蝋燭の火
恋と愛は熱く燃える。恋は火つきの起点となり愛は蝋に火が灯ってゆらゆら揺れている火のようだ。火が灯っている間は消えた後の事など知らないから明るくいられる。いざ、なにかの拍子に火が消え暗くなると、悲しみに包まれる。火がない世界は風が吹いてもゆらゆらと燃える火はなく蝋燭をすり抜けていく風の音だけが虚しく聞こえる。
火の熱がないと、身体の芯、心から凍てつくのが分かる。そうして時間が過ぎていくと、やがて思考は暗く暗く沈んでく。火が灯っていない蝋燭でも、立たさせれていると火がまた灯されるのではないかと期待する。されど待てど待てど火は灯らず。
ならばいっそ蝋燭を折って、どこか遠くに捨ててくれと思う。それなら甘い期待を抱かず過ごせる。そう思いながら、もう人が拝むことのなくなった神社の屋敷の隙間から覗く空を見て早く俺のところに雨を注いでくれと願った。