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学園のち闘技場


学校と言うよりビルに見えるそれはガラス張りで縦長の直方体その中央は大きく吹き抜けており一番下には巨大な正20面体のオブジェクトがあった。


「すげぇな」


「案内するわ、ついてきて」


「わかった」


先程の妖艶さは何処へやらマジメモードと化したサラに付いて校舎へと入っていく。


「あら、ご機嫌よう、サラ。珍しいですわね、こんな所で会うなんて、何かペットでも飼いましたの?」


金髪のロングヘア、赤いつり目。制服を着ている事からサラと同じ市民だろう。そのグラマラスなボディはサラと比べるとまるで大人と子供のようで


「あ痛あ!」


脛を蹴られた、それも思いっきり


「ご機嫌ようミシェル。ええ、私もペットを飼うことにしたの。少々躾が足らないのだけれどよろしくしてね。蓮、挨拶を」


「あ、ああ、日畑蓮です、よろしく」


「あら、中々躾けられてるじゃない。うちのウェンにも見習わせたいわ」


彼女に手招きされ、赤い髪、赤い目。そして顔の左半分に龍を模した刺青を持つ細く締まった長身の男、が現れた。彼は何かいいたそうな目でミシェルを見ていた。


「ウェン、ご挨拶を」


そう言われた男はミシェルの肩を叩き、次いで自分の口を指差した。


「あら、忘れていましたわ。もう喋ってもよいわよ」


「おい、クソアマ、テメェ、自分で話せなくさせておいて、その事忘れるたあいい度胸してんじゃねえか」


「黙りなさい」


抗議の声もどこ吹く風と再度ウェンと呼ばれた男を黙らせた。


「まあ、ご覧の通りうちのウェンは口が悪いものでして、このように静かにさせれば可愛らしいものですの」


後ろで身振り手振りで抗議している彼を見ようともしていない。


「あの、後ろで物凄く抗議してるんですけど、いいんですか?」


「いいのよ、何時もの事だから。それに教室に行った解除されますわ」


と一蹴される。後ろでの抗議が更に激しくなったが彼女はまるで気にしてない。


「それより。サラ」


「何かしら?」


「彼はもう闘技場に登録したの?」


「してないわ。それがどうかしたの?」


「それではいつ登録しますの?」


「そうね、今日登録しようと思っていた所よ」


「まあ、それでしたらうちのウェンと一度手合わせをしてもよくて?」


「彼と?」


「そうよ、うちのウェンはCランクに成り立てですので彼の指標としては中々優秀かと思いますの」


「本音は?」


「ここで彼をバシッと倒してサラに黒星を付けたいのですの」


恥じる事なく言い切る。


「ミシェル、そんな下らない事に蓮を巻き込ま無いでくれる」


「ペットが主人の争いに巻き込まれるのは当然ですわ。それでサラ、受けますの?受けませんの?」


「受けないわよ」


と言ってこの場を去ろうとする


「えぇ、わかりましたわ!あなた彼がうちのウェンに負けるのが怖いのですわね、負けて自分の見る目の無さを知るのが怖いのですわね!」


「は?」


明らかに怒気を孕んだ言葉と共に踵を返す


「あの、サラさん?」


「いいですわよいいですわよ、わたくし今までサラに黒星しかつけられていませんでしたからね、初めて勝ち星を取られるのが怖いのですから仕方ありませんわね」


「は?」


更なる挑発に更に強まる怒気を乗せる。当の本人はどこ吹く風といった調子で


「ええ、残念ですけどサラさんが逃げると言うなら、し・か・たないですわね。ウェン、彼を教室まで案内して差し上げなさい」


そう言いこの場から去ろうとしたミシェルの肩をサラがガシッと掴んだ


「痛い!痛いですわよサラ」


「誰が見る目の無い怖がりの負け犬ですって?」


「そこまでは言って無いわよ!」


「いいでしょう、あなたのウェンより私の蓮のが優れているのを見せてあげます。ええ、決してあなたの安っぽい挑発に乗った訳ではないのです。私が彼の実力を見せつけたいから、し・か・たなしにあなたの挑戦を受けましょう」


