新しい君の一面との出会い
瀬奈を見送った後のみんなの様子とは?
保健室では瀬奈が大人しく待っていてくれた。
もしかしたら別れた少しの間泣いていたのかもしれない。若干目が赤かった。
私を見ると少しだけ目を伏せた後に「ありがとう」といって荷物を受け取る。
過保護かもしれないが校門までは送るよというとまた「ありがとう」と言って大人しく従ってくれた。
その間特に私たちの間に会話はなかった。
校門まで送ると瀬奈は「今日は本当にありがとう」と言って学校を出て行った。
両親はどうしても都合がつかなかったらしく自分で帰ることになったみたいだ。
折角なら家まで送りたかったけど私にも学校があるし過保護すぎるかと思い見送ることにした。
教室に戻ると守と瑠依と話していた。
「少しは落ち着いたか?」
瑠依が守の様子を見て確認する。
「あぁ、ありがとう…もう大丈夫だ」
「しかしそんなに取り乱すなんてな」
瑠依が珍しいと言うように守に言う。
「瀬奈は大丈夫だよ」
私は会話が切れたタイミングで話に入った。
瑠依と守は私の話を聞いて少し安心したような顔をした。
そして予鈴のチャイムが鳴り授業が始まる。
瀬奈の様子を考えていてあまり集中出来てないことは明確だったが一旦切り替えようと思い、授業を受け始めた。
麻美や守の様子を見て今回のことに関して考えてみたがどうにも考えがまとまらなかった。
とりあえず麻美に相談してみることにした。
少し呆れられるかもしれないなと考えながら授業に向き合った。
朝からバタバタしてた学校も何とか終わり麻美と守と一緒にいつも通りに帰宅する。
いつもはここに瀬奈もいて盛り上げてくれてるが今日はとても落ち着いていた。
たまに言葉を交わすくらいで基本は皆無言で自宅まで歩いていく。
交差点に差し掛かり守とはそこで別れた。
終始無言だったけど守も少しは落ち着いてきたようだった。
2人っきりになり僕は麻美に声をかける。
「今日はお疲れ様」
「ありがとう」
麻美が笑いかけてくれる。
やはり気を張っていたようだった。
それを皮切りに雑談を繰り返していくと自分たちの家の前に着いていた。
「それじゃ…」
無理に引き止めて話すのも気が引けたので話を切り上げて自分の家に戻ろうとする。
足を動かしたタイミングで引っ張られる感覚がありその部分に目を向けると麻美が僕の服の袖を引っ張っていた。
「もう少し一緒に居れないかな…? 」
麻美が潤んだ目で見つめている。
その頼みを断ることは僕にはできなかった。
そして何度目かの麻美の家にお邪魔することになった。
「ただいまー」
「お邪魔します」
それぞれ挨拶をすると麻美のお母さんがキッチンから出てきた。
「あさちゃんおかえりなさい、あら、今日は瑠依くんも一緒なのね」
少しだけびっくりしたように声を出しながら暖かく歓迎してくれる。
やっぱり安心すると感じて呆けていると麻美に服を引っ張られる。
「ほら、私の部屋に行こう?」
言われるがまま麻美の部屋に行くことになった。
麻美の部屋は整理されていてあまり無駄な物はなかった。
部屋を見ていると麻美が「あまりジロジロ見ないで」と抗議してきた。
「ごめん」
一言謝るだけ謝ってベッドに座る。
麻美も椅子に座ってこっちをじっと見ている。
お互い話のきっかけが出てこない。
暫く時間が経った時にたまらず僕から聞いてしまった。
「それでなんで今日は呼んでくれたの?」
麻美はそれを聞いて少し恥ずかしそうにしながら顔を赤らめた。
「ちょっと気持ちの整理がしたくて…」
「気持ちの整理....?」
麻美は首を縦に振る。そして言葉を続ける。
「瀬奈と守が喧嘩してるのを見てて私と瑠依もそうなったら嫌だなって…」
何故、そんな話になったのかさっぱり分からない。
「別に喧嘩するようなことしてないと思うけど…」
それを言うと麻美の欲しかった言葉じゃなかったらしく首を横に振る。
「瑠依とはずっと一緒にいたい…」
そのままぎゅっと強く抱き締めてくる。
華奢な麻美が全力で抱きついてきても痛みはないけど心地よかった。
そしてその言葉は僕がずっと願っていた事だった。
「僕もだよ…」
一言だけ言って麻美が痛くならないくらいに同じように抱き締め返した。
「ねぇ、麻美」
名前を呼ぶと少し潤んだ目が僕の事を見つめる。
「俺と付き合ってくれないかな?」
麻美が少し驚いた顔をして口をパクパクしている。
いつも冷静な彼女にしては珍しい光景だった。
僕はあらためて麻美に伝える。
「僕と付き合って欲しい、お願いします」
麻美は再度顔を赤くした後首を縦に降ってくれた。
「是非よろしくお願いします」
小さい声でそう呟いて強く抱きついてきた。
小動物的な可愛さがあってすごく可愛いと思いながら暫くの間抱きしめていた。
告白して名実ともに恋人になったわけだけど、これからどうしていこうと考えていると意識が徐々に薄れていく。
その温もりだけ離さないようにして意識を手放した。
「瑠依…?」
さっきからなんの反応もないが抱きしめる力だけ少し強くなった。
そしてそのままベッドに押し倒される。
次に聞こえてきたのは彼の寝息。
「また寝ちゃったのね…」
頭を優しく撫でて、その後に強く抱きしめ返す。
そのまま私も少しづつ眠くなり目を閉じる。
私たちが恋人になって初めてしたことは添い寝だった。
そして寝てる間にお母さんが私と瑠依が一緒にいるのを見てほほ笑むのはまた別の話。
投稿が遅くなりすみませんでした。
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