表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特級精霊の主、異世界を征く ~次々生まれる特殊な精霊のおかげで、世界最強になってました~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
特級精霊あふたー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

231/237

里帰り編:第1話 オッゴの空に

家族の入院とか、生活環境の激変で、半年ほどご無沙汰してました。

不定期で連載している番外編も、いよいよ最終話へ向けて動き出します。

すべての原稿は完成してますので、間を置かずに投稿を行えます。

まずは里帰り編をお送りいたしますので、ぜひお楽しみ下さい。


作品内の時間も(リアルの時間も)経過しているため、様々な変化(と言う名の設定齟齬)があるかもしれません。おおらかな気持ちでお読みいただければ!


ではスタートです。

 ラムネに転移門を開いてもらい、オッゴへ到着した。ここは神樹がある広場の目立たない場所。以前は聖域と呼ばれ、入場が規制されてたけど、今は人々が集まる憩いの場所だ。


 管理棟のある方向を見ると、三長老とエアリアルさんが、ベンチに座ってお茶を飲んでいる。なんか縁側でくつろいでいる老夫婦みたいでいいな。



「あっ、やっほーダイチ。今日は二人だけ?」


「こんにちは、エアリアルさん。残念ながら、リナリアは来ませんよ」


「ドルフィンシスターズだっけ? 最近のリナリアって、すごく忙しそうだよね」



 学園を卒業してからも、歌手活動を続けているリナリア。マネージャーだったデイジーさんは、独立してリナリアの付き人になった。そんな流れで僕と正式に交際を始めたんだけど、痛めていた声帯が治っちゃったんだよね。スミレにも無理だったのになんでだろ? しかも見た目まで若くなってきたし……


 それで再デビューすることになり、学園長のアプリコットさんと、元歌姫でバンダさんの妻カトレアさん。四人でユニットを組むことになった。ユニット名は僕の命名だ。なにせ活動拠点がイルカ島だから。



「ファーストコンサートはここでやりますから、楽しみにしていてください」


「我らも全面的に協力するからの」


「今から楽しみだ」


「うちわを大量に作っておかねばならんな」



 三長老のみんな、気合い入りまくってるなぁ。リナリアたちが出演した卒業コンサートの時、ウーサンまで駆けつけてくれた。派手なハッピを着て、頭にはちまき、両手にうちわという姿で。なんかすっかりアイドルオタクになってしまった感じがする。



「それで、どうして今日は二人だけなの? スズランもいないじゃん」


「実はシアの両親に挨拶しようと思って」


「結婚の報告をしておかないと、次いつ会えるかわからないからな」


「ライラックとプリムローズのやつ、やっと帰ってきたのか」


「かれこれ十年ぶりくらいかの?」


「二人目も作らずフラフラと、のんきなものだ……」



 そのぶん僕が頑張って、シアと子孫を増やしますから!

 心の中で宣言しながら隣りを見ると、シアの頬が真っ赤に染まっていた。どうやら思考を読まれてしまったらしい。まったくもう、可愛いな、シアは。



「ほっほっほっ。相変わらず仲が良くて、善きかな善きかな」


「急ぎでなければ、賢聖(けんせい)たちの訓練所へ行ってやれ」


「みな会いたがっていたからの」


「わかりました、挨拶してきます。じゃあ行こうか、シア」


「うむ。では失礼しますエアリアル様、長老様」


「またねー」



 シアに手を差し出すと、そっと指を絡めてくる。三長老たちの生暖かい視線を背に受けながら、僕たちは神樹広場をあとにした。



◇◆◇



 石切り場のような区画へ行くと、威勢のいい声や爆発音が耳に届く。なんか岩山の上からヒーローが現れたり、背後で爆煙の上がりそうな場所だ。



「あと五周、しっかり付いてこい」


「くっ……はぁはぁ。頑張ります」


「そこ、声が小さい! もう一度初めからやり直せ」


「はっ、はい。ラディッシュ様」


「そこのあなた、腕の角度が違いますわよ。決めのポーズはこうです」


「わかりました、エシャロット様」



 えっと……これは魔法の訓練?


 先頭を走るのは、赤いマフラーを首に巻いたユーフォルビアさん。その後ろを若いエルフの男女が、今にも倒れそうな顔でついていく。トラックの中央付近には、腕立て伏せや腹筋をしてる人。

 ラディッシュさんの近くにいるのは、発声練習をしたり声を合わせてなにか叫ぶ人たち。そしてエシャロットさんの近くでは、一列に並んだエルフたちが、変身ポーズみたいな練習してる。


 ここってアクション俳優やスタントマンの養成所なのカナ、なのカナ。



「ねえシア。これがエルフ流の魔法訓練ってやつ?」


「少なくとも私が国にいた頃は、こんな訓練法じゃなかったな」



 やってることが体育会系すぎるよ!

