まだ見ぬ君との出会い
頑張った主人公にご褒美があります。
1週間程入院する必要があると医者が言っていたので暫くは学校を休むことになった。
両親は「思った以上に元気そうでよかった」と言って帰っていった。
1週間の間、毎日麻美が来てくれていた。
瀬奈と守も大体一緒に来るが俺の顔を見て暫くすると2人はさっさと帰っていった。
いつも「後は2人でゆっくりしなよ」と言って気を使ってくれているみたいだ。
麻美と2人きりの会話は楽しかった。
学校であったことをよく話してくれた。
授業についてはノート見せてあげるから心配しなくていいよ。と気遣いまでくれる。
そんな感じで1週間、放課後はずっと一緒だった。
そして退院の日には麻美に守と瀬奈まで皆来てくれていた。
「退院おめでとう」
みんな口々に祝ってくれる。
「ありがとう」
その一言だけ返して皆と一緒に自分の家に向かって歩き出した。
1週間ぶりの実家は特に何か変わったとかは感じなかったが安心感を感じた。
瀬奈と守は俺の家まで一緒に来ると少し挨拶だけすると「予定がある」と言って帰っていった。
母さんは買い物に行くと言って出ていった。
僕の実家には麻美と僕だけになった。
「麻美はまだ時間ある?」
麻美に訊ねるとあまり時間を置かずに
「大丈夫だよ」
と答えてくれる。
とりあえず自分の部屋に麻美を招き、下の冷蔵庫から麦茶を用意して持っていった。
麻美は僕の部屋をキョロキョロと辺りを見渡している。
「面白いものなんてないよ?」
その姿が面白くて声をかける。
「楽しいよ?」
麻美はそれだけ言うとまた僕の部屋を観察し始めた。
飲み物を渡したタイミングで麻美と目が合う。
「1週間ありがとう」
僕はそれしか伝えることが出来なかったけど麻美は分かっているらしく優しく微笑み一言返ってくる。
「こちらこそありがとう、瑠依」
その瞬間、麻美の事がたまらなくなり強く抱き締めていた。
突然の事で彼女がびっくりして慌てているのが分かる。
それでも少し力任せに抱きしめ続けると身を任せてくれて抱き締め返してくれた。
暫く抱き合っていると麻美が聞いてくる。
「急にどうしたの?」
「あの時本当に心配した」
男たちに囲まれた時に本当に心配でどうしたらいいか分からなくなっていた。
「瑠依が助けてくれたおかげで今は無事だよ、本当にありがとう」
改めてお礼を言われ強く抱き締め返されるとそれ以上は何も言えなくなった。
暫くその温もりを抱きしめていると眠くなってきてしまい麻美の肩に頭を乗せてうとうとしているうちに意識が遠のいていった。
「瑠依…?」
抱きしめられて甘えられてるなと思っているとそのまま寝息が聞こえてきた。
どうやら瑠依は寝てしまったらしい。
無防備な顔を見せている。
それを可愛いなと思いながら頭を優しく撫でる。
暫くして完全に寝入った瑠依と一緒にベッドに倒れる。
瑠依は私が逃げないように強めに抱きしめたままで抜け出すのは厳しそうだ。
だから大人しく抱きしめられて寝ることにした。
そう思うと瑠依の体温や安心感から眠気が襲ってきた。
そして眠る前に一言寝ている瑠依に向かって呟いた。
「助けてくれてありがとう、かっこよかったよ」
そして私も意識を手放した。
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