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特級精霊の主、異世界を征く ~次々生まれる特殊な精霊のおかげで、世界最強になってました~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第14章 迷宮解放同盟

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第4話 モンスター間引き作戦

一週間空きましたが、お盆期間中は家の主権を巡る争いをしていました。

詳しくは活動報告の方に!

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1353159/blogkey/3033516/

 中央タワーの地下には巨大な転車台があり、小型の機関車に屋根のない客車が繋がれている。五方向に敷設(ふせつ)された線路は、地上のものより幅が狭い。線路の左右に設置されたプラットホームは魔道具の明かりで照らされ、列車の整備士たちが忙しく作業をしていた。



「地下にこんな施設があったんですか」


「ここは有事の際に避難場所(シェルター)として使ったり、外壁まで逃げるための避難路になってるんだよ」



 大氾濫を教訓にして作られたゼーロンを囲む大隔壁は、モンスターの被害を中で食い止めると同時に、自分たちを閉じ込める檻にもなってしまう。そこで壁の建設と同時に作られたのが、この地下大回廊だ。ここから住民たちを国外へ逃したり、有事の際に戦闘員を砦へ派遣したりする。


 現在のゼーロンは、全域に非常事態宣言が発令されているため、スムーズな移動は難しい。そこでプリムラは、ここの使用を決定した。



「屋根がついてないなんて、変わってるね」


「まあ雨に濡れる心配もないし、理にかなっていると言えるな。しかし地下に列車を通すなど、よく思いついたものだ」



 地下鉄の存在を知っている大地(だいち)はいつも通りだが、カメリアとオルテンシアは少し落ち着かない様子だ。



「崩れたりしないから平気だよ。ここの作りってかなり特殊だからね」


「この地下施設は、輝力(きりょく)によって支えられておるのだ。世界最大の魔道具と呼べる代物なのだぞ。そんな場所に立っていられるだけで、儂は興奮してくるのだ」


「維持するだけでも、輝力をバカ食いするんでな。迷宮を封鎖できない理由の一つは、これがあるからなんだ」



 街に住む住民たちには、災害時の避難場所として利用可能な、地下シェルターとして告知されている。しかし施設の具体的な内容を知っているのは、ごく一部の限られた者だけだ。


 施設の詳細こそ知っていたバードックだったが、ここに足を踏み入れたのは初めてのこと。魔道具マニアの血をたぎらせる彼は、目を輝かせながら構内を歩き回っていた。


 そんなバードックの姿に苦笑を浮かべながら、ガムボウは大地たちや賢聖(けんせい)へ地下施設の詳細を伝えていく。それが一段落した時、出発準備の完了を係員が告げに来る。



「これからカンロックの方向にある、第二防壁へ向かいます。そこにある砦からダイチ君の魔法で、モンスターの間引きを試みます。その成果次第で賢聖の二人にも、追撃をお願いすることがあるかも知れません。よろしくお願いします」



 プリムラの合図で、カンロック方面へ方向を変えたトロッコ列車に、全員が乗り込む。街を守る壁は三層構造になっており、モンスターたちの突進を食い止める外側の第一防壁。そして最も堅牢なのが、真ん中にある第二防壁。街に一番近いものは、最終防衛ラインとも言える第三防壁だ。



「この通路(プラットホーム)はどこまで続いてるんですか?」


「避難の方法は基本的に徒歩だから、線路のある場所はずっとこんな感じだ。列車は荷物を運んだり、子供や年寄りを乗せるもんだしな。それにこいつはあまりスピードが出ない。俺なんかだと【獣化(じゅうか)】して走ったほうが速いくらいだぞ」


「なるほど。確かにゼーロンの人口を考えると、列車のみではとてもじゃないけど、捌ききれませんしね」


「ボク、獣化って見たことないんだけど、どんな姿になるの?」


「えっとね、えっとね。すっごくカッコよくなるんだ! それに全身がモッフモフなの。ねえガムボウ君、やってみてよ」


「あれは体力をやたら使うんだ。こんな大事な時に出来るか」


「ちぇー、残念」



 緊張感の足りないやり取りも交えながら、トロッコ列車は目的地へ進んでいく。地下といっても活動するには十分なほど明るく、空気が循環しているため息苦しさも感じない。地球にある地下鉄と大きく違うその構造に、異世界の技術は素晴らしいと、大地は心はずませる。


 やがてホームの幅が広くなり、円形状になった場所へ到着した。



◇◆◇



 監視員たちが常駐する、砦にある最上階の部屋からさらに上。四角い屋上には手すりなど設置されておらず、腰の高さより低いパラペットが作られているのみ。そこに一行が上がってくると、遠くの方から黒い鳥が飛んできた。



