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異能を使う為に


「うわぁ!」


目が覚めたのは病院を思われる場所のベッドの上だった。


「おはよう、元気そうで安心したわ」


「あ…ああ、おはよう」


先程切られた場所を撫でる。あの試合が嘘だったかの様に傷がなくなっていた。

ベッドを見守るようにサラと


「なんでいるんだよ」


契約書を無理矢理書かせた金髪の少女だった。


「さて、蓮も起きた事だしメリル、何か弁明はあるかしら」


メリルと呼ばれた金髪の少女は


「お嬢様、連絡が遅れた事は申し訳ありませんでした。言い訳がましいですが、組合の方が、やはり彼の事で突っかかってきまして、追い払うのに時間がかかってしまいました」


「そう、それで」


笑顔で答えるサラ、だがその笑顔は車内での妖艶さとは異なる何か背筋にくるものを感じた


メリルは額を抑えながら


「彼の戦闘の録画を拝見させていただきました。お嬢様、彼に異能の使用を許可しましたか?」


「いいえ、そのような事はしていないわ。というかそのような話は聞いていないわ」


「お父上様にはお伝えしたはずなのですが…まあ私の不手際ですね」


コホンと咳払いをして


「まず彼に付与した異能なのですが…」


ゴクリと唾を飲み込む。


「『筋力の強化』と『筋肉の駆動速度の強化』そして『炎の射出』になります」


「炎の射出ってなんだ」


コイツ面倒臭いなといった表情で


「はぁ…魔法というものの適性ある人と無い人ないて、適性が無い貴方に後天的に才能を与えましたが無理矢理植え付けたものですので、属性と方向性がある程度決まっているのです」


「なるほど、それで許可を与えれば3種類の異能が適用されるのね」


「いいえ、サラお嬢様、許可を与えられるのは1種類のみで、何かの許可を与えているときに他の許可を与えると先に許可していた異能が解除されます」


「それはどうしてかしら」


「この異能の付与は無理矢理出来ないことを出来るようにしてあるのです。なので2つも3つも使用すると…」


「使用すると?」


メリルは拳を握り


「ボン!」


広げた


「うぉぉい!なんちゅうもん付けやがった」


「煩いですよ。冗談ですから。まあボンまでいかなくても相当な負担が掛かりますので1種のみ使用より相当体調の回復に時間がかかります」


「1種類でも体調崩すのかよ」


「それはそうでしょう。力を得るにはそれ相応の代償がいる物でしょう」


まあ確かにそれは言えているのだが


「つまり今回の戦闘ではデータは何も得られなかったと」


「いいえ、彼のデフォルトでの戦闘データは手に入りました。ただ異能を使用していないとはいえ明らかに弱すぎます。このままだと組合の方に、虐待ではと、付け入る隙を与えかねません」


「弱すぎって酷くないか」


「いいえ、ここまで弱いペットは見たことありません。Eランクで燻っていてそのままやめたペットより酷いです」


事実ぽいが酷い言われようだ


「それでお嬢様、また彼とウェンの試合を取り付けてはいただけませんか?」


「何故かしら?」


「公式戦でなく私闘なら公に放送はされませんの幾ら酷い試合をしようと外野から何か言われる心配はありません。また同一の相手と戦う事でどの程度成長したかを確かめる事もでき、それがある程度実力のあるペットですので、目安として使い安いと思います。」


サラは少し逡巡して


「わかったわ、私からミシェルに話をつけておくわ」


「ありがとうございますサラお嬢様」


「俺の返事は?」


「必要ありません」


「お願いするわ、蓮」


「…わかったよ、サラ」


元々拒否権はないのだろうけど

またあいつと戦うこととなる、そう思うだけで憂鬱だった。



ーーー



「よろしくお願いします」


次の日、俺は学園に行かず、基礎的な戦闘の訓練を行うため屋敷の庭に俺と指南役としてジェフリーさん、そして見学者としてリザがやってきた。そして俺はジェフリーさんに昨日使っていた剣と同じ様な剣を渡された。


「蓮殿、一度それで私を切って見てください」


「ええ!いいんですか?!」


「ええ、構いませんよ。あともう一つ私はそれを避けません」


この人は何を言っているんだと


「それじゃあジェフリーさんは…」


「貴方は昨日切られた自分がどれだけ早く治ったのかご存知のはずですが」


その通り。試合を開始した時間より1時間程度で俺は全快していた。開始から終わりまでの時間はほぼ一瞬だったのでここの医療技術が発達していたことは一番理解している。仕方なしに切りかかる。そして


「やはり貴方に刃物は合っていませんね」


ジェフリーさんの首より10cmは離れた位置で俺は剣を止めていた


「貴方は刃物を人に向ける事を怖がっています」


「当たり前じゃないですか」


だってそうだろう。料理、工作など人に刃物を向けるなんてなかったから


「貴方はそうでしょう。ですが私やウェン、これから対峙する闘技場の相手はそれが当たり前ではありません。貴方の常識の外から切りかかってきます」


押し黙る。それはそうだ、闘技場に出る様な人は揃いも揃って戦闘狂かそれに類する者だろう


「さて、昨日の試合の映像を拝見させて頂きました。それで蓮殿は何か剣にこだわりはありますか?」


「いや、使い安そうだったから選んだだけです」


「左様でございますか。ならば安心しました。それでは蓮殿、これを、そして剣をこちらへ」


と言って先程ジェフリーさんが持っていた棒を差し出してくる。こちらから剣を差し出した。


「ジェフリーさん、これは…」


「貴方が最も早く実戦レベルに至れるのが棒術だと判断しました」


ジェフリーさんも棒を構える。


「さあ、打ち込んできなさい」


「はい!」


棒を握りしめ突進する。一打、左肩を狙った一撃はいとも簡単に防がれる。切り返す様に右肩を打とうと振りかぶった瞬間、強烈な突きが右胸に飛んできた。


「かはっ…」


肺の空気が無理矢理押し出され、潰れた肺が元に戻ろうと空気を吸い込み始めた所で


「息を吸ってはいけません!」


「がっ…あ…」


左胸への突き。それは先程よりも深く、重く突き刺ささり後方へ大きく吹っ飛ばされた


「ぜっ…はっ…あっ…」


倒れ伏した俺はジェフリーさんを見るでも立ち上がるでもなくただ肺に空気を送り込むことしか考えられなかった


「立つのです。蓮殿」


そう言われたが腕も足も打撃を受けた訳でも無いのに動かなかった。


「立てないのならそのままで結構です。まず、蓮殿、これは棒術でございます。相手に隙が無いにもかかわらず大振りな振りはこの様に致命的な一撃に繋がります」


「そして多くの武術に共通していることでございますが、息を吸うのは言語道断、吸っている最中は無防備でございます」


「さて、リザお嬢様、蓮殿を立たせてはくれませんか」


「わかったー!」


無邪気な命令に俺は首輪の力で無理矢理立たされる。


「さあ、蓮殿、先程教授したことを踏まえて打ち込んできなさい」


ははは、と乾いた笑いと共に地獄が始まった。

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