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第2話 火山迷宮

 神像の手配をすませたあと、イグニスさんのところに行って、リナリアを紹介してきた。案の定というか、ある意味当然とも言えるけど、すごく気に入られてる。聖域が完成したら、そこで歌を披露して欲しいそうだ。どうやらエアリアルさんに自慢されまくったので、聞いてみたくなったらしい。


 そんな訳で、火の祭壇を作るために必要な素材を手に入れようと、僕たちはエヨンの火山迷宮へ。ここのモンスターが落とすアイテムに〝原初の炎〟というものを封じ込め、祭壇へ祀っておく必要がある。


 ドロップ率は低いとのことだから、出るまで頑張らないと。



「ここって硬いモンスターが多いね」


「当たると痛そうだし、気をつけてくれよ、ご主人さま」


「落とすアイテムに鉱物が多いのは、ちょっとうんざりするわ」


「ドワーフ族をかなり見かけるのは、そうしたアイテムが目当てなんだろうね」



 小柄でズングリした体型の人が、[軽量]や[不壊]の付与された巨大な(つち)を豪快に振り回す姿は、見ていて気持ちがいい。火を(まと)ったモンスターも多いから、ハンマーで押しつぶすのは安全に倒す、いい方法だと思う。


 僕もいろいろな武器に挑戦してみたいけど、アスフィーがすっかり手に馴染んじゃってるし、他の武器を持つと嫉妬されそうなんだよね。武器の置いてあるお店で立ち止まると、背中にぶら下がってるアスフィーが、ピクリと反応するんだよ。本人は意識してないかもしれないけど、そんな所がちょっと可愛かったりする。



「マスター。この先の通路に複数の敵影です」


「よし、偵察してくるぜ」



 クロウがカメリアの肩から飛び上がり、通路の奥へ消えていく。



「ファイヤーテール・リザードの群れみたいだよ。尻尾が真っ赤に燃えてる」


「よし、私の出番だな。任せておけ」



 シアを先頭にして通路を進んでいくと、体長が八十センチくらいある中型のモンスターがいた。全部で二十匹程度だろうか。尻尾の先が真っ赤に燃えて、周囲が陽炎(かげろう)のように揺らめいている。


 世界樹の杖を顕現させたシアが、モンスターの索敵範囲から外れた場所に立つ。



 〈水の散弾ウォーター・ショットガン

 〈複合照準(マルチプル・サイト)

 〈発射(シュート)



 ノヴァさんたちとイノーニの迷宮に潜った時、シアが持つ【重畳(ちょうじょう)】スキルの熟練度に、変化があった。三つの魔紋(まもん)が縦に並び、付与の施された弾丸を一斉に発射。いくつか外れてしまったが、そのほとんどが尻尾の火に命中する。



「いくよ、アスフィー」


『ごちそう、ごちそう』



 ファイヤーテール・リザードは、ちょっと面白い特徴を持つモンスターだ。なぜか尻尾の火が消えると、極端に動きが悪くなってしまう。もしかすると変温動物の性質を受け継いでて、あの火で体温調整してるのかも。


 逃げることすらままならなくなったモンスターを、アスフィーでスパスパ斬っていく。ファイヤーテール・リザードの群れは、ほんの数十秒で全滅してしまった。



「シアちゃんの魔法は、いつ見ても不思議なの」


「【付与】のスキルは、私にしか使えないからな。これだけはエトワール様に、唯一勝っている部分だ」



 そう言って謙遜してるけど、二人の実力はある程度拮抗してると思う。負けているのは経験値くらいじゃないかな。なにせ二人で迷宮に潜ってる時、エトワールさんはずっと楽しそうにしてたから。お互いに刺激し合える相手じゃないと、あんな短時間で二人の実力が上がったりしないはず。



