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特級精霊の主、異世界を征く ~次々生まれる特殊な精霊のおかげで、世界最強になってました~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第5章 僕たちが救世主ってどういうこと?

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第10話 自分の若い頃を思い出すよ

誤字報告ありがとうございました!

 ダークエルフだと思っていたシアは、実はハイエルフという高位の存在だった。彼女がハイエルフになれたのは、魂の器が大きくて強度もあったから。しかしそれを確かめるには、刺激を与えて活性化させないといけない。


 そのために必要なのは、何らかの因子を取り込むことだ。シアの場合はそれが呪いになってしまったけど……


 しかし大きすぎる異物を取り込み、シアが持つ魂の器は傷ついてしまう。そこから力が抜け続けていたので、ハイエルフのスキルが発現しない状態だった。それを修復したのが、僕との繋がりみたい。本当にそれが要因なのかわからないけど、シアの役に立ったのなら嬉しいな。


 実は同じようなことが獣人族にもあり、そっちは〝殻を破る〟って言われてるそうだ。そうして進化した人には【獣化(じゅうか)】ってスキルが発現する。より動物に近い姿へ変身できるんだって。


 それを習得した人は[獣王(じゅうおう)]と呼ばれ、今は一人しかいないらしい。


 獣人族の場合は何かを取り込むんじゃなく、厳しい修行を己に課す。いわゆる覚醒とか限界突破するって感じだね。確かに殻を破るって表現がぴったりかも。



「そうそう、さっき言ってた〝厄災のエルフ〟だけど、そんな者は存在しないよ」


「いったいどういうことですか?」


「危険が伴う[転化(てんか)]を安易にさせないって戒めの意味もあるけど、一番大きな理由は嫉妬だよ」



 エルフ族というのはとにかくプライドが高く、自分たちが種の頂点だと思っているらしい。そんな彼らにとって、自分たちより魔法が優れている種族など、決して許せない存在だ。たとえ可能性が低くても、自分たちの存在意義を揺るがす者が、生まれてしまうのは困る。


 そうした事実を隠蔽するため、闇に堕ちたダークエルフとして蔑視するように仕向けた。ダークエルフに関する書物が禁書扱いになってるのも、それが原因とのこと。


 そうした工作の一環として、百年以上前に暴れた吸血族の姿を混ぜ合わせ、黒い目を持つダークエルフが厄災を振りまいた、という話にすり替えていく。その吸血族は闇に魅入られたって話だったけど、そんな姿をしてたのか……



「愚かな同胞のしでかした不始末も、[賢聖(けんせい)]たちに利用されたってことね」


「あいつらは自分の地位を守ることに必死なのさ」


「私もエルフ族であることに誇りを持っていたが、今の話を聞くと信念が揺らいでしまうな」


「ダークエルフなんて言い出したのは、もうずいぶん昔の話だから、今のエルフ族を嫌う必要はないよ。ただし、賢聖どもは気に入らない!」



 賢聖はエルフ族で魔法の扱いが上手い人に与えられる称号だけど、実際のところエトワールさんのほうが遥かに実力は上だろう。色々と因縁がありそうだし、聞かないほうが良い気がする。だって、なんか背後に黒いオーラが見えるから!



「難しい話だったけど、シアがすごい人になったってのはわかった! 良かったね、シア」


「あぁ、ありがとうカメリア。私も今の姿をやっと受け入れられるよ」


「これからはマスターに可愛いとか綺麗と言われても、素直に喜べますね」


「なっ……それは昔から……嬉しかったのだが……って、スズランは私をからかいすぎだ!」


「はぁー、なんか初々しいね。自分の若い頃を思い出すよ」


「お前はもっとお転婆――」


「なにか言ったかい?」


「……いや、なんでもないです」



 ノヴァさんって、エトワールさんの尻に敷かれてるな。本気で戦ったら近接職のノヴァさんが強いんだろうけど、惚れた女性に手を上げるなんてできないしね。僕もシアやみんなと、こんなふうに付き合っていきたい。



「しっかし、巨乳のねーちゃんは、なんでそんなに詳しいんだ?」


「そらオッゴで保管してる禁書を黙って借りてるからだよ。おかげで国へは帰れないし、こんな山奥で暮らすはめになってるけどね。あっはっはっ」


「俺はこの暮らしに満足してるから、問題ないぞ!」



 いやいや、笑い事じゃないでしょ。それに勝手に持ち出すのは、借りるじゃなくて盗むだと思う。なんとなく賢聖との因縁がわかったよ。やっぱり夫婦揃って、どこかネジが外れてる。天才とナントカは紙一重ってやつなのかも。



◇◆◇



 とにかく外的要因を魂の器に取り込み、その影響を完全に抑え込んだシアは、ハイエルフという高位の存在に進化した。狂化の衝動やスキルの書き換わりは、大賢者の見立てでも状態異常とのこと。つまりスズランの予想は正しかったわけだ。


 過去に暴走した吸血族も、同じ症状だった可能性があるらしい。その事件が百年以上前だから、めったに発生しないんだろう。ただ、僕を片手で放り投げるほどの力が出てたんだ、エルフ族の肉体では長く保たなかったはず。


 頬を染めながらこちらを見るシアは、憑き物が落ちたような表情をしてる。この笑顔を守ることができて、本当に良かったよ。



「それで私には【魔導】【重畳】【付与】【結界】のスキルが発現したんですが、このことについて教えていただけませんか」


「いいスキルが揃ってるね。それならまずは【魔導】から説明しようか」


「よろしくお願いします」



 エトワールさんは【魔導】【弓道】【重畳】【結界】の四つらしい。エルフ族といえば弓ってイメージがあるけど、スキルが発現するのはハイエルフなのか。どちらも遠距離攻撃という欠点あるとはいえ、詠唱ができない時に弓が使えると有利だ。こうした手の内の多さも、大賢者って言われるゆえんかも。


 そういえば弓を射る時、邪魔になるって聞いたことがある。どこって、ほら、まろやかさんが。エトワールさんなんか絶対に(つる)が当たりそう。



「魔法を発動する時、本が出てくるのは知ってるね?」


「はい、ページがパラパラとめくれますが、なにも起こりませんでした」


「それは呪文書(スペル・ブック)に、該当する魔紋(まもん)を描き込んでないからだよ」



 あれは魔導書でなく、スペル・ブックっていうのか。どうやらそこに魔紋を書き込むことで、発動が一瞬になるらしい。確かに玄関で放った雷撃も、魔言(まごん)を唱え終わった瞬間に発動してたな。



「それはどのように描き込めばいいんでしょう」


「その前に一つ聞きたいんだけど、オルテンシアはエルフの【書術】を持ってるかい?」


「いえ、私には【書術】は発現してません」


「あちゃー。呪文書に魔紋を書き込むには、【書術】のスキルが必須なんだよ……」



 あの二次元バーコードみたいに複雑な模様は、スキル無しで正確に描けないそうだ。エトワールさんは五片(クイン)の状態からハイエルフに進化したから問題ないけど、シアは発現を待たないとスキルが有効活用できない。


 魔法の発動ラグがほぼ無くなるなんてスキル、利用しない手はないよね。僕にちょっと考えがあるし、スズランとミカンに協力をお願いして、解決策を探してみよう。うまくいけば、僕が魔法を使うときも応用できるはず。


次回はいよいよ異世界人の本領発揮。

第5章本編最終話「魔法革命」をお楽しみに!

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