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特級精霊の主、異世界を征く ~次々生まれる特殊な精霊のおかげで、世界最強になってました~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第4章 僕だって怒ることはある

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第15話 僕には前科がありました

 (あれ? ここはどこなんだろう……)



 ベッドで寝てたはずなのに、いつの間にか外にいた。目の前に広がる地面は青々とした草の絨毯に覆われ、とても気持ちのいい風が吹いている。僕が背もたれにしてるのは樹齢何千年あるんだろうってくらい、太くて立派な木だ。


 もしかしてまた世界を超えちゃった?

 せっかくシアと恋人同士になれたのに、こんなのタイミング悪すぎるよ!


 そんな事を考えてたら、緑色の髪をした小さな女の子が目の前に飛んできた。恥ずかしそうにこっちを見てるけど、くりっとした目ですごく可愛い。空中にふわふわ浮かんでるし、もしかして妖精とか? でも背中に羽は生えてないな。


 それに周りをよく見ると米粒や丸い形、それにクリオネみたいなのとか小さな人型もいる。色も赤や青に緑、そして白だ。



「……これって精霊?」


『うん……そう……だよ』



 目の前に浮かんでる緑髪の精霊(?)が、そう答えてくれた。この子だけどうして他の精霊たちと違うんだろう。体の大きさは十センチくらいだから、近くを飛んでる上級精霊と同じ身長だ。でもサイズ以外は人と変わらない姿だし、髪とおそろいの色をしたワンピースを着てる。



「ここって精霊の国とかなのかな……」


『あの……残念。ハズレ……です』



 周りに精霊しかいないから、そんな場所かと思ったけど違うのか。



「大切な人が出来たばかりだし、できれば元の世界に帰りたいんだけど」


『目が覚めたら……戻れます。心配……しないで』


「あっ、夢の世界なんだ、ここ」



 元の場所に戻れるなら安心できる。でも、カラーの夢なんて初めて見た。風や匂いまで感じられるし、凄くリアルだな。



『夢とは……少し違うん……です』


「あれ? そうなんだ」


『あなたにお礼……したくて」


「お礼って、僕なにかした?」


「私のご主人さま……救ってくれて……ありがとう』


「もしかして、君ってリョクなの?」


『……………』



 言いたいことを伝えられて満足したのか、赤く染まった顔を隠すようにしながら離れていく。後を追いかけようとしたけど、体がいうことをきかない。もしかしてこれが金縛りってやつ?


 なんとか動こうとしてみたけどダメだ。女の子はどんどん遠ざかっていくし、もう諦めるしかないのかな。



「ねー! また会えるー?」



 僕の声が聞こえたのか、女の子は小さく手を振ってくれた。また会えるかもしれないし、名前はその時に聞こう。




―――――・―――――・―――――




 ゆっくり意識が覚醒してきた。白くてきれいな髪が朝日を浴びてキラキラ輝いている。もしかしてシアを腕枕してたから、さっきは動けなかったのかな。夢とは違うって言ってたけど、一体なんだったんだろう……


 そんな事を考えながら視線をずらしてみると、僕たちをそっと見守るようにリョクが浮いていた。



「おはよう、リョク」



 スッと近づいて来たリョクが、僕の頬になんども顔をくっつけてくる。もしかしてキスしてくれてるとか? そういえば、僕とシアのことずっと見てたもんな。その行為を真似してるのかもしれない。



「ちょっリョク、くすぐったいって。シアを起こしちゃうから、そろそろやめてよ」


「……ダイチは私の精霊にまで手を出すつもりか?」



 耐えきれずに体を動かしたから、シアが起きてしまった。しかもこっちをすごいジト目で睨んでる! いくらなんでも精霊にまで手は出さないって。


 ――あっ!? スズランっていう前科があった。


 これはあれだ、甘いセリフとキスでごまかそう。

 ダメな男の典型みたいだけど、それしかない!



