俺達の急所への蹴りは!」

「これぞまさしく『子供の中の子供の最適』だね!」

「……そんなことわざあったっけ」

「ないね!」

「ないんかい!」

「てな訳で! じゃあな変なファッションセンスのおじさん!」

「チワワ星人なんている訳ねーだろバーカ!」

「これぞまさしく『バカって言う方がバカ』だね!」

「俺をけなしちゃってるよあんちゃん!」

「けなしちゃってるね!」

「けなしちゃってんのかよ!」

「「てな訳で! じゃあなおじさん!」」

 やばかったなあのおじさんやばかったよなおうよあのおじさんやばすぎるよあんなおじさんに絡まれた俺達はある意味ラッキーだよあんちゃんえっ俺達ラッキーなんかじゃなくてアンラッキーってああそうかそういうことか流石たくちゃんつまんねーと言いながら子供達は去っていく。待ってくれと言いたかったのに、股間の刺激が僕の口を閉ざす。駄目だ。想像以上にあの一撃がこたえたらしい。

 あれ?

 そう思っていたら、目の前が揺れ始めてきた。そうか……この世界はもうすぐ滅びるのか……。まあいい。しょうがない……さっきの子供達を道連れに出来るのならそれでいいさアッハッハ!

 さあ神よ! 御託はいらない! 僕はもう諦めた! 一日なんて言わずに今すぐ世界を崩壊させろ! 僕のこの病院服のボタンをわざと真ん中だけ外して着こなすという天才的ファッションセンスを侮辱したあの子供達を道連れに!

 バタリ、と僕は荒川アンダーザブリッジに倒れた。

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