表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特級精霊の主、異世界を征く ~次々生まれる特殊な精霊のおかげで、世界最強になってました~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第13章 来訪者たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

201/237

第17話 荒れる会議

 ゼーロンの行政区にある中央タワーには、各国の首脳や実力者たちが集まっている。普段はゼーロンで活動しているバードックさんも、今はアーワイチ国の席にいた。そしてゼーロン国の席に座っているのは、上半身が見事な逆三角形になってる男性。オレンジに黒いスポットカラーの入った髪、そして少し丸みを帯びた大きな耳。


 太くて長いしっぽも髪と同じ配色だけど、なぜか隣りにいる兎人族(とじんぞく)の女性に弄ばれている。ピンク色の髪で二十代に見える、小柄でちょっと気弱そうな感じ。だけどここにいるってことは、要職に就いてるんだよね?


 僕がそんなことを考えていたら、その女性がスッと立ち上がった。しかし、しっぽは持ったままだ。



「国家保安局長官プリムラです。本日は急な呼びかけにもかかわらず、こうしてお集まりいただき、ありがとうございます。まさか翌日の午前中に全員が揃うなんて驚きました。協力していただいたウーサン国には、感謝いたします」



 うわ、この人って組織のトップだったのか。日本で言うところの警視総監や、警視庁長官みたいな役職になるのかな。この若さで長官ってことは、相当優秀なんだろう。挨拶の間も、ずっとしっぽを離さない人だけど。



「今は緊急事態ゆえ、一部の関係者にしか明かしておらん力を、使ってもらったのじゃ。皆もその旨、理解してほしいのじゃ」


「おいおい、ウーサンの。彼らの持ってる便利な力を、独り占めしようってか?」



 この人、アーワイチから連れてくる時にも、やたら取り入ろうとしてきたんだよな。金はいくらでも出すからアーワイチに来いとか言われても、イルカ島から離れるつもりなんて無い。なにせユグと一緒に暮らせなくなってしまうからね。



「オーキッド殿。今はそれどころではないのだ。彼らのことは一旦置いておくのだ」


「これは国家間の力関係に影響する話だぞ。他国をコソコソ嗅ぎ回ってるウーサンが、こんな力を独占してみろ。どんな弱みを握られるか、わかったもんじゃない。そうだろ、列席の皆さん方よ」



 もっと時間があれば、しっかり根回しできたんだろう。だけど、こんなタイミングで力を披露することになってしまった以上、今みたいな話が出てしまうのは仕方がない。僕たちがもっと多くの実績を積み、ウーサン所属の特級探索者として認定を受けていたなら、時間の無駄になるような事は言われなかったのに。


 なにせ特級探索者は、何かしら他人にないものを持つ。それは特殊な武技だったり、進化したスキルだったり。特級探索者というのは、そんな力を各国の上層部が共有した上で、探索者ギルドの総本部が認可する。


 もし僕たちが特級探索者になっていたなら、オーキッドさんのように難癖をつけたり引き抜きをしようとした時点で、主権侵害として制裁対象になってしまう。



「なんだなんだ、どうしてなにも言わない。危機感が足りてないだろ。特に秘密主義のオッゴはどうなんだ?」


「危機感が足りてないのは、お前さんの方だ」

「我らは特に脅威とは思っておらん」

「彼らのことは信用しておるからの」


「ならイノーニはどう思う、それにエヨンも。好きな場所に転移できる力なんて、危険だと思わないか?」



 オーキッドさんはそう問いかけるが、二国の代表者は口をつぐんだままだ。



「どういうことだよ。まさか、もう弱みを握られてるんじゃないだろうな」


「あー、もう。面倒くさいですね。ちょうどこの場には各国の首脳陣が揃ってますし、探索者ギルドの代表者たちもいます。どうでしょう、ここで天空の翼のメンバーを一人残らず、特級探索者にしちゃいませんか?」



 えー!?

 しびれを切らしたように立ち上がったプリムラさんが、とんでもないことを言い始めちゃったよ。だけど、しっぽは(かたく)なに離さないんですね。



「それには彼らの実績が必要じゃな。ここにまとめてあるのじゃ」



 ちょっ!?

 もしかしてオーキッドさんに絡まれたのって、予定調和だったの?

 準備が良すぎでしょ、アプリコットさん。



「確かダイチくんだったね」


「はい、そうです」


「箝口令は敷いてるから、全部ぶちまけちゃっていいよ」



 僕に向かってプリムラさんが可愛くウインクしてきた。この二人、最初からグルだったな。もしかすると他の三国とも話はついていたのかも。知らなかったのはオーキッドさんだけ、なんてこともありそう。



◇◆◇



 会議に出席していたのは僕一人だけだったけど、パーティーメンバー全員とユグを連れてきた。もちろんフィギュアに宿った土地神たちも一緒だ。



「まだ成人していない子供に歌姫まで。リーダーも若いし、本当に上級探索者なのか? なにかズルしてないだろうな」


「それはありえん。彼らの討伐記録は、探索者ギルド本部でも精査している」


「改めて自己紹介します、僕は天空の翼リーダーの大地(だいち)。右から特級精霊のスズラン、ハイエルフのオルテンシア、吸血族のアイリス、魔()族のカメリア、人魚族のリナリアです」


「特級精霊? ハイエルフ? ……いやそれより、そこにいる人形を抱いた子供はなんだ。ここは遊び場じゃないぞ」



 途中で思考放棄したな、オーキッドさん。まあこの時点でも情報量が多いしね。イルカ島が土地神の集合場所ってのは各国の上層部に伝わってるし、全部ぶちまけろと言われたから連れてきたんですよ。