「おはようシア。朝から怒ってると、可愛い顔が台無しだよ」


「そんな言葉で有耶無耶(うやむや)になどできんぞ」



 この程度じゃダメか。歯の浮き上がりそうなセリフを、頑張って言ってみたのに!

 さすがリアルはハードモードだ。



「リョクが僕たちの真似をしてたみたいなんだ。シアにも同じことをしてあげるから、それで機嫌を直して」


「うっ……朝からそのような行為は。……しかし、ダイチとはもっと仲良くなりたい。だが、このままズルズルと流されていいのだろうか。いや、私はもうダイチにすべてを捧げた身、今さらキスの一つや二つ……」



 なんかシアの中で天使と悪魔が戦ってそう。あとひと押しってところかな。



「今なら誰も見てないし、僕がとってもしたいんだけど、だめ?」


「しっ、仕方ないな。そこまで言うのなら、私も(やぶさ)かではない」



 よし! なんとかなった。


 実のところ、シアとキスしたいってのは本音なんだけどね。だってもう、今朝のシアってすごく可愛いんだ。朝日を浴びて輝く髪や、僕を見つめる熱っぽい瞳。それに肌なんかもツヤツヤで……って、あれ? 光の加減かな、昨日とは色が違うような。とりあえずシアが目をつぶって待ってるし、今はおいておこう。


 ゆっくりとお互いの息がかかる距離まで近づく、僕も目を閉じて唇同士を――



 ――バァーン!!



「おはよーダイチ! 起きてる?」


「ノックを忘れていますよ、カメリア様」


「あっ、ごめん、急いでたから忘れちゃった。それよりどうしてダイチとシアは、そんなに離れて座ってるの?」



 急に入ってこられたからだよ! あとちょっとだったのに、どうしてくれるのさ。お互い背中を向けながらベッドの両端に座ってるなんて、ラブコメのワンシーンみたいじゃないか。



「お、おはようカメリア。ちょっとビックリしただけだから大丈夫だよ。それより、そんなに慌ててどうしたの?」


「うん、ちょっと急用があったから二人に伝えようと思って来たんだけど……。今はシアのほうが、大変なことになってるよ!?」


「わっ、私は至っていつもどおりだぞ。歩くのは少々苦労しそうだが……って、なんでもない! 忘れてくれ!!」


「シア様の肌、だいぶ元の色に近づいていますよ。それに背中の傷が消えています」



 驚いて後ろを振り返ると、シーツで胸を隠すシアの後ろ姿が目に入る。前かがみになってるせいで、長い髪が乱れて背中を露出させていた。


 そこは昨日まであった斜めの傷が消え、シミひとつないスベスベの肌に。そして肌も透明感のある日焼けって言えばいいのかな、光の加減で白く輝いてる。やっぱり気のせいじゃなかったんだ。



「それからさっきチラッと見えたんだけど、ボクの勘違いじゃなければシアのスキルは八個になってるよ」


「えっ!?」



 驚いたシアが自分の左手を見て、唖然とした表情で僕たちの方に差し出す。そこには八枚の花びら模様が浮き出ていた。元々持っていた【魔術】【薬術】【知術】【占術】に加え、新たに【魔導】【重畳(ちょうじょう)】【付与】【結界】が追加されてる。


 確かエルフ族が発現するのは【書術(しょじゅつ)】のはずだから、新しく増えた四つはダークエルフのスキルってことになるのかな。どっちにしても、種族の限界値である五を超えるなんてすごい。



「まずはシア様もマスターも服を着てください。話はそれからゆっくりしましょう」



 朝からバタバタしてたからすっかり忘れたたよ。どうりで肌寒いはずだ!


 夢(?)については当面保留です。

 オルテンシアが種を超越してしまったので(笑)


 次の第16話「またやらかしてくれたわね」を投稿し、オレカスたち三人のエピローグを挟んだら、第4章が終了になります。

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