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特級精霊の主、異世界を征く ~次々生まれる特殊な精霊のおかげで、世界最強になってました~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第7章 人魚の国で大騒動

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第9話 隠し事は一切許さないわよ

「[迷宮の花嫁]という名の生贄じゃよ……」



 迷宮と結婚するってどいういこと?

 しかも生贄って、迷宮の中に神様でも住んでるの?



「私は他国の歴史についてそれなりに学んだつもりだが、迷宮の花嫁など聞いたことがないぞ」


「我が国がひた隠しにしてきた、歴史の暗部じゃからな」


人身御供(ひとみごくう)を差し出せなんて、この迷宮には一体なにが居るんですか?」


「それはわからんのじゃ。使者となるモンスターが現れ、一人の人魚族を選定する。その人物は声を奪われ、髪の色を変えられたあと、迷宮の奥へと連れ去られる。そして帰ってきた者は、一人もおらんのじゃ」


「あの上から見ると超気持ち悪いやつが、使者ってやつだな」


「クロウの視覚を共有してたから、ボクも鳥肌が立っちゃったよ」


「使者は周囲に人の意識を奪う毒物を、撒き散らしとるのじゃ。それゆえ近寄ることもできんと、記録に残されておる」



 そうか、僕たちはサクラの状態異常無効スキルがあるから、意識を失わずに済んだんだ。全員の着替えと洗浄をすませておいたのは、被害の拡大を防ぐために良かったかも。



「リナリア様が意識を保たれているのは、花嫁として選ばれたからでしょうか?」


「そのとおりじゃ……」



 隣りに座っているリナリアを見ると、青い顔をしながらブルブル震えていた。まだ十六歳の女の子に、そんな役目を負わせるなんてひどすぎる。スズランが片方の手をそっと握ってくれてるけど、僕も同じようにしてあげよう。



「僕たちは使者を倒してしまったわけなんですが、その場合はどうなるんですか?」


「使者が倒されるたなど記録に残っておらん、私にもわからんのじゃ」


「諦めてくれるとありがたいのだけど、そんなに甘くないでしょうね」


「私の母上殿が……親父殿と一緒に、この因習に終止符を打ったはずなのじゃ。それがどうして今になって……しかも私の娘が選ばれるなど……復讐のつもりかっ」



 ――ダンッ!!



 アプリコットさんは両腕を振り上げて、勢いよくテーブルに叩きつけた。血が出てしまいそうなほど唇を強く噛み締め、必死に何かを抑えてるみたいだ。二人が母娘だった事実に驚いたけど、今はそんな事にこだわってる場合じゃない。


 リナリアの声や髪色が戻ってないってことは、アイリスの言うとおりまだ諦めてないんだろう。これからどう動けばいいのか、みんなに相談しないと。



「まずやらないといけないのは、この子の安全を確保することだよね」


「アイリスの影で匿うのが、確実だろうな」


「その前にあなた、私の質問に答えなさい。隠し事は一切許さないわよ」


「……わかったのじゃ」



 その時アイリスから待ったがかかる。色々と情報不足だし、僕にも気になる点が多い。リナリアが心配そうな目で二人を交互に見てるけど、きっと大丈夫。すごく優しい人だから、最終的には協力してくれるはず。



「この子が花嫁に選ばれたこと、最初からわかっていたわね」


「そのとおりじゃ。ほぼ確信しておった」


「わざわざ調べ直したのはどういうことかしら」


「私の記憶が間違いであって欲しかったのじゃ。この子が花嫁に選ばれたなど、信じるわけにはいかなんだ。じゃが秘書を読んで現実を突きつけられた……」


「それを危惧していたあなたは、私たちが持つ力を見てこの場所まで誘導した。間違いないわね」


「娘の姿を信頼の置ける人物以外に見せたくなかったという理由もあるが、吸血族の生き残りであるそなたには、どうしても協力してほしかったのじゃ」



 僕たちに国の機密と言える情報を話したのは、やっぱり思惑があったのか。関わってしまったからには、できるだけ協力するんだけど……


 そんな感情論だけで動けないのは、組織のトップという立場があるからなのかも。



「いくら世界中から情報が集まる国といっても、やたら私の力に詳しいのはおかしいと思ったのよ。それにこの子と一緒に、わざわざこの場所まで連れてきた。調べ物をしたかったのだとしても不自然だもの。その理由も答えてもらうわよ」


「私が吸血族に詳しいのは、父親がバンダだからじゃよ」


「ちょっと待ちなさい!? バンダって始祖様じゃない。吸血族が他種族と子を成すなんて、ありえないわ……」



 矢継ぎ早に情報が出てくるので、混乱してきた。


 アプリコットさんの母親も、迷宮の花嫁に選ばれている。そして父親は吸血族の始祖だった。アイリスの驚き方を見ると、眷属以外の子孫は残せないんだろう。見た目と年齢が一致しない点を除けば、アプリコットさんは人魚族で間違いないはず。その手段とは一体……


 どうやって子供を作ったのはひとまず置いておくとしても、バンダさんとその奥さんは生贄という因習を終わらせるため、何かをやっているはずだ。しかし、もう起こらないはずの花嫁選考が復活し、自分の娘であるリナリアが選ばれてしまう。


 だめだ、まだまだ情報が少なすぎる。

 一体この国で過去に何があって、いま何が起ころうとしてるんだ?



