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第17話 もしかして、なんか出ちゃいそう?

誤字報告ありがとうございます。

アイリスの名前が、ボトムアップ型人工知能になってました(笑)

 やたらスキンシップを求めてくるアイリスをなんとか落ち着かせ、影転移で家まで戻ってきた。なんでも精気酔いになると、供給した人物と触れ合っていなければ落ち着かなくなるそうだ。そんなわけで、今夜はアイリスと一緒に寝るしかない。


 ちなみに土地神が入っている(たま)は、予想を遥かに超える力がこもっているとのこと。それが原因で白く光ってるけど、特に問題はないみたいなのでホッとしたよ。力の変換に一晩くらいかかるから、話は明日ということにして一旦解散になった。



「まさかアイリスお嬢様が、この様になってしまわれるとは……」


「……ちょっと新鮮」


「今日のお嬢って可愛いよね!」



 アイリスの変貌ぶりを見た使い魔の三人は、興味深そうに観察を続けている。僕たちの中では一番落ち着いている彼女が、今はこんなになってるんだから仕方ない。



「ダイチー、だっこ」


「うん、いいよ。こっちに来て」


「ぎゅってして、頭なでて」


「今日は色々頑張ってくれてありがとう、アイリスはいい子だね」



 離れたがらないアイリスをなんとかなだめ、いつもより短めのお風呂から戻ってきた。そしてリビングに入った瞬間、小走りで近寄ってきた彼女にくっつかれてしまう。



「まったく……人目をはばからずキスをするし、ダイチを独り占めするし、実にけしからん」



 あれからシアはご機嫌斜めだ。こんな時、いつもなら一緒に眠ったりするんだけど、今日は無理だろうなぁ……



「シア様、よろしければ今夜は一緒に過ごしませんか」


「もちろん大歓迎だ。ダイチに振られた者同士、寂しい夜をすごすことにしよう」



 フッたりしてないよ、大好きだからね、シア。



「あっ、ボクも一緒に寝たい!」


「せっかくだから、俺様もご主人さまとスズランに挟まれて、いい夢みたいぜ!」


「それなら角部屋を使ってもいいよ。僕はアイリスの部屋で寝ることになりそうだから」



 今夜はずっと一緒にいてあげないとダメだから、アイリスの部屋にある天蓋付きのベッドにお邪魔させてもらおう。部屋へ搬入する時に見せてもらったけど、ちょっと興味があるんだ。



「よそ見したらダメ、私だけ見て」


「あ、ごめんね。今夜どうしようかって、みんなと話をしてただけだから」


「私はダイチと一緒に寝る」


「もちろんそのつもりだから安心してね」



 こちらを上目遣いで見つめながら、不安そうにそんなこと言うのは反則でしょ。ちょっと幼児退行しすぎだけど、今日のアイリスは一つ一つの仕草が、とてつもなく愛らしい。それに僕のことを名前で呼んでくるから、なんかドキドキしてしまう。



「うっ……今日のアイリスお嬢様は可憐すぎます」



 鼻を押さえてどうしたのイチカ。もしかして、なんか出ちゃいそう?



「……一晩中見ていたい」



 今は僕たちのライフスタイルに合わせてくれてるけど、使い魔って睡眠を取らなくても大丈夫とか言ってたっけ。ベッドの横でじっと見られてると、気になって眠れないから勘弁してね、ニナ。



「明日の朝になったら、ダイチとお嬢の子供ができてるかな?」



 ちょっと待って、ミツバ。スズランじゃないんだから、一晩で子供なんてできないよ。



「もう眠い。部屋にいこ、ダイチ」


「今日は色々あったから、早いけどそろそろ寝ようか」



 マーレ学園の生徒たちを助けてこの家で保護してから、怒涛の展開だったからな。邪神と呼ばれていたモンスターを誘導したり、干からびていたバンダさんを復活させたり、土地神に精気を譲渡したりと大活躍だった。こんな小さな体で、本当によく頑張ってくれたね。今夜はゆっくり眠ってもらえるように、ずっと隣りにいよう。


 手をつなぎながらアイリスの部屋まで行き、二人並んでベッドへ横になった。




―――――・―――――・―――――




 目が覚めると、いつもより薄暗い。ベッドの周りがレースのカーテンで覆われてるけど、それだけが理由じゃなさそう。腕の中にいる小さくて温かい存在に視線を向けると、バッチリ目があった。



