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特級精霊の主、異世界を征く ~次々生まれる特殊な精霊のおかげで、世界最強になってました~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第7章 人魚の国で大騒動

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第3話 仕事してくださいよ、先生

 自分は[賢聖(けんせい)]の息子だと言っていた、カクタスという男性が近づいてきた。一緒にエルフ族の女生徒も二人ついてきてるけど、その視線はシアに向けられている。いくら賢聖の息子でも、ハイエルフの真実は知らないだろう。


 そもそも禁書に指定してまで隠していた情報なんだし、知ってるのはほんの一部の人だけなはず。ハイエルフに関する書物はほとんど持ち出したってエトワールさんは言ってたから、賢聖ですら知らない可能性が高い。


 変に絡まれたら、僕がみんなを守ってあげないと……



「そこの君、初めて見る顔だね」


「ああ。昨日まで別の場所にいたから、会うのは初めてだな」


「おっと、自己紹介の前に声をかけるなんて、とんだ失礼を。私の名前はカクタス、父は最年少で賢聖になったユーフォルビア。君も知ってるだろう? 以後お見知りおきを、お嬢さん」


「ユーフォルビア様のご子息だったのか。私の名はオルテンシアという。よろしく頼む」



 さり気なく父親を自慢してるあたりがあざとい。たぶんそれを伝えるだけで、一目置かれるからだろう。だけど異世界人の僕や、他種族のアイリスとカメリアにはあまり効果がないからね。もちろんシアだって、臆することなく受け答えしてる。当然スズランも無関心な視線を向けているだけだ。


 いきなり自分がどれだけ優秀か語り始めたけど、学校行事をほったらかしでいいのかな? 引率の先生っぽい人は知らん顔してるけど、彼に弱みでも握られてるんですか? 仕事してくださいよ。



「――とまあ、見聞を広めるために、ここの学園に留学したんだよ。君も困ったことがあれば、五片(クイン)の私を頼ってくるといい。同郷のよしみで手を貸してあげるからね」


「もしそんな事態が訪れれば、お願いするとしよう」


「私は美しい女性の味方だから、遠慮なんていらないよ」



 エルフ族ってまだあまり見たことないけど、シアには他の人にない魅力さがある。これは僕の贔屓目じゃないはず。だって目の前にいるちょっと派手な取り巻きの二人より、確実に可愛いもん。恐らく彼もそれに気づいたから、こうして声をかけてきたんだろう。


 それに、さっきからスズランの方もチラチラ見てるんだよね、この人。エルフ族の男性はハーレムを作ることに抵抗がないってシアが言ってたし、こうやって手当りしだい可愛い子に目をつけるんだなぁ。



「う~ん、それにしても勿体ない。せっかくの美貌が日焼けのせいで台無しだよ?」


「国を出たのはもう随分前だし、今はこの肌が気に入ってるから、元に戻す気はないな」



 やっぱりこの国だと日焼けって思ってもらえるのが助かる。今後はここを活動拠点にしちゃうのも良いかもしれない。迷宮の難易度とか見ながら、みんなに相談してみよう。



「ねぇねぇカクタスくぅ~ん。髪も変な色だしぃ、もしかしてダークエルフだったりしてぇー?」


「あっはっはっ、バカなことを言ってはいけないよ。ダークエルフなんかになったら、恥ずかしくて外に出られるわけがない。私なら潔く自決するね」


「えぇ~、カクタスくんが死んじゃったらぁ、私も生きていけないよぉー」


「そーそー、死んじゃうなんてダメだからね」



 やっぱりダークエルフに対する偏見って凄いな。賢聖の息子ですらこれなんだから、情報操作は完璧だ。



「そういえばあたし噂で聞いたことあるんだけど、大賢者は目立つために髪を白くしてるんだって。もしかして、それを真似してるとか?」


「あはははっ、ウケるぅ~!」


「大賢者なんて運良く手柄を手に入れただけで、賢聖の足元にも及ばない小物さ。君たちもエルフ族を裏切った人物の真似をするなんて、してはいけないよ」



 真実を知らないから好き放題言われてるよ、エトワールさん。それに賢聖からは、いまだに恨まれてるっぽい。あの人が里帰りできる日は、まだまだ遠そう……



「そんな事より、今は授業中じゃないんですか? そろそろ戻ったほうが、いいと思いますよ」


「おっと、そうだった。自作のスキル(もん)を描き込んでるような人物に言われるとは、私もまだまだだな」


「そっちの子供とぉ、魔人族の子が五片(クイン)だしぃ、仲間はずれは嫌だったからぁ、描いてたりしてぇー」


「その気持、ちょっとだけわかるかも! あたしも五辺(クイン)には憧れてるし」



 これはスキル紋じゃなくて剣紋(けんもん)だから!

 肌に魔法陣を描き込んで「クッ! 封じられた左手がうずく」や「フッ……お前程度の相手に、左手を使う必要もなかったな」とか言いたい年頃は、もう卒業してます。


 説明するのが面倒だから、このままスルーするけどね。



「それでは、私はこれで失礼させていただくよ。もし彼に不満があったら、いつでも相談に乗ってあげるから、遠慮なく訪ねてきたまえ。特にそちらにいる人魚族のお嬢さんとは、仲良くなりたいものだ」


「私に気に入られたいのなら、世界を超越する力が身についてからにしなさい」


「守護者級をソロ撃破できる実力があるなら、話くらいは聞いてあげるよ」



 アイリスはしれっと僕の素性を明かしてるし、カメリアは大勇者でも難しいことを言い始めた。それにしても、あからさまな引き抜きでなく、間接的に勧誘してるあたり、頭の切れる人だ。



「私の存在意義は、この方にお仕えすることが全てですので」


「今の言葉は聞かなかったことにするから、早く戻ったほうがいい。先生が困ってらっしゃるぞ」



 しばらく僕たちの方を無視してたけど、今はハラハラした表情でこっちの様子を見てる。このカクタスって人、色々な点で問題児なんだろう。なにせ授業中にも関わらず、ナンパしに来るくらいだ。これまでも様々なトラブルを起こしてるに違いない。



「フッ……まさかこの私がいとも簡単にフラれるとは、初めての経験だよ。君、名前は?」


「僕の名前は大地(だいち)。よろしくね」


「ダイチ君か、覚えておくよ。この私が男の名前を記憶するなどめったに無いことだから、光栄に思うといい。では、機会があったらまた会おう」



 最後にウインクをして、学生の集団へ戻っていった。喋り方もそうだけど、やることがいちいちキザだなぁ。女の子ウケはいいのかもしれないけど……


 ちょっと自信過剰すぎるけど、性格が悪いわけではなさそう。もっとも、女性限定って言葉が付くけどね。とにかくシアのことを、うまく誤解してくれたのは助かった。


 このあと実習授業で迷宮へ入るって聞こえてきたから、邪魔しないように気をつけないと。学園の行事なら計画表が提出されてるだろうし、ギルド職員に聞いて違う場所に行ってみることにするか。危険があって難易度の高い場所で、実習なんてしないはずだから。


次回はカクタス君サイドの話です。

彼の運命やいかに……

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