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第1話 初めての属性魔法

第2章の開始です。

 シアが暮らしていた小屋は、元々この場所にあったらしい。荷物だけ片付けて掃除したあと、結界を張っていた迷乱(めいらん)の魔道具から、輝石(きせき)を抜いて停止させる。


 森の小屋には人嫌いの賢者が住んでいて、その人物もエルフ族だったそうだ。ここに残されていた古代文字を読めたから、小屋を利用することができた。魔道具にもプロテクトが掛かっていたみたいだし、それを解除できるシアって本当にすごい。


 もう狂化の衝動に怯えなくていいので、月が沈むと同時に眠らなくても大丈夫。だから今日は、夜明けを待って出発だ。



「シアって本当にいろんなことを知ってるから尊敬するよ」


「そのことで褒められたことがないから、そんな風に言ってもらえるのは嬉しいな」



 僕たちはスマホを持ってたから、必要な時その場で調べる癖がついてしまってる。だからどうしてもジャンルが偏ってしまうし、終わったら忘れちゃうことも多いんだよね。でもシアの持っている知識はかなり幅広い。知識はかさばるものじゃないし、生活を豊かにしてくれる(かて)だ。これから一緒に活動していくのが、本当に楽しみになってきた。


 でも同じ部屋で寝泊まりすることになりそうだけど、大丈夫かな。男がもう一人いれば、二人づつ二部屋って案も出たと思う。スズランは精霊だから隣で寝てても緊張しなくてすんだけど、シアは普通に可愛い女の子だ。近くのベッドにいるって意識したら、ドキドキして眠れなくなりそう。でもスズランは絶対に離れようとしないし、シアは僕たちを監視する気満々だから、別の部屋は無理っぽいかなぁ……



「そういえばダイチは、魔法のことを知りたがってたな。森を抜けるまでに、基本的なことを教えようか?」


「あっ、それはすごく知りたい! まだこの世界の属性魔法って、見たことないんだ」



 治癒スキルは先月かけてもらったけど、光ったり魔法陣が浮かんだりしなかった。傷口が逆再生のようにふさがっていくだけで、凄いとは思ったけど地味だったんだ。属性魔法なら何かの物理現象が発生するはずだし、かなり見ごたえあるんじゃないだろうか。



「私たちエルフの持っている【魔術】スキルは、精霊の力を借りずに魔法を発動できるんだ。その規模と速度は精霊を超える反面、マナの消費が多いという欠点がある」


「そのマナってやつは、総量に個人差があったりするの?」


「もちろん種族によって大きく違うし、個人差もあるぞ」


「精霊の場合は、その格によっておおよその量が決まっています。私たち精霊が属性魔法を使う場合、マナの一部を契約主からお借りしますので、二人分の合計で魔法をどれだけ行使できるかが変化しますね」



 やっぱりあるのか、マジックポイントみたいな概念! 精霊の星が埋まっていくのもスキルポイント制みたいだし、この辺の仕組みはゲームっぽい。


 個人が持ってるマナの量はおおよそしかわからず、使いながら体感で判断するしかないみたいだ。マナが切れる前兆で体がだるくなってくるそうだから、属性魔法を使えるようになった時は僕も気をつけよう。


 やはりというか、エルフ族はマナの量が特に多い。人魚族と魔人族がそれに次ぐ量を持ち、獣人族やドワーフ族は少ないそうだ。そして人族は上下のブレが大きいとのこと。僕はどれくらいあるのかな、ゲームみたいにバーが出たり、現在値と最大値が表示されればいいのに。



「緑の精霊が持っている収納スキルなどは、埋まっている星の数で容量が上昇する。この子は四つ埋まっているから、容量は私がいた小屋くらいだな」



 日本の感覚でいうと、大体六畳って感じかな。僕が住んでたワンルームマンションより、少し狭いくらいだろうか。そう考えると結構な量が入る。緑の精霊を連れてる人が多かったのは、収納や治癒スキルが便利だからだろう。



「そしてダイチが見たがっていた属性魔法がこれだ」



 そういったシアが右手を木のある方へ差し出す。どんな魔法を使ってくれるんだろう、見逃さないようにしないと。



 〈水の刃(ウォーター・ブレード)



 すると模様の描かれた帯が、シアの周りを取り囲むように伸びていく。その動きはインクジェットプリンターで出力するときの様子に、ちょっと似てるかも。模様はスマホでよく使う、二次元バーコードっぽい。


 そしてその帯が一周すると、水でできた小さな刀身が飛び出し、上の方にあった枝を切り落とす。



「すっ……凄いよシア! 模様のついた帯が伸びるとこなんかカッコよかったし、あんな遠くにある枝に当たるなんて!!」


「ま、まあスキルの鍛錬を頑張ったから、これくらいはな」



 ちょっと恥ずかしそうにしてるシアだけど、その顔はとても嬉しそうだ。やはりこういった魔法を見ると、ここはファンタジーの世界なんだなって思う。う~ん、僕も魔法を使ってみたいなぁ……



「ウォーター・ブレード! アイス・アロー! ファイア・ボール!」



 試しに呪文を唱えてみたけど、さっきみたいな帯は全く現れない。シアの持ってるスキルは見えるけど、やっぱり僕に使えないみたい。



「こら、ダイチ。森の中で火属性を使うのは絶対にダメだ、火事になるからな」


「あっ! ごめん、シア。気をつけるよ」



 魔法が発動しなくてよかったと、胸をなでおろす。この森は薬草なんかも採れるみたいだし、危うく街の人に迷惑をかけるところだった。



「魔法を見るのは初めてだと言っていたが、ダイチはよく他の魔言(まごん)を知っていたな」


「僕の世界にあった娯楽作品(ゲームやラノベ)で使ってた言葉なんだけど、あんな感じでいいの?」


「魔言は基本的に、属性と形状を組み合わせて使う。ダイチが赤の精霊と契約すれば、すぐにでも魔法を使えるようになるぞ」



 こちらをチラッと見てきたスズランの頭を撫でると、嬉しそうに微笑んでくれる。この子との契約破棄なんて絶対にしないから、属性魔法についてはしばらく忘れよう。シアがいてくれるなら、僕は別のことができた方がいいしね。二人で固定砲台なんて戦い方は、現実的じゃない。


 しかし英語で言った呪文が、この世界では〝まごん〟ってものに聞こえるのか。異世界語へ翻訳される時に、うまく変換されてるのかもしれないな。



◇◆◇



 森で採れた果物や木の実で腹ごしらえをして、その後もシアからは魔法について色々教えてもらった。魔法を使う時に伸びる帯は〝魔紋(まもん)〟で、呪文に相当するのが〝魔言(まごん)〟と呼ばれている。


 エルフの持つ【魔術】の種族スキルは、魔紋を構築する速度に補正がかかるそうだ。精霊の場合、威力や規模は星の数で変わり、魔術スキルの場合は経験や慣れ、いわゆる熟練度に左右される。


 シアはその辺りの修業を怠らなかったから、狙いは正確だし威力もかなりあった。その気になったら範囲魔法も使えるらしい。敵を一気に殲滅するとか、ロマンだよね!




 すごく充実した時間をすごし、僕たちはアーワイチの街へ帰ってきた。


第2章も10話+2つの閑話でお送りします。

新しい仲間も増えますので、ご期待下さい。

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