 そりゃあ迷宮に入って活動するため、体力づくりをするのは正しいことだ。でもさ、エルフの特技って魔法じゃないの? それがどうしてこんな事に……



「やあ、ダイチ君じゃないか。キミも一緒に走るかい?」


「用事の途中なので遠慮しておきます」


「それは残念だね。ハハハハハ」



 あのユーフォルビアさんが、爽やか系のキャラになってるー!?

 若い頃にその性格を発揮できていれば、異種族ハーレムも夢じゃなかっただろう。


 僕がそんなことを考えていたら、立てた二本の指をサッと振り、ユーフォルビアさんが走り出す。なんか「アデュー」って声が聞こえてきそうだ。



「ダイチじゃないか、久しぶりだな」


「ご無沙汰してます、ラディッシュさん」


「オルテンシアも来たのね。歓迎するわ」


「こんにちは、エシャロット様」



 ちょうど休憩時間になったらしい。二人の賢聖がこっちへ来てくれた。なんかむちゃくちゃ注目されてるぞ。きっとシアが可愛いからだね!



「どうして人族が賢聖様と親しげに」

「隣りにいるやつ、ダークエルフじゃないのか? どうやってこの国に入ってきたんだ」

「バカ、長老様たちが言ってただろ。あれは死を乗り越えた者だけが到達できる、ハイエルフって進化系らしい。大賢者エトワール様と同じだそうだ」

「マナの量が大幅に増えるって話だけど、そんなバクチは打ちたくないよね」

「隣の子は、ただの人族だよな?」

「私、あの子が戦略級超広域極大魔法を撃った時、砦にいたよ」

「じゃあ、アレがゼーロンの荒野を火の海に変えた、伝説の破壊神!!」



 やめて!? 破壊神とか呼ばないで!

 あれは僕一人の力じゃないんです。ここにいるシアも手伝ってくれたんだよ。



「外野の声は放っておけ。それより最近、合体魔法のアイデアに詰まっていてな。なにかヒントを貰えないか?」


「前に教えていただいた、雨と雷の魔法がありましたでしょ。あれはビビビッっときましたわ」


「えっと……じゃあ粉塵爆発を使った、魔法の強化とかどうでしょう。狭い迷宮内で使うと、効果抜群だと思うのですが」



 僕は二人に粉塵爆発の仕組みを教える。可燃物のほうが効果的だと教えたら、魔法で木くずを作り出してみるらしい。僕も賢聖の魔法は見たことないから、ちょっと楽しみだ。



 〈木屑の濃霧ウッドチップ・ヘヴィーフォグ

 〈引火(フラッシュ・ポイント)



 広い場所へ移動した二人が、岩山へ向かって魔言(まごん)を唱える。二次元バーコードのような魔紋(まもん)が構築されていき、一周したところで魔法が発動。やはり賢聖だけあって、魔紋の完成も速い。


 そして魔法が炸裂した瞬間、二人は腕をクロスさせた。



「「合体魔法、ダスト・エクスプロージョン!!」」


 

 ちょっと待って。そのポースいるの?

 お互いの魔法を時間差で発動させ、十分に粉塵が集まってから着火させた手腕は、見事だと思うんだけどさ……



 ――チュドォォォォォォーーーン



「おぉぉー、さすが賢聖様」

「うひょー、かっけー」

「息ピッタリなお二人の姿、シビレルわぁ」



 あっ、必要だったんですね、あれ。見学していた若いエルフたちは大盛りあがりだ。そうか、みんなが訓練していたのは、これをやりたかったからか。それなら僕からなにも言うことはない。そっとしておこう。



「ほう。たったこれだけのマナで、この威力か」


「なかなか素晴らしいですわ! 感謝しますよ、ダイチ」


「喜んでもらえたのなら何よりです」


「これは、なにか礼をせねばならんな」


「それならいい案がありますわ。エトワールからダイチの特技を聞きましたの。こう見えて私、化粧とか得意ですから、喜んでもらえると思うわ」



 ちょっと待った。嫌な予感しかしないんですが!

 両手をワキワキさせながら近づかないでください、エシャロットさん。


 っていうか、助けてよ、シア。

 えっ? 賢聖には逆らえない!? そうなんだ、それなら仕方ない……なんてわけあるかー!!


 いやいや、そんな事されても僕は喜ばないってば。お願いですから、それだけは勘弁してください。


 ちょっ、ユーフォルビアさんまで参戦するの?

 鍛えまくってるせいか、むちゃくちゃ力が強くなってるぞ、この人。


 ダメです、いけません、そんなところ触らないで……




 ――アッー!


次回、オルテンシアの両親が待つ実家へ。

「里帰り編:第2話 オルテンシア家の3乗」をお楽しみに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