「お目当てのモンスターはまだなのかしら」


「もう少し上の方だって、ダイチが言ってたよ」


「今まで山登りはクロウ任せだったから、ちまちま進むのは面倒すぎるわね」


「さすがの俺様でも、いつ火柱が吹き出すかわからない溶岩の上は、飛べないぜ」



 この国にあるのは通称〝火山迷宮〟って呼ばれてて、山の内部をくり抜いたような構造になっている。いくつもの階層が重なってできてるから、上のフロアにいくほど面積が狭い。だけど溶岩が邪魔して、何度も遠回りを余儀なくされてるせいで、アイリスがうんざり気味だ。



「リナリアが癒しの歌を歌ってあげるの」


「さすがリナリアは気が利く子だわ。どこかの下僕(げぼく)とは大違いね。次の休憩にお願いしようかしら」



 アイリスって半分浮いたような状態で移動してるから、そんなに疲れないはずなんだけどな。まあ単に面倒なので甘えたいだけかも。だからって僕をディスるのは、やめて欲しいんだけど……


 とにかくもう少し上フロアまで、どんどん進んでいこう。



◇◆◇



 あれから二階層分上へ登り、とうとう目的地に到着した。しばらく奥へ向かって移動していたら、マップに妙な反応が現れる。複数の敵性アイコンと、少し距離を開けながら移動する、六個の生体マークだ。あれはどこかで一網打尽にするため、モンスタートレインしてるんだろうか。それなら誘導役と待ち伏せ役に分かれるのが、一般的な作戦のはず。でもマップに、その六人以外の生体反応はない。



「これってモンスターに追われてるっぽいよね。もし危なそうなら助けてあげようか」


「俺様が誘導すると驚かれそうだし、様子だけ見てきてやる」



 先行したクロウの視覚情報によると、ゴーレムに追われる六人のドワーフ族がいるようだ。かなり必死の形相で逃げてるみたいなので、助けに入って文句を言われる可能性は低い。



「この階層まで来られるような実力者だ、恐らくイレギュラーな事態がおきたんだろう。十分気をつけて行ってみよう」



 シアの言葉で気持ちを引き締め、準備を整えて移動を開始。広い場所へ出たところで、前方から走ってくる六人のドワーフ族が見えてきた。全員が金のブレスレットだから、上級探索者か。そして追いかけているモンスターは、僕たちが探していたミスリル・ゴーレムだ。



「おーい、お前らも逃げろ!」

「ドジ踏んで眠ってるやつを全部起こしちまったんだ!」



 マップに表示されてるマーカーの数は、全部で五十体くらいかな。移動しながらシアに聞いた話だと、ゴーレム系のモンスターが眠る格納庫みたいな場所が、まれに発生するらしい。そんな溜まり場を一気に目覚めさせると、これだけの数が襲ってくるのか。



「すいませーん、これ倒しちゃってもいいですか?」


「お前ら、爆弾を大量に持ってるのか?」


「いえ、剣で斬ってしまおうかと」


「任せて、主様(ぬしさま)


「なに言ってるんだお前ら……って、よく見たら中級か。知らないかもしれないが、ミスリル・ゴーレムは剣も魔法も効かないんだ。爆弾でふっとばして倒すしかないんだぞ」



 その辺りはシアから事前にレクチャーを受けてるので、ちゃんと知ってますよ。爆弾で衝撃を与えるか、破城槌(はじょうつい)のような質量兵器で倒すのがセオリーだ。フィクションと違い、どこかに刻まれてる文字を一つ消せば止まる、なんてことはない。



「ちょっと事情があって、あれの落とすレアアイテムが必要なんです。そのために準備してますから、大丈夫だと思いますよ」


「そこまで言うならやってみてくれ。俺たちの手には負えんから、アイテムはそっちのものでいい。だが無理そうなら逃げるんだぞ。俺たちはこの迷宮の構造に詳しい。撤退は付き合ってやる」



 よし、許可が出た。それにいったん足を止めてくれた辺り、いい人たちみたいだ。これならトラブルになる可能性はないだろう。


 レアアイテムが出ることを願って、サクッと倒してしまうぞ。


 今回のために登場したような6人のドワーフ族ですが、実は重要な役目があったりします。後の話で判明しますので、お楽しみに!


次回は「第3話 スパっとスパSUPAっ♡」です。

IQ3でもまかせなさーい。

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