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第4話 保護者を探せ!

誤字報告ありがとうございました!


先日ポチったキーボードが連休中に届きそうデス。

果たして誤字が増えるか減るか(笑)

 カローラちゃんはゼーロンに住んでいて、今日は家の人と一緒にウーサンへ来たらしい。お祭りを見ようとフェスティバル会場まで足を運んでみたものの、気がつくと一人になっていたそうだ。


 はぐれてからも広場をウロウロしてたようだから、発見場所でとどまってても迎えに来る可能性は低い。なので見つけてもらいやすいように、抱っこしながら保護者を探すことにした。



「遠くまで見える……すごい」


「知ってる人がいたり、見たことある場所があったら教えてね」



 こうやって子供を抱き上げてると、メロンが持つスキルの恩恵を感じる。まったく負担にならないから、抱っこしたまま何時間でも歩けそう。なにせ今の僕ならカメリアやスズランだって、軽々お姫様抱っこできるしね。体型は少し筋肉がついたかなってくらいしか変わってないけど、以前なら考えられないくらいの力が出せるようになった。



「あれ……なに?」


「子供がボールを投げてるけど、なんだろう。ボクも初めて見るよ」


「数字の書いた紙を下に置いてるから、うまく狙って点数を稼ぐ遊びじゃないかな」



 子どもたちが投げてるのは、ほとんど転がらない布のボールだ。きっと縁日とかでやってる、的あてゲームみたいなものなんだろう。



「ボクやってみたい!」


「悪いけど大人はダメだぜ。そっちの嬢ちゃんなら参加できるが、どうする?」


「カローラちゃん、やってみる?」


「うん……やりたい」



 どうやら年齢制限があるらしく、店主に拒否されたカメリアが落ち込んでる。頭を撫でてあげるから、元気だしてね。一緒にツノも撫でてあげるから。


 ……あっ、表情が少し色っぽくなってきた。そろそろやめないと、この場でへたり込んでしまう。


 とりあえず輝力で支払いを済ませると、店主から五個のボールを渡される。これを的に向かって投げ、合計点数に応じて景品が出るそうだ。



「ん……やっ!」



 カローラの投げたボールが弧を(えが)き、十と書かれた場所に落ちる。大きな紙の上に三十点や五十点のエリアがあるけど、点数が大きいほど範囲は狭い。そうした枠以外の部分が全部十点だ。



「狙った場所に……行かない。……えいっ!」



 二つ目のボールも十点のところに落ちてしまう。今まで浮かべてた笑顔が曇ってきたし、ちょっとだけアドバイスをしてあげようかな。



「投げる時に上からじゃなくて、下からこうすると狙いやすいよ」


「やってみる。……それ!」



 ソフトボール投げを実演しながら教えてあげると、今度は三十点の部分にボールが落ちた。



「やったねカローラちゃん、三十点だよ!」


「うん……できた」



 カメリアと手を取り合いながら喜んでる姿が可愛い。こういった遊びは未経験っぽかったので手ほどきしてみたけど、うまくいって良かった。


 その後も立て続けに三十点と五十点のエリアへ命中させ、景品としてもらったのが中くらいの袋。中身はお菓子の詰め合わせだ。僕の腕に抱かれながら、大事そうに袋を抱えてる。



「良かったね、カローラちゃん」


「外で遊んだの……初めてだから……楽しい」



 かなり上質な服を着てるけど、もしかすると裕福な家庭の箱入り娘なのかも。家からあまり出してもらえず、蝶よ花よと育てられてるとか。だとすれば親御さんも心配してるだろうな。


 ……あっ!? こうして連れ回してたら、営利誘拐と間違われたりして。


 その時は誠心誠意、害意がないことを説明するしかない。今は保護者を探しつつ、外の世界を目一杯楽しんでもらおう。大丈夫、きっとなんとかなるさ!



