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特級精霊の主、異世界を征く ~次々生まれる特殊な精霊のおかげで、世界最強になってました~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第4章 僕だって怒ることはある

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第4話 大賢者を超えるために

 しっかりアイリスに献血してから、僕は再び別の部屋へと向かう。ドアをノックすると、こちらもすぐに入室許可が出た。テーブルの上に置いた魔道具のランプで照らされたシアは、髪をタオルで丁寧に拭いている最中だ。やっぱり長い髪を乾かすのは大変だし、余裕ができたらラムネの【自然】を上げて、ドライヤーを再現してみよう。



「遅くなってごめん、シア」


「もう血の提供は終わったのか?」


「うん、今夜も無事にお勤めが完了したよ」


「少し顔が赤くなってるようだが、お酒は程々にするんだぞ」


「ニナが軽めのカクテルを作ってくれてるから大丈夫だと思うけど、気をつけるようにするね」



 僕を少し酔わせてからのほうが、血が美味しいとか言うんだよな。さっき僕の血を美酒とか表現してたけど、血中のアルコールを一緒に摂取してるからだったりして。普通に血を吸ったときよりアイリスの顔が赤くなるし、絶対そうに違いない。



「まあダイチのおかげで、こうして穏やかに暮らせるんだ。吸血行為に関してとやかく言うのはよしておくよ」


「こうやって補給しながらだと、旅行とかも安心していけるし、どこかに行ってみようか」


「そうだな。人族の治めるイノーニは食べ物が安くて美味しいし、ドワーフ族の国エヨンは装備品が安く買える。中級探索者になったらゼーロンに行くのもいいだろう。それにウーサンは海の幸が豊富だから、きっとカメリアが喜ぶな」



 カメリアがご飯を食べる時の顔って、すごく幸せそうだもんね。食べる量も僕より多いから、大喜びするに違いない。あれだけ食べて体型が維持できてるのは、日頃の運動量が決め手かな。


 エルフ族の国オッゴが候補に挙がらないのは、今の姿を気にしてるからだろう。この国だとエルフも少ないし、病気の後遺症でごまかせる。だけどオッゴに行ったら、侮蔑(ぶべつ)の対象にされてしまうのは確実。何があってもシアのことは守ってあげようと思ってるけど、わざわざそんな場所に行くことはない。当面は旅行の候補地から除外しておこう。



「それより今日試してみた設置魔法というのは、なかなか素晴らしい。ダイチと一緒だと魔法の多様性が一気に広がるよ」


「この世界の魔法って、基本的に何かを飛ばすだけなのは、どうしてなんだろう?」


「魔法で身を守るという発想がないのは、恐らく種族スキルや精霊の力があるからだ。あとはそうだな……遠距離攻撃の手段が、弓か投擲程度に限られているからではないか?」



 確かにこの世界には、銃やスリングショット( パチンコ )なんて武器はない。多分そのせいだと思うけど、シアに銃弾を意味する〝バレット(bullet)〟の魔言を教えても発動しなかった。不発の原因は、実物を知らなかったことだろう。


 同じく〝花火(ファイアワークス)〟も、まだ成功してない魔法の一つ。この世界に無いものなので、原理を説明したり絵を描いてみたけどダメだった。それらの経験から、魔法を発動するにはイメージが大切、そう仮説を立ててる。


 多数の魔法をばらまく〝ガトリング(gatling)〟とか〝バルカン(vulcan)〟なんか使えたら、カッコイイと思うんだけど、ちょっと残念。



「離れた敵や大勢の集団相手に、足りない攻撃手段を補うって意味では、理にかなった使い方だね」


「もう一点付け加えるなら、範囲攻撃と言っても要は規模大きくした魔法を飛ばすか落とすかだ。基本的には普通の魔法と、何も変わらない」


「確か着弾点の制御がすごく難しい、だっけ」


「今日のようにカメリアが引きつけた敵に、ピンポイントで当てるのは至難の業だよ。その点、設置魔法は使い勝手がいい」



 驚くほど狙いの正確なシアがこういうんだから、かなり難易度が高いんだろう。今日使ったのはある点を中心にして、一定エリアの温度を下げるという魔法だ。昆虫系のモンスターにはかなり有効だし、エリア内に入り込んだとしても、恒温動物の人間ならすぐ動けなる心配はない。僕たちはサクラの持つ【魔滅】のスキルで、ある程度レジストできるから、さらに安全だしね。



