初めての納品
(なんとかなってよかった〜
こんな綱渡りは、2度とごめんだけどな)
安堵して、街へ急ぐ。
今日は薬草を納品して、ちょっと贅沢なごはんを食べる予定だからだ。
(...ん?あれ?)
カバンが軽い。
いくら身体能力が高いとはいえ、軽すぎる。
(ま、まさか...
やっぱり。)
森を走ったからか、爆風でなのか。
カバンに穴が空いており、中身はほとんどない。
あんなに採取した薬草も、3本しか残ってなかった。
(ほとんどタダ働きか...
3本あれば、夕食代くらいにはなるかな)
どっと疲れが押し寄せ、空を仰ぐ。
(....まぁ、怪我人が出なくてよかった。か。)
トホホってこういう感じかと思った。
俺は気を取り直し、街へ向かった。
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街に着くと、何やら門のあたりが騒がしい。
気になって、門番に尋ねる。
「なにかあったのか?」
「何かって、さっきの隕石みてないのか!?」
「隕石?しらないな」
「そんなはずないだろ?
あんなに派手だったのに?」
「森にいたからな。わからない。」
「じゃあ、巨大な魔獣が出たって話は?」
「それなら、逃げてきたヤツに聞いたな。」
「そうか!
いきなり爆発したとかなんとか
どうにもみんな混乱してるところなんだ」
「そうか。
それで、街へは入れるのか?」
「え?
あ、ああ、問題ないが...」
「そうか。」
とだけ言い、街へ入る。
(魔獣は...俺がやったって証拠もないしな。)
黙っていることにした。
なにしろ登録したばかりの最低ランクだ。
討伐したと報告したところで、嘘つき呼ばわりされるのがオチだろう。
(そのほうが、なんかかっこいいしな。うん。)
街へ入ると、昨日とは違い慌ただしい雰囲気だった。
逃げるように荷車を引く人。
非常食を高値で売りつけている人。
呑気に酒を煽る人。
さまざまだった。
(こんな状態で、納品なんてできるのかな?)
とりあえず冒険者ギルドへ向かった。
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ギルドへ着くと、人々が激しく出入りしている。
(あ、あんなところにドアが..
どうりで使いずらいと思った..)
デカい扉の脇に、小さい通用口があった。
みんな、そこから出入りしている。
俺もそこから入り、カウンターへ向かう。
ギルド内は、ものものしい雰囲気で職員や冒険者たちが走り回っている。
「魔獣討伐のクエストは!?」
「なにぃ?もういらない!?」
「なんだそれ聞いてねぇぞ!」
「やめとけやめとけ。
お前なんかが受けられるわけねぇだろ ははは!」
「隕石落下地点の調査は?
俺たちがいってやろうか?」
「す、すみません!
ギルド内の情報が整うまでクエストは...」
(すごいことになってるな...)
納品カウンターに目をやると、一応人がいた。
浮き足だった様子だが、なんとか納品はできるようだ。
「忙しいところすまない。
納品を頼めるか?」
採ってきた薬草を、カウンターに置く。
「え?薬草?
あの、いま...え?この状況で?え?」
ずいぶんと混乱しているようだ。
「忙しいようなら、出直すが」
その言葉にハッとしたのか、落ち着きを取り戻す。
「だ、大丈夫です!
えーと、薬草が...3本
1本はダメになっているので、2本ですね。
よろしいですか?」
「構わない。」
「ありがとうございます。
こちら、報酬です。」
「ありがとう。」
帰ろうとする俺を、納品係の人が見つめる。
「...何か用か?」
「い、いえ、あの...」
「そうか。
図鑑も借りていたな。
すまない。失くしてしまったようだ。」
「そ、そうですか
では、弁償金をいただきます
よろしいですね?」
「構わない。」
俺は、提示された額を払う。
「確かに。確認しました。」
「すまなかったな。」
そのまま平静を装い、ギルドを後にする。
(ぐぁぁあ!
図鑑のことわすれてた!
収支はマイナスか...痛いな..はは。)
内心、すごくがっかりしながら宿へ帰るのだった。




