隠蔽スキル
路地裏さんを追いかけることにした。
それはいい。
しかしここで、大事な問題がある。
(かっこいい登場がしたい)
大事なのである。
かっこいい男は
"あのぉ、この先モンスターが居て危ないですよ"
などと、声をかけることはないのだ!
(理想は、危ないところをさっそうと助けるなんだけどなぁ...)
しかし、ここにも問題がある。
危なくなるまで待たねばならないのだ。
(それは却下だな)
かっこいい男は、自分のエゴのために女性を危険に晒すことなどしないのだ!
(というか、モンスターに勝てるかわからないし
そうなると、残るは...)
残るは...と言ったものの、他に案がない。
よって、とりあえずこっそり追いかけることにした。
(まごまごしてると、路地裏さんがモンスターと遭遇しかねないものな)
さて...といったところでまた考える。
(こっそりバレないように...って、どうやるんだ?)
普通のサラリーマンだった俺は、当然尾行などしたことがない。
(そうか!気配隠蔽スキル!)
まだ試していないが、もしかしたらいけるかもしれない。
なぜなら、女神様は偉大だからである!
(よし...探知と同じ要領で...)
「隠蔽!」
思いの外大きな声が出たので、少し恥ずかしくなる。
(んー、なんとなく、隠蔽できている気が...するぞ!
...バレちゃった時は正直に話そう)
これ以上は彼女の安全に関わると思ったので、すぐに追いかけることにした。
(なんともないのが1番だけどな)
走り出したはいいが、路地裏さんに一向においつかない。
(やっぱり、考えごとの時間が長過ぎたか...)
少し後悔する。
(それにしてもすごいな)
俺の身体は"この世界になじむように"と女神様が作ってくれたものだ。
そのおかげで、信じられないスピードで走れる。
にもかかわらず、路地裏さんには追いつくことができない。
("馴染む"って、こういうことか)
街ではまったく理解していなかったが、この世界の住人は身体能力がとても高い。
(ギルドの扉だって、前世じゃあんな大きい扉動かせないものな)
女神様へ感謝しながら、俺はスピードをあげた。