「範囲指定とか慣れてないと思うのに、バッチリ決まってたのは驚いた。なにかコツでもあるの?」


「あれは範囲魔法の応用だ。どの程度の大きさをした魔法を構築するかは、目視で大まかに決められる」


「それでも一発で決められるんだから、シアってやっぱりすごいよ」


「ま、まあ、なんだ。魔法に関してなら、いくらでも頼ってくれ。ダイチの……いや、みんなの力になれることが、私の喜びだからな」



 慌てて言い直されたけど、今のはとても嬉しかった。僕は元の世界に帰ることを望んでるから、安易に気持ちを伝えるわけにはいかない。でも、シアや他のみんなの想いだけには、誠意を持って応じよう。


 火や土を使った(ウォール)系も設置魔法だから、シアが活躍できる機会はさらに多くなる。だけど魔法ばかり頼りしてたら負担が一人に集中するし、パーティー全体の練度上昇にならない。そのへんは僕もしっかり意識していかないと……



「負担になってることがあったら、遠慮なく言ってね。お互いに支え合ってこそのパーティーなんだし」


「ふふっ。やはりダイチは優しいな。以前はそんな風に言われたことなどなかったよ。なにせ探索者の間では、エルフは魔法がなければ精霊以下の存在、なんて言われることもあるくらいだ」


「それはちょっと(ひど)すぎるなぁ」


「エルフ族から魔法を取ったら、容姿と長い寿命くらいしか残らないからな」


「そんなこと無いって。シアの持ってる【学術】とか【占術】には、かなり助けられてるよ」



 アイリスと出会えたのはシアのおかげだし、迷宮の分かれ道でも時々進路を指示してくれる。それに僕たちがこれまで安全に、そして効率よく迷宮を探索できてるのは、幅広い知識を持つシアの力が大きいと思う。



「ついでにこれもダイチには伝えておこう。エルフ族というのは、女性の立場があまり良くないんだ。男女比が一対三くらいなので、貴重な男ばかりが優先される。私が国を飛び出した理由は、大賢者に憧れていたのと、そうした気風が嫌だったからだよ」


「そうだったんだ……」



 女性の立場が悪いっていうのは初めて聞いた。人魚族が女性だけだっていうのは知ってたけど、エルフ族にもそんな偏りがあったのか。こうやってみんなと話す機会は毎日作ってるけど、まだまだ知らないことが多い。もっとこんな時間を作って、なんでも話せる関係を作っていこう。



「だから、こうして大切にしてくれる仲間と出会えた私は、とても恵まれている。こんな姿になっても悲観せず暮らしていけるのは、ダイチたちのおかげだ」


「そんなエルフ族が探索者を続ける理由って聞いてもいい?」


「ああ、構わないぞ」



 そう言ったシアは少しだけ遠くの方を見つめ、こちらに視線を戻す。赤い瞳が魔道具の淡いランプに照らされて、ちょっと幻想的だ。見つめてたら吸い込まれそうになる。



「やはり【魔術】のスキルが発現した者は、魔法の研鑽(けんさん)を積むためだな。もちろん金や名誉という面も大きい」


「やっぱり魔法の上手な人って尊敬されるんだね」


「国から魔法を極めたと認定された者には、[賢聖(けんせい)]の称号が与えられる。今は男が二人と女が一人の、合計三人いるはずだ」



 カメリアの話だと、魔人族で実力トップにいる人は[魔皇(まこう)]と呼ばれるらしい。エルフ族みたいに複数いるとか言ってなかったけど、どんな人なのかな? 普段はゼーロンで活動してるとか言ってたっけ。どれくらい強いのかちょっと興味がある。



「シアも魔法の精度や規模ってずば抜けてるし、賢聖と同じくらい実力があるんじゃない?」


「どうだろうな……。私は独学で魔法を学んできたし、誰かと競ったりしなかったから、どの程度の使い手なのかはちょっとわからない。少なくとも経験不足で、まだまだ賢聖には敵わないだろう」



 エルフ族って三百年以上生きられるみたいだし、僕よりずっと年上のシアでも若輩者になってしまうのか。スケールが違いすぎて、あまり実感がわかないな。なにせ人間だと、もう中年と言っていい年齢だしね。見た目基準で考えるなら、まだ高校生くらいって感覚なのかも。



「シアが実力をつけていったら、きっと憧れてる大賢者に届くと思うよ」


「どこまで実力を伸ばせるか未知数だが、そうありたいものだ。さて、そろそろまた魔言(まごん)を教えてくれ。いずれ大賢者を超える魔法使いとなるためにな」



 ちょっと冗談めかした声で、シアがふわりとした笑顔を浮かべてくれる。その姿に一瞬目を奪われたけど、なんとか返事を口にしてから、二人きりの時間を楽しむことにした。


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