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特級精霊の主、異世界を征く ~次々生まれる特殊な精霊のおかげで、世界最強になってました~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第2章 スキルがいい仕事をしてくれました

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第8話 栄養ドリンクみたいに言わないで

 全員で裏の林を調べた結果、黒い円筒形の不審物を見つけた。落ち葉で隠すように木の根元に埋まっていたから、なにかの目的があってここに置いたのは確実だろう。



「シアにはこれがなにかわかる?」


「私にわかるのは、市販品ではないということだけだな」


「街の職員が置いた可能性はありませんか?」


「私の不調は、人が頻繁に訪れるようになる前からよ。それに、得体のしれないものを家の近くに黙って放置するとか、国に属する組織がするかしら」



 例えば山林の保護とか害獣よけ、それに測量なんかで魔道具を埋めることがあるかもしれない。でも、ここから見える場所にアイリスの家があるんだから、黙って作業していくことはないと思う。日本でも近所で工事が始まるときなんか、ポストにチラシが入ってたし。



「ともかく一度止めてみれば判明する。それで何も変化がなければ元に戻せばいい」



 ねじ込み式の蓋を開けたシアが、中に入っていた本体を引き出す。長方形をしたボードの中心に輝石(きせき)がはまっていて、そこから伸びた線が幾何学模様になってたり、所々に部品のようなものがついている。魔道具の中身って初めて見たけど、ちょっと電化製品の基盤ぽい。


 シアがボードから輝石を抜き取ると、うっすら光っていた線が消えた。



「どう? なにか変わった?」


「何かで撫でつけられるような不快感が消えたわ。誰が置いたのか知らないけど忌々しいわね。見つけたら影に取り込んで、死ぬまで出られなくしてあげようかしら……」



 アイリスの口からオシオキと称した、危険な報復案がブツブツ漏れている。確か人間って光や音が一切届かない場所にいると、精神が耐えられなくなるはず。この子はなるべく怒らせないようにする方が、いいかもしれない。



「とにかく大儀だったわ。ありがとう、オルテンシア」


「あっ、いや、そのなんだ、役に立ったのなら良かったよ」



 初めて名前を呼ばれたからか、シアは顔を赤くしながら狼狽(うろた)えだした。何だかんだでちゃんとお礼も出来るし、アイリスっていい子だよな。超年上だけど。



「さて、憂いも無くなったことだし、次は栄養補給ね。そこにしゃがみなさい、ダイチ」


「僕のことを食べ物みたいに言わないでよ!」


「俗物的な価値基準で考えてもらっては困るわね。眷属を持たない吸血族は処女と同じよ。そんな私に血を与えられるのだから、光栄に思っていいわ」


「しょっ……!? そんな甘言(かんげん)(ろう)する輩は、何をしでかすかわからない。すぐダイチから離れるんだ」



 この外見で経験豊富とか言われたら、色々な意味で困る。発禁処分受けちゃうよ。それに、こうやってストレートに言われると恥ずかしい。シアだけじゃなく、僕の顔まで熱くなってきた。



「あなた達は依頼を受けてここに来たのでしょ? それには私の協力が必要だと思うのだけど、違うかしら」


「うん、もし人がいたら名前を書いてもらったり、使用人の数を教えてもらわないといけないんだ」


「素直に血を差し出すなら、名前くらい書いてあげるわよ。それとも、今までのように書類を置いていくなら、このまま帰ってもいいけど?」


「依頼失敗はできれば避けたいなぁ……」



 今回の依頼は違約金がないけど、達成率はギルドで管理してる。成績が悪かったりすると、受けられない依頼が出てくるから、なるべくなら失敗はゼロにしておきたい。なにせギルドは国を超えた組織なので、成績の情報はどこに行っても知られてしまう。



「あー不快感が消えたら、なんだか眠くなってきたわー。今日はもう、ペンを持つ気力も残ってないみたいー。新鮮な血があれば、もう少し頑張れそうだけどー」



 うわっ、ずるい!

 僕の方をチラチラ見ながら、棒読みでそんなことを言いはじめた。(ひたい)に手を当てながら、ちょっとフラフラしてるあたり、無駄な過剰演出だ。



「わかった、わかったよ。僕の血を吸ってもいいけど、少しだけにしてね」


「あら、そうなの。無理強いしたつもりはないのだけど、悪いわね」


「どの口がそれを言うんだ……」


「まあまあシア様、マスターってああいう方ですから。そんな優しいところが尊敬できます。少し流されやすいですけどね」



 流されやすいのは自分でもわかってるから!

