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特級精霊の主、異世界を征く ~次々生まれる特殊な精霊のおかげで、世界最強になってました~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第3章 迷宮に出会いを求めてもいいよね

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第8話 この不埒者ー!

誤字報告ありがとうございます!

ブードってなんや、ブードってw

 ――ドンドンドンッ!



 うー、なんかうるさいな。昨日はいつもと違う姿勢で寝たから、まだちょっと眠いんだ。それに今は温かくて抱き心地のいい枕を離したくない。



「ん……ぁ………」



 少し強く抱き枕を自分の方に引き寄せると、なんだか可愛い声が聞こえてきた。首筋に硬いものが当たってるけど、ツボを刺激されてるみたいで気持ちいい。



『ダイチ! 起きているか、ダイチ! 少し聞きたいことがある』



 あぁ、ドアを叩いてるのはシアか。あんなに慌ててどうしたんだろう。ここはアイリスの影の中だから、なにかに襲われたり不審者が侵入したりしないのに。



「ふあぁー。起きてるよー、シア」



 さすがにこの状態では寝てられない。ゆっくり目を開けると、赤くてきれいな色が視界を埋め尽くす。昨日はお風呂で体を拭いてもらい、汚れていた髪もきれいになったけど、こんなにツヤツヤしてたっけ?


 それに僕の膝にかかる重さが、明らかに昨日とは違う。全体的にふっくらして、腕や胸に当たる感触がとても柔らかい。スズランより少し弾力が強いかな。なんというか芯がしっかりしてる感じ。


 そんな風に自分の身に起きた変化を考察していたら、部屋のドアが勢いよく開く。



「大変なんだ、ダイチ。実は精霊が――」



 そこまで言ったシアが、僕の胸元あたりを指差しながら固まってしまった。もしかしてカメリアを膝抱っこしてるから怒ったのかも。だけどほら、妹にお願いされたら兄としては断れないよね。そもそも、こんな小さな子に手を出したりしないって。心配性だなシアは……



「ん……あれ?」


「カメリアも起きたんだね、おはよ……う?」



 ちょっ!? なんで。目の前にいる女の人は誰?


 赤くて長い髪の女性が、眠たげな青い瞳を僕の方に向けている。シンプルな部屋着はまくれ上がり、今にも脱げそうだよ。健やかな成長を遂げた部分に持ち上げられたんだな、これは。僕が抱き寄せてるからギリギリ隠れてるけど、この感触はスズランより少し小さいくらいかも。


 ……いやいや、大きさとか検証してる場合じゃない!



「さすが私のマスターです。本当にくっついてしまったみたいですね」


「くっ……くっつく、だと!?」



 スズランの言葉に思い当たるフシがあったので、カメリアっぽい女の子の頭をじっくり見てみる。寝る前に固定しながら血を馴染ませていたツノが、完全に一本の状態になっていた。少し開いていた隙間も消え、継ぎ目も一切見えない。



「あっ……あぅ。く、くすぐったいからやめて。あんまり撫でられると、力が抜けちゃうから」


「あっ、ごめん。ちゃんとくっついてるかなって……」



 頬を染めながら潤んだ瞳で見上げるカメリアは、なんだかとても色っぽいな。昨日までの子供っぽさは完全に消え、年相応の美しい少女になっている。身長もかなり伸びたらしく、膝の上で横抱きしてる彼女の顔は、昨日とまったく違う位置だ。間違いなく一晩で十センチ以上、背が高くなってるはず。



「こっ、こっ、こっ……この不埒者ぉぉぉぉぉーーーっ!!!」



 屋敷中に響き渡ったシアの絶叫で、僕は考えるのを一旦やめた。きっと下半身も脱げちゃってるだろうから、服を着てもらわないと非常にマズイ。シアの百面相を見てなんとか耐えてたけど、そろそろ僕の精神力も限界だ。起動スイッチを押し込む前に離脱しよう。



◇◆◇



「まったく……朝から騒がしい声で起こされたと思ったら、とんでもないことをしてくれたわね」


「僕もこんなことになるなんて思ってなかったんだ。ごめんね、アイリス」


「ほめんなふぁい」


「口の中にものを入れたまま喋ちゃダメだよ、カメリア。それにほら、ソースが頬に付いてるから、少し動かないで」


「うん、気をつける。ありがとう、ダイチ」



 布巾(ふきん)でカメリアの顔についたソースを拭くと、にっこり笑って食事を再開しだした。血の繋がりで体調は万全どころか、ツノが元に戻ったおかげで完全な魔人族として復活している。成長期が来る前にツノが折れてしまい、ずっと(とどこお)っていた成長因子が一気に開放されたのではないか、これがシアの予想だ。


