落胆と再起と、スケールの違い、前編
失態。
いえ、YOSAKOIソーランのイベントについては、もう立ち直っています。
いつまでもくよくよしているよりも、次の現場で取り戻せばいい。
一度目の失敗についてはやむを得ない場合もある、同じ失敗を繰り返さなければいい。
そうベテランの皆さんに励まされて、三日ほどで立ち直ることができたのですけれど。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 遅刻だぁぁぁぁぁぁ」
朝7時に掛けてあったはずの目覚まし時計。
今は朝9時20分、講義には確実に遅刻です。
大慌てで身支度を整え、朝食を食べることなく自転車を飛ばして最寄りの地下鉄駅へ。
そこまで到着すれば、大学は地下鉄駅のすぐ目の前、どうにかギリギリ間に合う時間かと計算して。
――パン! プシュゥゥゥゥ
自転車の後輪が破裂する音、そして空気が一気に抜けていきます。
「あは、あはは……もう無理、絶対に間に合いませんよ……はぁ」
今日の講義はやむなく断念です。
自宅から少し離れた場所にある古い自転車屋さんまで、とぼとぼと自転車を押して移動しますと。
『本日、臨時休業』
と、赤と黒の太マジックで書かれた紙が張り付けられています。
もう、全身から力が抜けて、歩く気力もありませんよ。
「自転車のパンク修理代が1200円……ここから自宅まで押して帰るのに30分もう講義は始まりそうな時間かぁ……どうしようかな」
今の場所からなら、歩いて20分ほどでホームセンターに到着します。
そこまで行ければ、少し割高になりますけれど自転車の修理は可能。
今日は無理でも、明日の朝、同じように慌てる事だけは避けなくてはなりません。
そう考えてとぼとぼと自転車を押して歩いていますと。
「あ……ショッピングセンター、ここにもあるんだ」
今まで通ったことのない小道を歩いていると、見たことがないショッピングセンターに到着。
こっちに引っ越してから、すぐにアルバイトを始めたものですから。あまり家から離れた場所の散策なんてしたことがなかったのですよ。
それに同じ通りに鯛焼屋さんもありますし、ちょっとおしゃれなフレンチレストランのような店も発見しました。
「ふぅん。こうしてみると、ちょっと歩いた先に色々な店があるのですね……ちょっと面白くなってきましたよ」
もう今日は大学に行きません。
だから、少しだけ寄り道したり気分転換をかねて買い物をするのもありですよね?
「よし、夕食のおかずを買っていこうかな……」
パンクした自転車を駐輪場に入れて。
そのまま晩御飯のおかずを物色です。
自炊はできますけれど、それほど器用ではないので簡単なものしか作れません。
だから、サラダ用にレタスと水菜と6Pチーズを購入。
格安サービス品の豚ロースを二枚、あとはとんかつソースを買い足しておきます。
「ゲン担ぎではないですけれど、晩御飯はトンカツにしますか。うちのベテランさんたちも良く食べに行っているようですし……」
仕事が終わってから、仲のいいベテランさんたちは一緒にご飯を手食べに行っているそうです。
それに、独身男性たちが集まってワールドカップやオリンピックの応援のために集まっていることも度々あるそうで。
泊まり込みになるので女性たちは当然誘われることはありませんけれど、バイトの休みと重なると朝から晩まで飲み続けることもあるとか。
本当に、お酒好きな人たちが集まっているのですねぇ。
そんなことをトミーさんから教えてもらったことを思い出しつつ、会計も終えて次の目的地へ……と、おや、こんなところに100均ショップが。
「そういえば、私、いつも工具とか借りていますよね。ここにもあるのかな……」
ふとそう思って、100均の工具コーナーへ移動します。
そこにはよく見る工具がずらりと並んでいるじゃありませんか。
「スケールは……あ、300円ですか。これは買っておいた方がいいのかなぁ。軍手も綿100%のやつじゃなく、ゴムのいいやつを皆さんつかっているようですし……そうだ、安全靴も買った方がいいって言われていましたね」
私の普段の作業スタイルは、5束セットのゴム付き軍手だけ。
ヘルメットは横に社名が入っている奴を貸りていますし、ラチェットなどの工具は私にはまだ早いと思って購入していません。
けれど、スケールは以前の現場で、具材の長さが分からなくなったときにあった方がいいって教えて貰ったことがあります。
「ええっと、ドライバーはプラスマイナス二本、ニッパーとペンチ、あとは六角レンチも必要になることがあるってトミーさんが話していましたよね……と、あれ、ここにはラチェットレンチは売っていないのか。」
確か、オクタノルム用のラチェットは特殊なサイズだから、そんなに売っているところはないよって話していたのを思い出しました。
それに、希望すれば会社でまとめ買いすることがあるので、定価そのままで代理購入してくれるそうです。
しかも、希望すれば会社のロゴが入ったジャンパーや作業用ズボンもそろえてくれるそうで。
まあ、それを購入すると数回分のアルバイト代が吹っ飛ぶそうですから、それはまだ先。
でも、スケールとかベルトに固定する工具入れぐらいは買っておいた方がいいのかなぁ。
「うーん……と、先に自転車の修理に向かいますか」
いけないいけない、あまりにも時間的余裕がありすぎたので時計がどんどん進んでいるのに気が付きませんでした。急いでホームセンターに行かないと。
ということでホームセンターまで向かい、自転車修理のための受付を済ませて番号札を受け取ります。
待ち時間1時間ほどなので、ホームセンターの中を少し見て回ることにしました。
買い物は全て貸しロッカーにしまっておきます。
ここの近所にもショッピングセンターがあるためか、保冷ロッカーがありましたのでそちらへ荷物は収納。
さあ、一時間のウインドショッピングを楽しむことにしましょう。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。






