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特級精霊の主、異世界を征く ~次々生まれる特殊な精霊のおかげで、世界最強になってました~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第4章 僕だって怒ることはある

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第8話 精神的に疲れちゃったよ

 アイリスのおかげで、三人組は文句も言わずに帰っていった。シアが三人とパーティーを組んだことを、ずっと後悔していた理由がよくわかる。


 魔法で作った壁を崩したあと、通路の端へ寄せておく。近くにモンスターがいないことを確認して、小部屋で少し休憩することにした。なんか精神的に疲れちゃったから、探索を続ける気分じゃない。今から出口に向かうとあの三人と鉢合わせしそうだし、時間をつぶしがてら今後のことも相談しちゃおう。



「なんなんだよあの人たち。ボクと一緒だった二人より性格悪いよ!」


「最初に出会った頃は真面目で礼儀もそれなりにあったが、中級探索者に上がってからあんな感じになってしまったんだ。いや……、あの頃よりさらに悪くなってるな」


「次に同じようなことがあれば、迷宮でも手加減なしよ。二度と口がきけないように、全力で黙らせてあげるわ」


「私が少し話をしたいと言ったばかりに、みなに嫌な思いをさせてしまった。本当に申し訳ない」


「酷いのはあの三人の方なんだから、シアが謝ることじゃないって。以前いたパーティーのことは何度か聞いてたけど、実際に見て僕も驚いたくらいだしさ」



 下の階級を見下してたり、マナー違反とされてるメンバー引き抜きを堂々とやったり、あまつさえスズランを自分のものにしようとした。僕だって次に同じことがあれば、黙っていられないと思う。



「思い出すだけでむかっ腹が立ってくるし、とりあえず今は忘れましょ。それよりスズランに聞きたいことがあるのだけど、いいかしら」


「はい。なんでしょう、アイリス様」


「青の精霊がいたわりに暗示のかかり方が良すぎたのだけど、あなた何かしたわね?」


「いいえ。私の方から三人の子たちに、なにかを強要したりはしていませんよ。ただ、世の中にはマスターのような素晴らしい契約主がいることを、あの場で伝えただけです」



 上位存在であるスズランから話しかければ、近くにいる精霊と意思疎通ができるんだよな。その声は僕たちには聞こえないけど、おそらく嘘は言ってないはず。でもこれは契約主として言っておかないとダメだ。



「僕のことを伝えてくれるのは嬉しいけど、あまり怖がらせちゃダメだよ」


「私としては、そのような意図など無かったのですが……」


「うん、それは僕もちゃんとわかってる。多分だけど、ちょっと感情的になってたんじゃないかな」


「申し訳ございません、言われてみればそのとおりです。あの時は自分の中に芽生えた衝動を、うまくコントロールできませんでした」


「そのことは怒ってないから大丈夫。ただ、とばっちりを受けた精霊がちょっと可哀想だったし、これからは気をつけてあげて」


「はい、これからは他の子にも配慮するようにします」



 そっと寄り添ってきたスズランの頭を撫でると、花が咲いたような笑顔を浮かべてくれる。普段は母性の強さが前面に出てるけど、こんな甘えん坊なところは本当に可愛い。



「私たちのことを分け隔てなく大切にしてくださる方にお仕えできて、とても幸せです」



 そうは言ったものの、あの状況で腹を立てるなって方が無理だよね。それに精霊であるスズランが、こうした人間味あふれる感情を持ってくれるのは、すごく嬉しかったりする。泣いたり笑ったり、それに怒ったり喜んだり、そうした気持ちを共有できる方が、もっと仲良くなれると思うんだ。



「確か精霊たちは我々を愛おしく思っているから、力を貸してくれるんだったな」


「その通りですシア様。滅多なことでは愛想を尽かしたりしませんが、契約主の扱いがひどすぎると、上手に力を出せなくなったりするのですよ」


「ねぇねぇスズラン、さっきいた子はどうだったの?」


「可もなく不可もなく、といった感じでした。マスターのおかげで気付きましたが、先程は強く気持ちを伝えすぎたせいで、あの子たちを萎縮させてしまったようです。ちょっと可哀想なことをしてしまいました……」



