新しい自分との出会い
主人公が覚悟を持てるようになるきっかけがあります。
私は走った。
瑠依にさっきから電話をかけてるが一向に繋がらない。
会って謝らないと。それだけを考えて走るが闇雲に走っても見つかるわけが無いと途中で思いつく。
だいぶ焦ってるのを自覚した。
仕方ないから守と瀬奈の2人に電話しようとした。そして瀬奈に電話をかける。
呼び出し音が数回流れた後に声が聞こえる。
「もしもし、麻美?」
「瑠依を探してっ!」
瀬奈はびっくりしながら問いかける。
「麻美落ち着いて、どうしたの?」
私は事情を説明した。
さっきまで瑠依と話していたが喧嘩をしてしまったこと。
私が言葉選びを間違えて瑠依が外に出てしまい探して謝りたいこと。
一通り聞いたあと瀬奈は言う。
「分かった、守も近くに居るし一緒に探してみるよ」
彼女はそういって電話を切った。
私は何としても瑠依に謝らないといけない。
そしてまた歩き出そうとした時に急に手を掴まれた。
「ねぇ、俺たちと遊ぼうよ」
そこにはチャラチャラした男たちが3人いて1人が私の手を掴んでいた。
私は舌打ちをして振り払おうとする。
「離してっ!構ってる暇はないの!」
しかし男たちは離れずむしろニヤニヤしている。
こんな時に自分の非力さを感じる。
暫くは男たちも見ているだけだったが焦れてきたのか自分たちが乗ってきた白い軽自動車を指さしながら男の1人が大声で言う。
「もうめんどくせぇから連れていこうぜ」
男達3人で私を車に乗せようと様々な方向から手が伸びてきて身体を抑え込まれる。
もう抵抗はできない。怖さで目を開けられない。
このまま連れていかれると思った。
そんな時に聞き覚えがある声が私の名前を呼んだ。
「麻美っ!!」
恐怖を我慢するように私は大好きな人の名前を呼ぶ。
「瑠依っ!!」
瑠依は聞いたことも無い大声で男たちに問いかける。
「麻美に何してんだっ!」
男達が瑠依に向き直る。
「女の前だからって調子乗るなよっ!」
男の1人が声を上げて瑠依に殴り掛かる。それを何とか避けて改めて状況を整理する。
お世辞にも状況がいいとは言えない。
男達はみんな体格がいい。でも麻美だけは守り抜かないといけない。
そして覚悟を決める。
男達は俺の事を見くびっていてくれてる。
だから3人で一気に攻撃してくるような感じではなく1人ずつ戦ってくれるようだ。
そして喧嘩が始まる。
男たちの攻撃を必死に躱す。
時に避けて時に逃げてあまりにも無様だった。
そんな辛い時間が暫く続いた。
男達の隙間から麻美がいた所を見ると既に姿は無く無事に逃げられたと思い安心した。
その油断が命取りだった。
男の1人が放ったパンチが身体に突き刺さる。
「ぐっ…」
苦しくて声が出せず蹲るしかない。
それを見て男達が俺を殴り、蹴り始める。
もう抵抗出来るような体力は残ってなかった。
少しづつ意識が霞む中で警官が数人と麻美、守、瀬奈が見えたような気がした。
目が覚めると病院のベッドで横になっていた。
体を動かそうとすると鋭い痛みが走るが何処か折れてるとかそういうのは無さそうだ。
足の方に少し違和感があり目を向けると麻美が俺の足を枕にしながら寝ていた。
顔をよく見ると涙の跡があり泣いていたのかもしれない。
心配かけちゃったなと思い軽く頭を撫でる。
軽く頭を撫でていると麻美が身体を動かし、薄目を開けた。
「瑠…依…?」
「おはよう」
それだけ言ってまた頭を優しく撫で続ける。
麻美は覚醒してきたらしくゆっくりと目を開ける。
「瑠依…なんで私の頭を撫でてるの?」
「可愛くて…つい」
麻美は少しだけ顔を赤くしながら僕をぎゅっと抱きつく。
「元気そうでよかった…本当に心配したんだから…」
怪我の具合を見て少しほっとしたのか抱きしめる力がさらに強くなる。
「心配してくれてありがとう…」
その一言を言うのが必死で麻美を暫くの間強く抱き締めていた。
抱きしめあってる間は緊張しっぱなしで心臓の鼓動が痛いくらいだった。
それから暫く時間が経ったように思う。
実際は殆ど変わってないのかもしれないけど。
でもこの状況をいつまで続けていいのか分からない。
麻美も同じらしく顔を伏せたままお互いを抱きしめ続ける。
タイミングを逃していると病室の扉が開き、守と瀬奈が入ってきた。
「2人とも熱いね…」
入ってきた2人は苦笑いを浮かべながらその姿を祝福した。
「…っ!!」
麻美は顔を真っ赤にして俺から離れた。
少し名残惜しさを残しながら皆を見る。
「結局あの後はどうなったの?」
純粋な疑問だった。病院にいるからなんとか事態は収拾したのだと思うけど。
「麻美が私たちに連絡くれて警察呼んできて瑠依の事ボコボコにしてたヤツらは現行犯で連れてかれたよ」
瀬奈が教えてくれる。
「麻美に何も無くてよかった、2人も助けてくれてありがとう」
感謝と安堵が入り交じったような気持ちになり2人にお礼を言う。
「気にすんなよ、俺たち友達だろ?」
守も何事も無かったように言って、瀬奈も頷いている。
そこから暫く雑談が始まりふっと空を見ると茜色の綺麗な色になっていた。
「今日はそろそろ帰ろうか」
守もそれに気づいたらしくみんなに告げる。
「そうね、瑠依もある程度で退院できるようだからそれまで大人しくしてなさいね」
瀬奈はそう言うとずっと椅子に座っていたからか大きく伸びをして立ち上がった。
麻美は最後まで聞いているだけであまり話さなかった。
そして皆と帰るタイミングで僕の耳元に口を近づけ「かっこよかったよ」と呟き瀬奈達と一緒に帰っていった。
それを聞いた瞬間、フリーズしたがみんなが帰ったあと急に実感が湧いて可愛さに悶えた。
「麻美可愛すぎるだろ…」
瑠依の苦悩を麻美たちが知ることは無かった。
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