主人公は俺
「これで、終わりだ」
俺はおもむろに包帯を解き、巨大な魔獣に向かって左手をかざした。
(きたきたきたー!これよこれ!)
ニヤつきを必死に堪える。
(たしか魔法はイメージが大事って、ラノベに書いてあったな)
地面が大爆発する様子を一生懸命イメージする。
魔力の込め方...はわからないので、とりあえず手のひらをギュッとしてみる。
(よし!)
「極大魔法 アースエクスプロージョン!」
とりあえず、カッコ良さそうな名前を叫んでみると、あたりが暗くなる。
(あれ?こう言う感じ?)
予想外の展開に、ちょっと焦る。
なおも怒り狂い、突進してくる魔獣。
(あ、あれ?爆発!ほれ!ほれ!!)
焦るとつい、右手(本当の利き手)が出てしまう。
(だって、左利きの方がかっこいいじゃないか!)
そう、彼は中二病だった。
空がパッと明るくなり、鳴り響く轟音。
イメージとは違ったが、魔獣が大爆発したことに安堵する。
(次はもっと、しっかりイメージしないとな!)
大爆発したあたりから猛スピードで土煙が迫ってくる。
が、逃げるわけにはいかない。
かっこ悪いからだ。
数秒も経たない間に、熱風に包まれる。
顔が痛い。
体も痛い。
急所だけはこっそり手で隠した。
身体のすぐそばを、大きなものが通りすぎる。
1つや2つではない。
岩だ。
当たればひとたまりもない。
でも、かっこ悪いので耐える。
正直めっちゃ怖い。
数分は経過しただろうか。
熱風がやわらぐ。
薄目であたりを確認する。
後ろのほうにいたヘルメットの人が、伏せていることを確認して、急いで埃を落とす。
魔獣の足音やけたたましい鳴き声はもう聞こえないので、無事に倒せたようだ。
ヘルメットの人が俺に気付く。
「すまない。騒がせた。」
俺はなんでもないことのようにそう言うと、そこから立ち去った。
(ふふふ、異世界チートさいこぉおお!)
「あの、お名前は」
「ディーター。
ディーター・フォン・デンツだ。」
適当に考えたドイツ語っぽい名前を言い残し、俺は土煙のなかへ消えていった。