彼女との出会い
久しぶりに小説が書きたくなったので投稿します。
サイトノベルアップさんにも投稿しています。
出会いは幼なじみとしてだった。
自分の家に引っ越してきた家の子。
小さいお人形さんみたいな子だった。
その子は人前に出るのが恥ずかしいようで
物陰に隠れてこちらを覗いている感じだった。
どうにかして話すきっかけがほしいと思ったけどなかなか顔を出してくれない。
最初にあった時には恥ずかしがり屋な子が家の隣に引っ越して来た。それだけだった。
そんな最初の出会いから数日後に向こうの両親と自分の両親が話している際に名前だけ知ることになった。
麻美ちゃん
漢字は難しくて分からなかったけどあさみちゃんって事だけは分かった。
その子の家は人付き合いがよく近所の集まりなどにもよく出ていた。
うちの家も集まりにはよく出ていたからその子もよく見かけた。
相変わらず両親の後ろに隠れているような子だったけどやっぱりどうにかして話したくてその子の両親に直接話に行ったのは今思っても相当大胆だったと思う。
「あさみちゃんを僕にくださいっ!」
よくよく思い出してみたら盛大に言葉を間違えたんだなと今になっては感じるがそれでも後悔はない。
それを聞いた麻美ちゃんの両親は少し驚いたあとに優しく微笑むと麻美ちゃんに話しかける。
「瑠依君があさちゃんと遊びたいんだって」
両親の後ろの少女は様子を伺いながら少しばかり顔を出してこちらを見ていたが、僕が手を伸ばすとおずおずと手を握り返してくれた。
「僕と遊んでくれる?」
「うん…いいよ」
その言葉を聞いたときはとても嬉しくて舞い上がっていた。
それからは毎日のように遊んだ。
最初は少し遠慮していたようだけどある程度するとそれも無くなったのか少しづつ笑ったり怒ったり様々な表情を見せてくれるようになった。
その付き合いは今も続き、気づけば高校生になっていた。
「ねぇ、瑠依起きないと遅刻するわよ」
体をゆさゆさと揺らされながら声をかけられる。
声だけでこれは麻美だと分かる。
麻美の少し困る声が聞きたくてもう少し寝てる振りをしている。
実際寝起きは全然良くないから許して欲しい。
「瑠依…起きてったら、置いてくよ?」
少しあきれたような声を出しながら揺らすのをやめる麻美。
置いてかれるのはまずい…一応の抵抗で麻美の腰にギュッと抱きついてみる。
もう、何…?と少しびっくりした声を出しているけど拒否はされない。
その代わり少しづつ声が尖ってきた。
「瑠依、早く起きないとこれからもう起こしに来ないわよ?」
ヒヤッとする声に少し怖くなりながら恐る恐る目を開けると相変わらず綺麗な顔が目の前に飛び込んできた。
少し怒ってそうだけど。
あきらめて起きることにする。
「分かった、起きるよ…いつも起こしてくれてありがとう、麻美」
「はぁ…私が起こしに来る前に起きてくれると助かるのだけど…」
額を軽くデコピンされながら麻美が呟く。
「それはもう来てくれない気がするから嫌だ」
「そんなことないけど、手がかからなくなるのは少し寂しいかもしれないわね」
少し考え込みながら呟く。
「でも少しはしっかりした方がいいなら善処は…する…」
そういいながら二度寝をしようと布団に入ろうとするとそれを見た麻美がいう。
「ほら、話してる最中に二度寝しようとしないの、本当に遅刻するよ?」
「じゃあ一緒に遅刻しよ…?」
最後の抵抗も含めて誘ってみる。
「ばーか、早く行くよ」
軽くあしらわれて麻美は部屋から出ていく。
これ以上は流石に無理だったかなと思い、そのままベッドから出て着替える事にした。
いつもしっかりしている彼女を見ると一緒にいていいのかと思うこともある。
でも彼女は僕に気をかけてくれる。
それが純粋に嬉しくて笑みが零れた。
クローゼットから制服を取り出して着替える。
何気なく時計を見ると朝食も準備されていそうな時間だった。
それを見て少しだけ準備を早め、階段を降りた。
降りていくとトーストの焼けたいい匂いが漂ってきた。
「やっと降りてきた」
母は少し呆れたように言いながらスープをよそって渡してくれた。
「ありがとう、母さん」
スープをもらいいつもの自分の席に座る。
今日のメニューはいい感じに焼けてるトーストと目玉焼きとコーンスープ。
どれも湯気がたっていて美味しそうだ。
麻美も席に座ってご飯を食べている。
俺を起こしに来てそのままご飯を食べていく、いつもの流れ。
今日も平和だなと思いながらご飯を食べ進めた。
ご飯を食べ終えて家を出る。
日差しが強いが過ごしやすい天気ではある。
一緒に外に出た麻美も少し日差しにうんざりしながらも辛そうな顔はしてなかった。
なんでそんなこと心配するかって言うと彼女は熱にものすごく弱いから。
自分では大丈夫って言うんだけどすぐ熱中症で倒れる。
だから俺は気をつけるようにしてる。
普段からお世話になってるせめてものお返しかな。
「ねぇ、ねぇ何考え込んでるの?」
考え事をしていたら無反応だったからなのか少し顔をむすっとさせながら話しかけてきた。
「今日は調子よさそうだと思っただけだよ」
麻美の顔が目の前にあってびっくりしたけど誤魔化すように返事する。
「別にいつも調子悪い訳じゃない、最近の気候が暑すぎるだけ」
少しウンザリしたようにいいながら学校に向かう。
ある程度歩くと大通りに出た。
同じような制服を着た人達がチラホラと見え始めた。
この大通りを越えた先が僕たちが通っている学園、美空学園に着く。
この学園は生徒総数1000人越えのマンモス校になっている。
そして今日は始業式。
2年生になって最初の登校日になる。
そこで今まで通りの学校生活が始まると思っていた時に彼女がやってきたのだった。
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