女神様の観察
転生の女神は、正直暇だった。
転生以外、ほとんどやることがない。
転生がたくさんあるわけでもない。
一応、転生者の監視も業務ではあるのだが。
チートを得た人間の行動は、だいたい決まっている。
英雄になりたいもの
スローライフを満喫したいもの
ひたすら強さをもとめるもの
そして監視の目的である、"悪事を働くもの"だ。
ちなみに"悪事"とは、世界の存続に関わる事を指す。
極端な話、文明が滅んでも世界が存続できるなら報告不要である。
しかし、今回の転生は...
「あのチカラ。
あの強運...
放っておいてもいいのかしら」
世界を変える強運なのは確かだ。
しかし変わったからと言って、世界が滅亡するとも限らない。
あと、彼はまだ何もしていないのだ。
"念の為"では報告する理由にならず、手段もない。
「まぁ、彼なら大丈夫でしょ ふふふ」
というわけで、久々に監視業務をやってみる。
「さて、まずは転生直後から見ていきますか。」
女神の空間には時間の流れがない。
よって、地上のどの時間も監視できる。
一応未来もみれるが、問題がある。
無数に存在する ということだ。
過去と現在は確定しているため、1つしかない。
しかし、未来は未確定であり、無数の可能性が存在する。
よって、みても参考程度にしかならないのだ。
「えーっと...ふむふむ」
まずは、いろいろと試しているようだ。
「やっぱり話し、聞いてなかったのね...」
「次は...
装備。なるほどね。」
「あの貨幣表...」
彼の運が働いているようだ。
「そして...っと...え?」
路地裏で人助けしている...ように見える。
しかし、おかしい。
「速すぎる」
彼の身体能力が高すぎるのだ。
あの世界の住人は、彼が元いた世界より、平均的身体能力が高い。
そこに馴染む身体を与えたのだから多少、向上する。
しかし。
「なんで?
確かに、転生体の能力には多少のばらつきがあるけど
そこに...あ...」
そう。彼の運だ。
「だからってあんな...」
どう考えても異常だ。
ギルドの扉を開けた動きでわかる。
「何の訓練もなく軽々と...」
そして、さらなる懸念。
「あれはおそらく、ほんの一部。
彼のイメージが身体に追いついていないんだわ..」
身体だけ強くとも、それを動かすイメージがなければ、本領を発揮することなどできないのだ。
そして思う。
「ま、今回の転生は、退屈しなさそうね」
ダメだったら報告するだけなので、意外と気楽なのだった。