 シュンとなってしまったスズランの頭を、もう一度撫でてあげる。あの三人もスズランを見習ってほしいよ。この子のほうがよっぽど人間らしい。


 なんだかさっきから、シアがこっちを凝視してるなぁ。怒ってるわけでもないし、どうしたんだろう。もしかして頭を撫でてほしいとか? それを直接聞くと否定されるのは目に見えてるし、できれば気軽に言ってくれる仲になりたい。もっと頼れる男を目指して頑張らないと!


 あっ、カメリアは家に帰ってからね。ここでツノを撫でたら、力が抜けて座り込んじゃうから。



「みんなに相談があるんだけど、いいかな?」


下僕(げぼく)の考えていそうなことくらい、お見通しよ。別の国へ行きたいのよね?」


「うん、そうだよ、アイリス。なんか逃げるみたいで嫌なんだけど、あの三人とはもう顔を合わせたくないんだ。だから予定を切り上げてウーサンに行ってみない?」


「ボクは賛成だよ! 美味しい海産物とか、いっぱい食べてみたいし」


「私も二度と顔を見たくないから賛成だ。ウーサンにはこことさほど難易度の変わらない、学生でも入れる迷宮があるらしいから、それに挑戦してみるのもいいな」


「そういえば大きな学校の話を、聞いたことがあるわね」


「あそこは完全中立を標榜(ひょうぼう)している国で、その理念に基づいて各国から学生を集めてるんだ。学生とその関係者だけが暮らす、通称〝学園島〟と呼ばれる島がある」



 なんだか武力で事件を解決する探偵とか育ててそうだけど、そんな島があるなんて話は始めて聞いた。国際色豊かな学校って、どんな感じなんだろう。日本にもあったインターナショナルスクールと同じ雰囲気なのかな。僕は通ったことないけどね。


 この国の首都であるアーワイチにも学校があって、身なりの良い子供ばかり出入りしてる。魔人族は成長期で体が一気に大きくなるから、その時期を過ぎた子が入学するみたい。カメリアと同じ年頃の子も見かけたし、なんとなく大学っぽい感じがした。


 この国にある学校には制服ってないけど、ウーサンはどうなのかな。お揃いのブレザーとかセーラー服を着たみんなを見てみたい。タータンチェックのプリーツスカートに、クルーソックスとローファーの組み合わせとか、最高だと思うんだ!



「ウーサンまではどのくらいかかるのですか?」


「アーワイチからの直通便だと陸路で三泊四日、海路で半日くらいのはずだ」



 途中には[ゼーロン]を取り囲む、[キナーナ]と[クハチ]っていう大きな街がある。そこで物資の積み下ろしがあって、長時間停車するらしい。途中下車もできるみたいだから、少しだけ観光してみるのもいいな。



「そうと決まれば、色々と準備しないといけないね。元の世界でも泊りがけで列車に乗ったことないんだけど、なにを用意すればいいかな」


「水と食料はラムネに任せられるし、着替えや毛布はリョクに持ってもらおう。他には暇つぶしになるようなものを、各自用意しておくくらいだな」


「途中の停車駅で家へ戻れるのだから、持ち物は最低限でも構わないわよ」


「泊りがけの旅とか、ボク楽しみだなー」



 こうやって話してたら、さっきまでの嫌な気持ちが消えていった。旅の計画を練るときって、なんだかとても楽しい。移動中にみんなで何をしようかな。カードゲームみたいなものがないか、お店でちょっと探してみよう。あとはおやつも欲しいし、帰ったらニナに頼んでおかないと。


 車内販売とかあったら、すごい硬いアイスとか食べてみたかったんだけどね!


学校は全寮制ですが、監獄みたいな場所じゃありません(笑)

殺人事件もおきない予定ですし、決闘制度もありませんよ!

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