「世界中に厄災を振りまいた吸血族がおったのは、知っておるな」


「えぇ、もちろんよ。おかげで私も迷惑を(こうむ)ったのだし」


「そやつはあろうことか、この国に住まう土地神様の力を奪おうとした。それを知った吸血族の始祖が、この地でそやつを葬ったのじゃよ」



 しかし既に力の一部を奪い取っていたため、いくら強大な力を持つ始祖といえども苦戦してしまう。なんとか倒したものの大きなダメージを受け、存在が消えかねないほどの状態にまでなったらしい。その時に自らの血を提供し、献身的に世話をしたのが、カトレアという人魚族の女性だった。


 やがて二人は惹かれ合い、何らかの方法で子を成すことに成功する。それが目の前にいるアプリコットさんだ。


 人魚族は特定の伴侶を作らないけど、カトレアさんは生涯バンダさんに尽くすと決めていたらしい。それを引き裂いたのが、迷宮の花嫁という因習だった。


 花嫁を欲しているのは、迷宮に巣食う邪神だと伝えられている。しかし使者ですら倒せる者がいなかったので、その居場所や詳細な姿は一切不明。迷宮内にもそれらしい存在は確認されてないから、なにかの条件がないと入れない場所なんだろう。


 とにかく花嫁を捕まえに来る使者ですら、近づくだけで状態異常になったり、魔法が効かなかったりするんだ。本体である邪神は、かなり強いんはず。


 そして運命の輪を断ち切るため、バンダさんは自分の全てを賭けて挑もうとする。でもカトレアさんが、それを思いとどまらせた。なぜなら吸血族の遺伝子を引き継いだアプリコットさんは、ハイエルフすら超える寿命を持っているからだ。


 我が子を見守り続けてほしいというカトレアさんの意思を汲み、バンダさんは一つの策を講じる。せめて次の世代に花嫁が生まれないよう、カトレアさんを結界の(かなめ)として、邪神ごと封じることに。


 土地神の力も借りて、それは成功したはずだった。実際この百年ほど、誰も犠牲になっていない。しかしいま新たな花嫁として、リナリアが選ばれてしまっている。原因はわからないけど、なんとかしないと悲劇を繰り返すことになってしまう。



「親父殿はいまでも結界を維持しながら、力が弱くなった土地神様を支えるため、学園島の地下にある祭壇で暮らしておるのじゃ」


「吸血族が絶滅しようとしているのに、始祖様が姿を現さない理由はそういう事だったのね」



 リビングに飾ってある絵画でしか見たことないけど、始祖のバンダさんってすごく強い人だな。種族の壁を超えて愛し合い、悲しい運命に翻弄されながらも、この国を支えている。僕が同じ選択を迫られたなら、絶対に決められないと思う。だって不幸になる人なんて、一人もいないほうがいいから……



「君たちを利用しとるというのは、十分承知しておるのじゃ。どれだけ理不尽な要求でも受け入れる、生殺与奪の権利でも差し出すのじゃ。娘が助かるのじゃったら奴隷にだってなる、じゃから私に力を貸してくれぬか」


「ちょっと待って! 子供の前でそんなことを言わないでください!! いくら切羽詰まった状況でも、リナリアを悲しませちゃダメだって」



 リナリアのことを大切に思ってるのは良くわかるけど、もっと言葉を選んで欲しい。だって自分の親が犠牲になって喜ぶ子供なんていないんだよ。同じ理由で両親を亡くしてるカメリアも、すごくつらそうな顔をしてるじゃないか。それにリナリアが、僕の胸で泣き出してしまった。



下僕(げぼく)(さと)されるようじゃダメダメね。親として組織の(おさ)として、もっと冷静になりなさい」


「……すっ、すまなんだのじゃ」


「大体ね、この下僕はバカが付くくらいお人好しなの。少し困ったふりをするだけで、尻尾を振りながら協力するわよ」


「僕は獣人族じゃないんだけど……」


「困っている女性を放っておけないのが、マスターのいいところですから」


「ちょっとまってスズラン!? 男の人でもちゃんと助けるって!」


「俺様は助けてもらってないけどな!」


「クロウは僕に抱かれたら、自我を失うとか言ってたじゃん! そんなの無理ゲーだよ」



 場の空気が沈んでる時に、僕をイジるのはどうしてなのかな。おかげでアプリコットさんの表情が柔らかくなったし、別にいいんだけどさ……


 そういえばリナリアを抱き寄せて、頭を撫でっぱなしだった。



「僕たちが守ってあげるから、安心してね」


「(こくん)」



 潤んだ目で見上げてくる姿が小動物みたで可愛いから、もう少し頭を撫でてあげよう。シアがすごく羨ましそうな目でこっちを見てるなぁ。今夜もお風呂上がりに髪をとかしてあげるから、それまで我慢してね。



「そうと決まれば対策会議よ。まずは始祖様に会わせなさい」


「わかったのじゃ。自分の居場所を知られぬよう、注意を払っとるお方じゃが、同族がおれば問題ないじゃろ」



 吸血族の始祖と土地神がいるという祭壇に向かおうとしたとき、階段の下にある扉が勢いよく開かれる。そして誰かが大慌てで登ってきた。



「緊急事態です学園長! たった今、迷宮の裂け目が観測されました――」


次回はエルフ族の美青年、カクタス君再登場。

「第10話 僕らの力を知ってもらおう」をお楽しみに!

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