飲み会狂騒曲
飛んだ新人騒動からの、アルバイト先の飲み会。
ウィルプラスのアルバイトの方々は年齢性別関係なく付き合いがあるそうでして。
よく仕事帰りに食事に出かけたり、遠征といって地方での設営などで宿泊する際には、そのまま夜の町へと繰り出す方もいらっしゃるそうで。
今日は『過酷な仕事でもやめなかった』新人さんとの交流会という名目で、ススキノのイタリアン居酒屋というところに集まりました。
参加した社員さんは3名、そしてアルバイトはじつに15名。
こんなに大勢のアルバイト登録がされていただなんて、私も初めてしりましたよ。
しかも意外と女性の姿も見えています。
「あ、ミコシーちゃん、こっちこっち」
「はい、今行きますので」
急いでトミーさんのいる4人掛けのテーブルへ。
席予約はしてあったのですけれど、この店は動かせるテーブルと動かせないテーブルがあるらしく。
私たちの予約席も、4人掛けのテーブルを二つ並べたものが二つと、四人掛けの席一つという感じになっています。
そして女性は4人掛けに集中。
男性陣は飲み放題コースも入っているということで、今夜は思いっきり飲むそうで……ってあれ? 明日は月曜日ですよね? 仕事は大丈夫なのでしょうか。
「それでは、皆さん席に着いたようですので乾杯の音頭を。新人のみなさん、お疲れ様でした。これからも頑張ってください……ベテランの皆さんはしっかりとサポートをお願いします。それと」
「高尾さん、話が長すぎです。それじゃあかんぱーーーい」
「「「「「乾杯!!」」」」
社員の大野さんがいきなり乾杯の宣言。
そして呆然としている高尾さんをよそに、飲み会はスタートしました。
「御子柴さんは彼女たちは初めてだよね? 彼女は森山さん、普段は千歳のアウトレットモール専属のシフトで動いているのよ」
「森山です、よろしく」
「はい、御子柴です、よろしくお願いします」
ショートカットにくるくるメガネのお嬢さんって感じです。
それでいてはきはきと話したり、飲み物が切れている人の注文を進んで行ったりと気配りのできる人ですよ。なんというか物腰が柔らかそうで、確かにアウトレットのように人の出入りが多い場所専属というのも頷けます。
「そしてこっちは吉村さん。まだ大学生で、御子柴さんよりも数日早く入った子だよ」
「吉村です……ヨッシーって呼ばれています、はい」
「私ももうミコシーって呼ばれていますよ。よろしくお願いします」
こっちの子は物静かで、でもやっぱり気配りができる子で、あちこちのベテランの人に呼ばれて移動したりと大忙しです。
「さて、それでどう? ミコシーさんはこの仕事は続けていけそうかな?」
森山さんが頬を赤く染めつつ……あ、酔っているのですか、お酒に弱いのかな?
「そうですね。まだやりたいことはできていないのですけれど、ここで続けていればチャンスはつかめると思うので頑張ります」
「やりたいこと? うちの仕事って設営以外に何かありましたっけ?」
「まあ、ミコシーちゃんの夢はMCらしくてね。ほら、東尾とか明桜の仕事って、イベント会場でのPAとかもあるじゃない。だからチャンスはいくらでもあると思う……って、高尾さんに言われたんだよね?」
「はい、まったくその通りで……」
穴があったら入りたい。
そんな理由でアルバイトを続けているのかって怒られそうですけれど。
「明桜なら、広崎さんが担当しているセクションですよね。それなら、毎年恒例のあのイベントのバイトに入ったら、教えてもらえるんじゃないですか?」
「あ~、あのイベントねぇ……確かにそうだけどさぁ……」
トミ―さんが腕を組んで考えています。
なんでしょうか、そんな仕事があるのですよね。
「はい、はーーーい、その現場に入りたいです。いつですか、どのタイミングですか?」
「まあまあ、ちょっと待って。そのバイトの前にYOSAKOIソーランの町祭りイベント設営があるでしょう? そっちが終わってからじゃないと」
「そうなのですか?」
そう問いかけますと、そのPAの入っている仕事は狸小路公園でお毎年行われているイベントだそうで。狸小路一丁目と二丁目の間の、創成側の上に作られた公園。そこで行われるイベントではテント設営やパネル展示、そして着ぐるみなどの仕事があるそうです。
明桜レンタリースからの依頼であるそうで、当日はPAやMCもあるそうなので、これは期待大ですよ……。
「……というわけだから、まずは町イベントからしっかりとね。ちなみにだけど、ミコシーちゃんは、学園祭とかで縁日をやったことがある?」
「ええぇっと、高校の時は喫茶店でしたし、大学はまでこれからなので。なにかあるのですか?」
「ヨーヨー釣りとか、綿菓子とかあってね。経験がある方をお願いしたいと思って」
そうトミーさんの話お酒飲みつつ聞いていますと。
「そうそう。ヨーヨー釣りはさ、男の方がうまく作れるんだよ……ヒック」
酔っぱらった熊沢さんが、私たちのところへやってきます。
「はい、熊沢さんはすとーっぶ。それ以上はレットカードですよ」
「そうなの? だって、ヨーヨーを作るときって手を上下するじゃない。だから男の方が『ピピーーッ』レットカードですよ。誰か連れていってください―」
そうトミーさんがつぶやくと、円谷さんという倉庫専門のベテランさんが仕方なさそうに熊沢さんを連行しました。
うん、彼が何を言いたかったかぐらいは理解できていますよ、ええ。
それをここでいうことですか?
まったく、これだから酔っぱらったおじさんは。
「はぁ。酔っていなかったらまだ普通のおじさんなのですけど。酔っぱらうとエロ親父になるのはどうにかしてほしいですよ」
「同感です。実はこの前も、帰りに送ってあげようかって誘われまして……」
「「「うん、それはいつものことだし」」」
おおっと。
どうやら熊沢さんが女の子を送ってあげようとするのはいつものことのようで。
でも、さっきの発言はいただけません。
「ちなみに、同じような下ネタをぶつけてくる人があと数人いますので、適当に流してくださいね」
そう森山さんが小声で教えてくれました。
しかも、飲んでいるテーブルのメンバーを一人一人指さしつつ。
なるほど、要注意として覚えておきます。
確かに男性のテーブルからは時折下ネタが聞こえてきたり……あ、それも熊沢さんなのですね。
要注意から危険人物に格上げです。
そんな楽しい飲み会もいつの間にか時間となり、本日はこれで解散。
社員の方や一部男性チームはこのままお姉さんのいる飲み屋とか、ゲームセンターに移動だそうで。
私は地下鉄の時間が危険なので本日はこれで撤収です。
うん、色々な話が聞けて、とても楽しい時間を過ごせました。
あとは明日、ちゃんと起きられるかどうかが勝負です。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。