「おーい、やっと来たかお前ら」


「お帰り、クロウ。偵察ご苦労さま」


「こうしてご主人さまに抱っこしてもらえたら、俺様いくらでも頑張れるぜ!」



 一直線にカメリアの胸へ飛び込んだクロウが、頬を擦り寄せながら目尻を下げる。色々と言動の残念なクロウに、誰もツッコミを入れようとしない。



「これだけ広範囲の情報が一気に集まるんだから、はっきりいって反則よね。でもおかげで凄く助かってる。ありがとうございます、クロウさん」


「別に敬語なんていらねーぜ。なにせ今回のことは、利害の一致みたいなもんだからな」



 前回の大氾濫で初動が遅れた失敗を活かし、ゼーロンの監視体制は大幅に強化されている。それでも第二防壁の各所に設けられた砦と、外側になる大隔壁からの目視だけだ。望遠鏡を使ってある程度の観測は出来るが、裂け目の細部を確認することは難しい。


 もしクロウがいなければ危険を承知で、近くまで偵察を送らなければいけないところだった。そのことを思えば、クロウの言動程度は誰も気にしないのである。



「カメリアちゃんからも報告を受けてるけど、クロウさんの見た感じではどう?」


「裂け目の中心部はそろそろやばいな。ありゃいつ動き出してもおかしくねえ。外側に詰まってるモンスターのおかげで、身動き取れないだけだと思うぜ」


「それで、カローラって子の手がかりになりそうなものって見つかった?」


「目視で確認した限り、人はいなかったぞ。あいつは精霊だから消えることが出来るかも知れねえが、恐らくロータスのやつも一緒だろ。スミレのスキルに反応はねえのか?」


「探査範囲を目一杯広げてもらっていますが、生体反応はありません」


「スミレのスキルは【潜行(せんこう)】で隠れた対象も見つけられるので、ここから見える範囲にいない可能性が高いですね」



 スズランと大地の報告を聞き、プリムラは作戦の決行を近くにいた砦の兵士へ告げる。そして大地たちに向き直った。



「前方に発生している、迷宮の裂け目がある区域は、すべて荒野です。多少むちゃしても人的被害はありません。ゼーロン国家保安局プリムラの名において、モンスター間引き作戦を開始します。責任は全部こっちで取るから、なにやっても大丈夫だよ」


「わかりました。じゃあみんな、こっちに来て」



 両手を広げた大地のもとへ寄り添う、スズランとオルテンシア、そして精霊たち。大地は全員の絆を確かめるように、一人ずつ頭を撫でていく。



「ちょっと無理させちゃうけどごめんね」


「マスターのお役に立つことが、私たち精霊の本懐ですから」


「ダイチのマナは相当多いと思うが、上限はあるんだからな。限界以上の魔法行使は絶対に駄目だぞ」


「うん。わかってるよ、シア。だけどみんながいてくれるから、絶対に大丈夫」


「私もいる、忘れないで」



 大地の横に顕現したアトモスフィア(アスフィー)が、ぴょんとジャンプしながら背中へぶら下がった。



「アスフィーもいてくれると、心強いよ。それからリョクも、シアのサポートお願いね」



 シアの肩から飛び立ったリョクは、任せてと言わんばかりに大地の周りを、クルクルと飛び回る。



「始めようか」



 静かにそう宣言すると、五人の精霊が大地の肩に座り、スズランとオルテンシアが隣へ立つ。そして大地の手をそっと握った。



 〈エクステンシブ(extensive)メテオ(meteor)ストライク(strike)〉!!

 〈爆裂付与エンチャント・エクスプロージョン



 星五まで上げたミカンの【石巌(せきがん)】スキルが、三節の魔言(まごん)を受け取りアルファベットの魔紋(まもん)を構築。それが完成する直前、オルテンシアの前に呪文書(スペル・ブック)が出現し、勢いよくページがめくられていく。


 二つの魔法が完全にシンクロした時、上空に炎をまとった隕石群が発現した。



「あっこれ、敵に回すと絶対ダメなやつだ」



 上空を見上げたプリムラが、表情の抜け落ちた顔で言葉を漏らす。




 ――ズドドドドドドドドドド




 地響きとともに隕石が落下し、着弾と同時に爆裂。その衝撃で辺り一面が大きく揺れた。地面は赤熱化し、第一防壁には熱風と砂ぼこりが叩きつけられる。想像以上の規模に砦の兵士たちは慌てふためき、賢聖の二人は次元の違う魔法に腰を抜かす。


 視界が晴れたあとの荒野には、大小様々なクレーターが残されるのみであった。


次回は「第5話 無茶なことをしやがって……」をお送りします。

一気に集まった輝力で思わぬ余波が。

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