◇◆◇



 広場をぐるっと周回しつつ、三人でお店を見て回る。今の所、保護者らしき人は見つかってない。ずっと抱っこしてるから人に紛れにくいし、何よりカメリアの存在が目を()くから、注目度は抜群のはず。それでも見つからないのは、人が多すぎるからだろう。この世界にも迷子センターとか、あったらいいんだけどな……



「あっ」



 そんな事を考えてたら、カローラが短い声を上げる。



「もしかして誰か知ってる人がいた?」


「違う……あの店……さっきも見た」



 カローラが指差す露店には、木彫りの人形が並べられていた。木目の風合いをそのまま生かしたもので、塗料とかは使ってないみたい。色も白や茶色、それに黒いものもある。確か地球にも真っ黒の木材ってあったな。確か黒檀(こくたん)とかいう名前だっけ?



「わー、色々な動物があるね。ボクもなにか買って部屋に飾ってみようかな」


「猫や犬、鳥まであるのか。どれもすごく良く出来てて、職人技って感じがする」



 赤茶色の髪をした店主の男性は、背が低くて横に広い体型だ。思ってたより(ひげ)が濃くないし、まだ若いドワーフ族なのかな。だけどさすがモノづくりが得意な種族だけあって、毛や羽の質感を感じる造形が素晴らしい。



「鳥……かわいい……欲しい」


「気に入ったんなら買ってあげようか?」


「今日はいっぱい……遊んでもらった……だから……いい」



 そんな悲しそうな声で言われたら、余計に買ってあげたくなるよ。値段を見るとそんなに高いものじゃないし、遠慮しなくてもいいんだけどな。



「三つ買ってくれるなら値引きしてやるけど、どうだい?」



 商売上手だな、この店主! カローラが逡巡(しゅんじゅん)してる姿を見て、まとめ買いを勧めてきた。だけどこれは渡りに船だ。



「カローラちゃんと友だちになった記念に、プレゼントしたいんだ。三人で一つづつ持ってたいんだけど、ダメかな?」


「友だち……私と?」


「うん、僕はそう思ってる」


「いっぱい遊んで、いっぱい話をしたし、ボクたちもう友だちだよ!」



 外にあまり出してもらえないみたいだし、やっぱり友だちが少ないんだろう。今日見た中で一番嬉しそうな顔になってる。



「お友だち……初めてできた……嬉しい」


「それなら好きなのを選んでくれる?」


「わかった……ありがとう」



 どれが欲しいのか最初から決めてたらしく、カローラは黒い木材でできた小鳥を即座に選んだ。僕は茶色のネコにして、カメリアは白いウサギを手にしてる。約束通り安くしてくれたけど、一体分の値段を引いた金額だった。かなりお得な買い物ができたよ。


 きっとカローラの分をサービスしてくれたんだろう。エヨンは次に行く予定の国だし、この人がやってる店を訪ねてみたい。



「はい、どうぞ」


「黒い鳥……可愛い」


「もしかして黒が好きなの?」


「うん……黒が落ち着く」



 カローラは受け取った木彫りの鳥を、愛おしそうに撫ではじめる。服が黒なのは好きな色だからなのか。そんなところはアイリスと気が合いそう。それに黒髪はアスフィーと同じだ。今日は来てないけどクロウも真っ黒だから、家へ遊びに来てくれたら喜ぶだろうな。



「ボク、黒い鳥と仲良しだから、こんど見せてあげるよ」


「ホント!?」



 こんな人混みの中に呼び出したりすると騒がれそうだし、今日は諦めるしかないか。また会えるか未知数だけど、この子の友だちは増やしてあげたい。その辺りは家庭の事情もあるから、僕たちが勝手に決めるわけにはいかないけど……



盟主(カローラ)様」



 その時、雑踏の中からカローラを呼ぶ声が聞こえてきた。


次回「第5話 強者のオーラ」

どうなる、主人公たち。

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