「主人より後に起きるなんて、下僕(げぼく)として失格ね」


「あっ、えっと、おはようアイリス」



 まだ頬が少し上気してるけど、口調はいつものアイリスだ。



「それで……体調はどう?」


「まあまあってところかしら」



 話し方こそ元に戻ってるけど、眠る時に(ほど)いた髪のせいで、雰囲気がだいぶ違って見える。



「昨日は寝るのが早かったから、まだ起きる時間じゃないみたいだね」


「一つだけ言っておくわ……」


「なにかな?」


「昨夜のことは忘れなさい」


「アイリスがベタベタに甘えてきたり、こうして一緒に眠ったこと?」


「いいわね、わ・す・れ・な・さ・い」


「わっ、わかったよ」



 目に思いっきり力を込めながら言われてしまった。金色のきれいな瞳が輝いてるけど、無意識に暗示を発動しちゃってるのかも。二人の間に血の繋がりができてるから、僕には効かないのを忘れてるのかな。


 二日酔いとかになったらどうしようって思ってたけど、問題なさそうなので一安心だ。こうしてアイリスと触れ合いながら迎える朝って初めての経験だから、なんだかくすぐったい気持ちになる。ずっとこうしてたら怒られそうだし、そろそろお(いとま)させてもらおう。



「体調が戻ってるのなら、僕は自分の部屋に戻るよ」


「まっ、待ちなさい。まだあれよ……そう、後遺症みたいなものが残ってるわ。万全を期すため、朝食の時間まで近くにいること。いいわね」



 顔を赤くしながら(うつむ)き加減にお願いされたら、断ることなんてできない。

 これは後遺症だから、僕の腕枕で横になったままなのも、いわゆる治療の一環なのだ!



「そういえばアイリスに言わなきゃいけないことがあるんだけど、聞いてもらってもいい?」


「あら、何かしら」


「えっと、僕とアイリスの関係について……、なんて言ったらいいのかな、眷属とはちょっと違う――」


「もしかして私が下僕の血に支配されてるってこと?」


「えっ!? 知ってたの」



 今までそんな素振りは見せてなかったし、僕のことをずっと下僕扱いしてたから、気づいてないと思ってたよ!



「あのねぇ……私たち吸血族は血の力で相手を従わせる種族なのよ。逆のことがおきてるなんて、最初からわかってたわ」


「うわー。なんか申し訳ないなって感じてたから、ずっと言い出すタイミングを探してたのに……」


「ふふふ、無駄な気遣いだったわね」



 色々と悩んだり、ずっと罪悪感を抱えたままだったけど、なんか損した気分がしてきた。



「どうして黙ってたのさ」


「なにを言ってるのかしら、それはお互い様じゃない」


「あー、うん、確かにそうだね」


「それに後ろめたい気持ちがあったら、逆らいにくくなって都合がいいもの」


「僕は完全にアイリスの手で踊らされてたってことか……」



 僕の腕の中ですごくいい笑顔をしてるアイリスを見てると、怒りとか悔しさはちっとも浮かんでこない。でもやっぱりショックだ。



「どうしても私を許せないなら、始祖様にお願いして繋がりを絶ってもいいけど?」


「それは絶対に嫌だよ。アイリスは僕にとって大切な人なんだから」


「……いつも思うのだけど、あなたって臆面もなくそんな事をよく言えるわね」



 目をそらされちゃったけど、嫌がってるわけじゃなさそう。元の世界にいた頃の人間関係をすべて忘れてしまった僕にとって、この世界でできた繋がりはとても大切なんだよ。だからそう簡単に捨てたりなんてできない。



「そんなに私のことが大切なら、下僕のままでもいいわね」


「どうしてさ!? これからはもっと対等な関係になろうよ」


「それなら精力タンク奴隷で決定よ」


「さっきよりひどくなってる!」


「これからも毎晩吸ってあげるから、覚悟なさい」



 僕にしがみついてきたアイリスが、首元に軽くキスをしてくる。なんかすごく楽しそうだし、これはこれでいいのかな。今までの関係が嫌ってわけじゃなかったから……




 なんとなく離れるのが名残惜しかったので、僕はアイリスを抱き寄せたまま、とりとめのない話を続けるのだった。


次回、いよいよ土地神が復活。

彼女から明かされる、リナリアの状態とは……

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[一言] でれでれアイリス様……良い感じですっ(サムアップ
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