 お腹もかなり空いてるみたいで、さっきから三人前くらい食べてるんじゃないかな。ニナが嬉しそうにその食べっぷりを見てるくらい、どんどん胃の中に消えていく。



「朝起きてみたらスズランから新しい精霊が生まれているし、慌ててダイチの様子を見に行けば裸の女性と抱き合ってるし、まったくけしからん……」


「それで? その精霊はどんなスキルを持ってるのかしら」



 黄緑色の精霊にはメロンという名前をつけてあげた。元の世界でよく食べてたのが、ちょうどこんな色だったから。スズランの子供はみんな三文字だし、喜んでもらえて良かったよ。


 メロンも他の子と同じ小人型で、強化に特化した加護精霊だ。

  剛力:☆☆☆☆☆

  強壮:☆☆☆☆☆

  神速:☆☆☆☆☆

  専念:☆☆☆☆☆

 [補強]

 やっぱり特殊なスキルを持っていて、【剛力】が筋力の上昇、【強壮】が持久力の上昇、【神速】が俊敏の上昇、そして【専念】が集中力の上昇になる。特殊スキルの【補強】は、上昇した身体能力で体を痛めないよう、サポートしてくれるみたい。


 サクラのスキルで攻撃に対する耐性は上がっても、力が弱くて耐えられなかった。でも、メロンのスキルを上げていけば、その問題が解消されるはず。しかも精霊スキルの効果は、僕たち全員に適用される。華奢で小柄なアイリスが、片手で大人を圧倒するなんて姿が見られるようになるかも。でもアイリスならその前に、口撃で倒しちゃうかもしれないな。



「しかしまあ、よく一晩でそんなに大きくなったものね」


「せっかく仲間が増えたと思ったのに、裏切られた気分だ」



 二人ともどこを見ながら言ってるの! しかも裏切られたって……


 だからほら、カメリアも両手で持ってポヨンポヨンしない。シアの機嫌が悪くなるからやめてあげて。まだ下着も買ってないし、隣に僕がいるんだからさ。そんな姿を見せつけられると、月例アップデートの時みたいに、強制的にスリープ解除されちゃう。



「でも、なんでボクのツノって、くっついちゃったの?」


「ダイチの血には(のり)の成分でも入ってるのではないか?」


「僕は普通の人間だよ!?」



 うぅー、シアの機嫌がだいぶ傾いてるなぁ。確かに僕も同じことを考えて、昨夜はあんなことをしてみたんだけどさ。なんか他の人に言われるとショックだ。そりゃあ血には凝固成分があるよ。水色のスモックを着た細胞が、頑張ってくっつけてくれたかもしれない。でも、欠けていた部分まで元に戻るようなことは、ないと思うな。



「濃厚で味わい深い血ではあるけど、変な添加物は入ってないと思うわよ」



 さすが吸血族、僕の血を完全に食品扱いしてる。四角いパックに〝成分無調整 生き血100%〟とか印刷して、ストロー付きで売られてそう。



「なにが影響したにせよ、間違いなくダイチの奇行が原因だろう。切断面を合わせて血を流し込むなど、誰もやったことがないはずだからな」


「奇行とか言わないで……」


「えへへ。ありがとう、ダイチ。ボクみんなに助けてもらえて、よかった!」



 この笑顔には癒やされる。本当に元気になって良かった。単なる思いつきだったけど、やってみた甲斐があるってものだ。


 魔人族として完全体になり、しかもツノが折られる前よりスキルが二つも増えたからか、以前のおどおどした感じがすっかり抜けている。たぶんこれ、スズランが持ってるスキルの影響下にも入ってるんだろう。【鼓舞】のスキルがあると、明るく元気な気持ちになれるからね。



「それよりほら、カメリアの服を買いに行こうよ。このままだと色々と目の毒だからさ」


「私のものだと大きさが合いませんし、その方がいいと思います」


「スズランってすごく大きいよね。ボクびっくりしたよ」


「……二人とも、しぼんでしまえ」


「ほらシア、拗ねてないで行くわよ。まずは迷宮から出ないといけないんだし、シャキッとなさい」



 やっぱりシアの前で胸の話題はタブーだよな。体のコンプレックスって色々と根深い問題があるから、あまり触れないようにしよう。とにかく今は迷宮を出て買い物しないと、精神力が削られ続ける。


 カメリアも僕たちと一緒に活動することになったから、ギルドで登録をしないといけない。色々とやることは山積みだ。


カメリアの身長は150cm→168cmになってます。

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