昔馴染みとの出会い
新たな登場人物とは?
サイトノベルアップさんにも投稿しています。
待っていた彼女は高校1年生の時にクラスが一緒だった渡辺瀬奈だった。
彼女は常にクラスの中心にいて男子女子問わずに引っ張りだこだった。
確かに顔やスタイルは勿論、成績も優秀、スポーツもそつなくこなすなんてきたら完全に高嶺の花だし皆仲良くなりたいと思うだろう。
でもそんな彼女も知られたらまずそうな趣味もあったりする。
それは腐女子であること。
彼女の部屋に行くと表紙に男の裸体が描かれている薄い本がよく散乱している。
彼女の部屋に行ったときに隠しておかなくて平気なの?と聞いたら私の上辺だけ見てるような奴らを家に呼ぶことなんてないからと答えが返ってきた。
なんでそんなことを知ってるかって言うと瀬奈と麻美と俺は元々家が近くでよく遊んでいた。
でも小学校の4年生の時に彼女が地元を離れて転校した。
その時は悲しくもあったが高校受験のタイミングでこっちの学校を受験して戻ってくることになったらしい。
「おはよう、待ってたわよっ!」
僕と麻美に対して声をかける。
「おはよう、瀬奈」
「おはようね、瀬奈、今日も元気ね」
その声に対してそれぞれ挨拶する。
「今日から新学期だし気合い入れないとね」
瀬奈はそう言って僕たちの隣に並ぶ。
「とりあえずクラス分けを見ないとね」
僕はそう言いながら学園に目を向けるとパネルが並べられておりそこに人が集まっている。
恐らくあそこに新しいクラスが並んでいるんだろう。
2人を誘導するように僕が前を歩く。
後ろの2人は駅前のカフェで新作のパフェが出たとかこの前の試験が上手くいったみたいな他愛の無い話で盛り上がっているようだ。
麻美もクールに見えるだけで実際は甘党だし食べ歩きとかもたまにしてるのを聞く。
僕はあまり外に出ないけど麻美が声をかけてきた時は付き合うようにしてる。
やっぱり彼女があまり見せない顔を食べ歩きとかそういうタイミングで見ることができるから。
それを指摘するとすごく恥ずかしそうな顔をするけどね。
麻美について考えながら適当に歩いていたらクラス分けのボードの前に着いた。
1〜4までのクラスがあって順番に眺めていく。
1番最初に麻美の名前が見つかる。
「私は1組みたいね」
あまり興味が無いのか自分のクラスを確認したら僕と瀬奈の名前を探し始めた。
1組をじっくり確認していると僕と瀬奈の名前も一緒にあった。
「麻美、瑠依今回も一緒のクラスね!よろしく!」
瀬奈は一緒なのが嬉しいらしく元気に声をかけてきた。
「そうだね、今年もよろしく、瀬奈」
麻美も同じように挨拶する。
「よろしくね、瀬奈」
改めての挨拶が終わり、瀬奈の他の友達も何人か1組にいたらしくその子たちに呼ばれてそのグループに入っていく。
そんな感じで2人っきりになった僕と麻美はゆっくりと校舎に向かって歩き出す。
そのまま歩いていると一瞬死角になる所でワイシャツの袖の所に軽く引っかかるような感触があった。
後ろからだったので確認すると麻美が僕の袖を指で摘んでいた。
「どうしたの?」
麻美は少し恥ずかしがるように顔を伏せていた。
僕は麻美が話し出すまで少しだけ待った。
それから暫くすると麻美が小さい声で呟いた。
「今回も同じクラスになって嬉しいわ、瑠依…今年もよろしくね」
あまり言い慣れていないからか恥ずかしそうに顔を赤く染めながら僕を見つめる。
「勿論っ!こちらこそよろしくね」
そんな姿が可愛くて愛おしくていつもより少し元気に返事したあと麻美の頭を軽くポンポンする。
そうすると子供扱いしないでよといったじとっとした視線を僕に向けてくるけど拒否されたりはしない。
そんな所を何人かの学生に見られたせいで熱愛カップルといった感じで皆に周知されるのだが本人たちは自分たちの空間を楽しんでいた。
暫くそんな感じに過ごしているとそろそろ始業式が始まりそうな時間になっていた。
僕と麻美は始まる直前にギリギリで駆け込んだ。
周りに少し注目されながらも自分たちの席に座り何事も無かったように振る舞うことにした。
そこで俺の隣の席にいた男が声をかけてきた。
「さっきみたいの悪目立ちするんじゃないか?」
眼鏡をかけて優等生風な感じがするこいつの名前は林田守
俺の中学の頃からの友達で何かと気が合ってつるんでいる。
「俺もそんなことになるつもりはなくてさ、でも麻美が思った以上に可愛くて…」
人が聞いたら惚気にしか聞こえない様なことを呟くと守は少し胃もたれしたような顔をして呟く。
「はいはい、仲がいいのは分かったけど今日に限ってはもうお腹いっぱいだよ、何も入らない」
冗談っぽくいいながらお腹をさするジェスチャーをした。
そんな他愛もない話をしていると先生がこちらを睨みつけていた。
あれは数学の先生だった気がする。
その視線から逃げるように会話を打ち切り、姿勢を正した。
横目で見ると先生も暫くはこちらを見ていたがある程度すると壇上に目を向けた。
そして始業式が始まった。
校長のいつものありがたいお話が始まった。
最初こそ適当に聞いていたが少し眠くなってきた…
周りを見渡してみても欠伸をしたり伸びをしたりと飽きてきているようだ。
中には寝てるやつもいるがそういう生徒は後ろから先生に肩を叩かれたりしていた。
そのままぼーっとしていると視界の端に何かが映った。
その方向を確認すると麻美と目が合う。
目が合うとニコッと微笑み、その後口パクで「集中しなさいよ」と忠告して麻美は前に向き直った。
「愛されてるな」
守が耳元でこそっと話しかけてきた。
「やっぱりめちゃくちゃ可愛いな」
思わず声に出してしまった。
「はいはい、ご馳走様」
守は苦笑いしながら会話を切って校長の話をまた聴き始めた、根は意外とまともなのだ。
そんな感じで適当に聞いていると校長もそろそろ話を締め始めた、そろそろ終わるらしい。
僕たちは静かに校長の話が終わるのを待っていた。
校長の長い話を終えたあとは新しいクラスに向かう。
今回は珍しく守、瀬奈、麻美、皆と同じクラスというのもありあんまり緊張しないで行けそうだ。
「どんなクラスになるかな」
瀬奈は楽しみ半分で聞いてきた。
「クラスの人たちみたけどみんな割と面白そうな人達だったよ」
「お前、もうクラス名簿覚えたの?」
守が驚いたように言う。
「瑠依は昔から色々覚えるの得意よね」
麻美もその会話に乗ってきた。
そんな感じでワイワイガヤガヤしながらクラスに入ると既に幾つかのグループで雑談しているようだった。
新しく入ってきた俺たちを見てまず目を引くのが麻美と瀬奈。
俺と守はどちらかというと羨ましいといった顔で見られる。
みんなそんな視線は今更なのか気にしない。
指定された席だけ確認してホームルームが始まるまで適当に雑談して時間を潰す。
1年このクラスで楽しくやっていけるかなと思いながらダラダラと時間を潰しているとこのクラスの担当の先生が来た。
「ホームルーム始めるぞ」
特に大きな声も出てないのによく通る声。
その声を聞いて顔を向けると始業式で俺の事を見ていた数学の先生が立っていた。
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