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初めての友達と、早朝現場と

 YOSAKOIソーランのサークルに誘われた私。


 色々と悩んだ結果、今回はサークルへの参加を見合わせることにしました。

 それを伝えるため、講義が終わった後で小鳥遊さんたちの元へ向かいます。

 ちょうど彼女たち3人が集まっているので急ぎそこに向かいますと、彼女たちも私に気がついたのか小さく手を振っています。


「あ、御子柴さん。サークルの件、考えてくれた?」

「それなのですけれど。ちょうどアルバイトの期間とぶつかっちゃって参加できそうにないのですよ。タイミングがあったら参加したかったのですけど」


 頭を下げながらそう伝えると、内海さんが私に一言。


「うん、返事をくれてありがとう。結構色んな人に声をかけたんだけど、誰も返事をくれなかったんだよね。興味が無いんだろうなぁって諦めていたから、逆にこうやって返事をくれるのは嬉しいよ」

「そうそう。YOSAKOIの件を抜きにしてもさ、御子柴さんとは友達になれたらなぁって思っていたから」

「ん? そうなのですか?」

「御子柴さんって、いつも一人じゃない。でも暗いとか社交性がないとかそういうのじゃなくて、いつも楽しそうだったから。たまに鼻歌を歌っているのも聞いたことあるし」


 うわ、鼻歌ってあれですよ? 

 イヤホンでいつも聞いている戦隊モノのメドレーですよ?

 あれを聴きながら、頭の中でMCの練習をしているだけなのですよ。

 ま、まあ、子供達に夢と希望を与える役なので、明るく楽しくっていうイメージで頑張っていますけれど。


「そ、それはまあ、色々と聴きながらですけど……うん、こちらからもお願いします」

「それじゃあ、まずはLINEの交換から。私たちは普段、YOSAKOIの練習とかで忙しいけどさ。たまに息抜きとかしたくなる時もあるんだよ」

「カラオケとかね。まあ、流石に飲みに行くとかはできないけど……たまに一緒に遊びに行こうよ」

「はい!! それじゃあ、今度時間があったら!」


 そのまま小鳥遊さんたちは練習があるとかで帰宅。

 私も帰って課題を終わらせなくてはなりません。

 まあ、YOSAKOIの現場といってもまだ一月も先、その前にゴールデンウイークのイベント関係の仕事が結構あるそうなので。

 まずは学業、そしてアルバイト!



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


 

──札幌駅地下歩行空間

 土曜日早朝。

 今日は朝から三時間の現場。

 確か、朝9時までに撮影を終わらせないとならないため、午前6時から作業開始だそうです。

 そのため、朝5時に起きて自転車で現場近くの駐輪場へ移動、そこから待ち合わせの銀行前に向かいます。


「お、御子柴さん、おはよう。眠く無いか?」


 すでに数人のベテランさんが集まっています。

 その中の一人、工藤さんが話しかけてくれました。

 確かに朝早くの現場は初めてなので、少し眠いです。


「少しだけ。でも、みなさん本当に凄いですね。こんなに朝早くなのに気合入っていると言いますか」

「いや、俺は仕事場から直接来たんだけどね。ここが終わってから、帰って寝る予定だからさ」

「工藤さんはススキノのバーで働いているからね。他にも、ここが終わってから仕事に向かう人とかもいるし、そのままダブルヘッダーで現場に向かう人もいるよ」

「ダブルヘッダー?」


 大川さん曰く、一日に二ヶ所の現場を受け持っているという意味だそうです。

 午前中と午後で別現場に向かうとか、凄い人だとトリプルヘッダー、つまり三つの現場を掛け持ちしているとか。


「……っていうこと。まあ、大学とかの夏季休講時期は、ダブルヘッダーで頑張る大学生とか、朝から夕方まで倉庫勤務とかもあるからさ」

「倉庫?」

「名桜レンタリースの倉庫で、普段俺たちが使っている美品のメンテナンスをする仕事なんだけど……まあ、体力勝負だから、御子柴さんには回ってこないと思うよ……と、来た来た」


 噂をすればなんとやら。

 私たちの目の前に名桜レンタリースのハイエースが止まり、平崎さんと堤さんが降りてきます。


「「「おはようございます!!」」」

「あさっぱらから元気だなぁ……高尾さん、打ち合わせしたいからこっちきて」

「はい」

「あと若手は、そろそろエレベータが使えるようになるから、そっちに回って備品の搬入。今日は時間が押しているから迅速かつ安全に」


 テキパキを指示を飛ばす堤さん。

 そしてトラックがエレベータの前に止まりますと、まずはエレベータの中を養生です。

 養生とは、備品の搬入時に施設を傷つけないようにするもので、プラスチックダンボール(プラダン)や巻段ボールという素材を養生テープで壁に貼り付ける作業です。

 今回のように一般のお客さんが使うエレベータやホテルなどでは、特に注意が必要だそうで。


「ええっと、これを貼りつける……養生テープで」

 

 周りの人の作業を確認しつつ、私も養生を貼り付けます。


「あ、御子柴さん、それだと養生テープが短すぎて、風に煽られたりしたら剥がれるから。もっと長く使っても大丈夫」

「長く……これぐらいですか?」


 養生テープを10センチほど伸ばして切ります。

 すると大川さんが頷いてくれたので、そのまま作業続行。


「何かおかしいところがありましたら、指示してください」

「いや、今のところはいいんじゃ無い? 俺はトラックから荷物を下ろしてくるので、そこは任せるから」

「はい!」


 いきなり任されました。

 よし、このまましっかりと作業を……。


──ペリッ

 うわ!

 最初に貼ったところが剥がれてきた!

 やばいやばい、急いで貼り直さないと。

 今貼っているところを少し長めに固定して、急いで入り口側へ。

 エレベータの風除室の部分なので、風が吹き込んで剥がれたようで。

 

「最初は短く切ったからだな。はい、貼り直してね」


 備品を下ろしてきた大川さんたちがやって来ました。

 やばい、私がここを終わらせないとエレベータが使えない。


「急がなくてもいいよ。その代わり、しっかりと。時間が押しているからって一分一秒をあせる必要はないし、むしろ焦って変な仕事になったらやり直しになるから。だから、一つ一つ、しっかりと」

「はい」


 慌てるな落ち着け私。

 一瞬だけ深呼吸。

 そしてさっきの言葉を思い出して、しっかりと固定。


「養生終わりました」

「はい、御子柴さんもトラックに回って」

「わかりました!」


 自分にできることはまだ少ない。

 でも、だからといって妥協するのではなく、少しずつでも仕事を覚える。

 本当に未経験のことばかりですし、覚えないとならないことは多いです。

 だからといって手を抜くなんてあり得なく。

 教わったことをしっかりとやらなくては。


 まだまだ、道は長いです。


 

いつもお読み頂き、ありがとうございます。


・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。



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