「この子はオッゴを支える霊木から分化した、イルカ島で育っている神樹(しんじゅ)の意識体です。フルネームはユグドラシル、略してユグといいます」


「あたし、ゆぐ。よおしくね!」


「そしてユグが抱いているのは、エヨンの職人さんが作ったフィギュアに宿る、土地神たちの()()です」



 ユグから飛び立った土地神たちが、テーブルの上へ並んで挨拶をする。それを見ていたオーキッドさんは、完全にフリーズ状態だ。さて、それじゃあとどめを刺すか。



「アスフィー、来てくれる?」


「やっと呼んでくれた。一人でいるの、退屈」


「ごめんね、アスフィー。背中にぶら下がってていいよ」


「ん、そうする」


「この子は僕と契約している、意志ある道具インテリジェンス・デバイスのアスフィー。それからこれが剣紋(けんもん)と呼ばれる、契約の証です」


主様(ぬしさま)と私の絆。魔剣との相性、良い人じゃないと、出ない」



 さあ、まだまだ行くよー。



「カメリアの肩にとまっている鳥は、彼女と契約している精霊獣のクロウです」


「おっぱいの救護精霊クロウってんだ、よろしくな!」


「みんな出てきて」



 僕たちのことを知らなかった人たちは唖然としてるけど、最後に精霊たちを呼び出す。すると姿を隠していた五人が、僕の前にずらりと並ぶ。



「こちらから守護精霊(しゅごせいれい)のサクラ、支護精霊(しごせいれい)のラムネ、加護精霊(かごせいれい)のメロン、戦護精霊(せんごせいれい)のミカン、援護精霊(えんごせいれい)のスミレです。全員が絆の力によって生まれた、スズランの子供になります」


「マスターとパーティーメンバーの皆様、そして(わたくし)とのつながりで誕生した、愛の結晶です」



 ふわりと浮き上がったスズランが、空中できれいなカーテシーを決める。これで彼女も人とは異なる存在だと、わかってもらえるだろう。


 そしてパーティーメンバーの力や、精霊たちのスキルを伝えていく。剣紋を持っているとはいえ、やっぱり僕が一番見劣りしてしまうな。そのぶん精霊たちがフォローしてくれてるんだけどね!



「……危険だ。一国にこれだけの戦力が集中するのは、危険極まりない! そもそも神々が集まる場所がある時点で、世界の脅威になっているんだ。こんな連中を特級探索者なんかにしたら、結託してなにをやらかすか、わかったものじゃない。このままではウーサンの思う壺だぞ、自国を滅ぼされても良いのか!!」


「おいおい。あたいらが侵略行為なんて許すはずねえだろ、なに言ってるんだ」

「そのような行いをする人物へ、わたくしたち土地神が心を開くはずありません」

「神樹ってね、人の悪意に敏感なの。その意識体であるユグちゃんが、彼のことを父親として慕ってるんだよ。それがどれくらい凄いことかわかる?」


「あい! おとーたんだいすき!!」



 抱っこしていたユグが、首へギュッと抱きついてくる。やっぱり娘にこうしてもらうと、すごく落ち着くな。三人の長老たちが羨ましそうな顔をしてるし、あとでユグと遊ばせてあげよう。



「むしろこの子たちがいなかったらぁー、イノーニやオッゴは滅んでたかもねぇー」


「土地神様たちがいる国へは、攻めて来ないかもしれません。しかしアーワイチやゼーロンはどうなるのです。誰も守ってくれないのですよ」


「ゼーロンは特に問題視してないよ。そもそもウチの諜報部が許可(ゴーサイン)を出したから、こうして協力してもらったんだし」


「しっ、しかし我が国は……。えぇい、キミもなんとか言いたまえ」


「探索者ギルドの代表としては、彼らの昇級に賛成です。そこにいるダイチ君は、全国の職員たちから高く評価されている。それに仲介ギルドで塩漬けになっていた案件を、見事に達成したことも有名だ。後になってわかったことなのだが、あの土地はかつて我が国を支配していた皇族家が、民間へ下賜(かし)した由緒正しい場所だったしね」



 うわー、そんな場所にアイリスは住んでいたのか。もしかすると元の持ち主だった吸血族の商人って、皇族と繋がりがあったのかも。



「なにより、彼らのパーティーに参加している魔人族のカメリア君は、不世出の英雄ターニップとオリーブの娘です。たとえ他国といえども、探索者のトップに立ったと知れば、あの二人も喜んでくれることでしょう」


「組織の代表がこんな時に私情を挟むんじゃない!」


「それはオーキッドさんも同じでは? 個人的にこの子たちの力が、欲しんですよね。なにせあなたは、そうやって成り上がっていったのだから」


「……ぐっ」



 プリムラさんの発言で、オーキッドさんが言葉をつまらせた。なんかこの人って、他国の代表たちから嫌われてない? それどころか、アーワイチの探索者ギルド長からも、敬われてない感じだ。


 徐々に顔色を赤くしていったオーキッドさんが、突然席を立つ。あまりに勢いよく立ったものだから、椅子が倒れてるじゃないか。



「お前たち、こんな危険分子を特級探索者なんかにして、あとで後悔するなよ。私は帰ってこのことを、国へ報告させてもらうからな」



 そう言い捨てると、ドアを乱暴に閉めて出ていってしまう。僕の可愛いユグがびっくりするから、あんまり大きな音を立ててほしくないよ。それにあんな態度は教育に悪い。



「やれやれ、帰ってもあなたの座る席なんてないのにね。まあ邪魔者がいなくなったし、仕切り直しをしましょう。とりあえず満場一致で、天空の翼を特級探索者に昇級させる、これでいいかな?」



 こうして僕たちは、ウーサンに所属する特級探索者として、認定されるのだった。


次回が13章の最終話になります。

特級探索者になった主人公たち。

そして大地の決意とは……


「第18話 仕切り直し」をお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