 上げてから落としたのはわざとなの? ねぇ、答えてよ、スズラン。



「あっ、もし体調が悪くなったら困るし、家の中でしない?」


「そうね。書類の記入もあるし、いちど戻りましょうか」



 異世界人である僕の血に、どうしてそこまで(こだわ)ってるんだろう。ご当地グルメや期間限定フレーバーを、無性に食べたくなる感じかな。さっきは食べ物扱いするなって言ったけど、自分で同じこと考えて悲しくなってきた。


 とりあえず今は、調査に協力的してくれることを喜ぼう。



◇◆◇



 ソファーに座った僕の前へ立ったアイリスが、こちらをじっと見つめてくる。これってやっぱり捕食者の目だよ! でも、金色の瞳がすごくきれい……



「じっと見られてるとやりにくいわね。しばらく目を閉じてなさい」


「わ、わかったよ」



 僕としても至近距離で見つめられると恥ずかしいから、素直に目を閉じることにした。首筋にかかる息が荒くなってるけど、大丈夫かな……


 そんなことを考えてたら、チクリとした痛みが走る。舌がチロチロと当たってくすぐったいけど我慢だ。



「……んはぁ……んっく。すごい、わ……………、から……だ、あつく」



 なんかすごく艶めかしい気がするんだけど!?

 首筋にかかる息も熱いし、一体どんな事になってるの。



「そろそろ離してくれると嬉しいんだけど」


「もう少し。もう少しだけ……あっ!?」



 僕を掴んでいた手から急に力が抜けたので、慌てて支えるように抱きしめる。目を開けてみると、潤んだ瞳で頬を染めるアイリスの顔が、至近距離にあった。腕の中でぐったりしてるけど、風邪で熱が出た子供みたい。



「けしからん、実に破廉恥だ。見た目は子供なのに、何なのだあれは。ダイチもダイチだ、まさか劣情を催してるんじゃなかろうな」



 シアがなんかブツブツ言いながら半眼でこちらを睨んでるけど、さすがに僕もこんな小さな子に欲情なんかしないからね。ちょっとドキドキしたけど、現在もスリープモード継続中だ。



「大丈夫? 立てる?」


「腰が抜けてしまったからダメね。そこに座らせてもらえるかしら」



 僕の血って一体この子にどんな影響を与えたんだろう。変な副作用とか無いといいんだけど……



「それで、力は戻ったのかな?」


「これをご覧なさい!」


五片(クイン)だと!? 確か先ほどまで三片(トリプル)だったはずだぞ」



 アイリスが掲げた左手の甲には、花びら模様が五枚刻まれていた。なにそれ、力が戻るとスキルも増えるの?



「一つ減っていたのは魔道具の影響みたいだけど、私は元々四片(クアッド)よ」


「ダイチの血を飲めばスキルが増える……?」



 あ、シア、そんな目でこっちを見ないで。エルフ族がそんなことしても、多分スキルは増えないから。



「えっと【吸収】【支配】【霧化】【飛翔】【操影】って書いてるね」


「あら、私のスキルが見えてるの?」


「僕にはシアのスキルも見えてるんだけど、もしかしたらこれって……」


「そのとおりです、マスター。アイリス様に血をお与えになったからでしょう、マスターとの繋がりができています」



 えー!?

 もしかしてさっきの行為が、スズランがいつも言ってる〝深く繋がる〟ってことになるの?


 確かに吸血族ならではの繋がり方だと思うけど、さすがにこれは予想外すぎるよ。僕と契約してる精霊の庇護下に置かれるってことは、ある意味アイリスを眷属化してしまったってことじゃ……


 本人にバレたら非常にマズイ気がする!


逆にけんぞくぅ化してしまった主人公(笑)

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公の体液の聖的(?)な力で(多分年は合法な)ロリを眷属に…体液をもっとほしいと…あれどこまでも意味深 最新が以外と遠い…
[良い点] まさかの逆眷属w 主人公の無双が止まらない! [一言] うーんスズランさんの暴力的なお体が気になるといえば気になるところ。でもサクラとリョクの今後の進化も、とても気になりますね。
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