「いや、明らかに挑発に乗っただけじゃ…」


「黙りなさい」


抗議をしたウェンの気持ちがわかった、口が一切動かない、そして、「ん」の発音さえ出来ない。

そのウェンは現在抗議をやめ壁に寄りかかっている。こっちに向かってサムズアップ、何がだよ


「ええ、では放課後、闘技場での模擬戦楽しみにしてますわよ。逃げたいのでしたらいつでも連絡して下さって大丈夫ですわ」


「ええ、あなたこそ黒星が増えるのが嫌でしたらいつでも連絡してくれていいわ」


お互いにフンと言いつつ同じ方に並んで歩いていく、アイツら仲良いだろ。

ポンとウェンに肩を叩かれる。振り返るとこっちへ来いみたいなジェスチャー。何なのか聞こうと声を出そうとするが声が出ない事を思い出し彼に付いていく。



ーーー



教室に着いた時、魔法が解けたの如く声が出せるようになる。


「お前も災難だったな。俺はウェンだ。不本意だがミシェルの奴隷だよ」


「俺は蓮だ。昨日ここに連れて来られたばかりだからまだこの世界の事は良くわかっていないんだ、だから何か分からないことがあったら聞いてもいいか?」


「おう、まかせろ」


「ありがとう、所で闘技場って何?」


「まあ、娯楽施設だな。他人の暴力を見て飯食って、金賭けてストレス発散ってな感じだな」


「武器とかは使うのか?」


「ああ、もちろん」


予想通りであった外れて欲しかった


「じゃあお前も彼女に無理矢理やらせられているのか?」


「いや、俺から志願したぞ。なんせ普段は暴れる事が出来んからな、たまに発散せんと息が詰まるだろう」


戦闘狂でしたか


「なんだよお前、殴り合い嫌いなのかよ、格下ならストレス発散、同格なら滾ってくるし、格上ならしばいた時の快感が堪らんだろう」


「住んでた世界が違うんだよ。殺し合いとか殴り合いとか日常的に起こってたまるか」


「なんだそりゃつまんねぇ世界だな」


「そっちは物騒そうだがな」


そっちの世界には行きたくないなと笑いあっていると


「さあアリス、放課後まで良い子で待っててね」


と、二人が教室へと入ってきた。一人はすらりとした背の高い金髪の美丈夫。もう一人は金髪のリザより少し歳下に見える幼女が教室へと入ってきた。男は制服を着ており、幼女はゴスロリチックな服を着ておりその首には黒い首輪が着いていた


「やあ、ウェンくんおはよう。そっちの子ははじめるましてかな。僕はシュルク・アリスト・タイズ、この子はアリスって言うんだ、ほらアリス挨拶を」


促され幼女が会釈する


「俺は日畑蓮です。よろしく」


「蓮君か、よろしくね。そう言えば蓮君のご主人は誰なんだい?」


「サラさんです」


「へぇ〜、彼女か、以外だね」


「以外なんですか?」


「ああ、なんせ彼女は…」


と言うところでチャイムが鳴る


「ああ!っと時間が無いから僕はもう行くねアリスと仲良くしてあげてね」


とシュルクは足早に去っていった


「なあ、ウェン」


「なんだ」


「まだ到着していない人っているの?」


「いや、俺達だけだぞ。毎日ここに来ているのは俺とアリスぐらいだな」


「少ねぇ!」


「そりゃ人一人毎日連れて行くのってしんどいだろ」


「そりゃな。所で教師ってくるのか?」


「いる訳無いだろ、ここ託児所みたいな所だぞ」


「なら、むしろ居るだろう」


「まあ、気にするなよ」


「…じゃあウェンはいつも何やってるんだ?」


「ん?俺は奴隷街の他で隙潰してるな」


「奴隷街ってなんだよ」


「お前、何にも聞いてないのな」


「いや、時間が無かったと言うか…」


車内での出来事を思い出し顔が赤くなる


「お前、何考えてんだよ…」


「いや、なんも考えてねーよ」


「まあいいか、この街はよ、三層に別れてるんだよ、物理的に」


「んで、一番上、まあここだな。ここは基本市民の為の場所だ。まあ、家と職場がここにあるって感じだな」


「いや、けどうちは少し離れた浮き島だったんだが」


「家主が変人なんじゃねーの?まあ次だ。二層目は娯楽街、闘技場があるのもここだな」


「変人って…なんで娯楽街には行かないんだ?」


「なんでって市民が結構居るからな気い使うのがしんどいんだよ。なんかあったら後でミシェルにドヤされるからな」


「んで最後、最下層の奴隷街、まあ牧場とそこで働く奴ぐらいしかいないが市民は居ないな」


「そんな所で暇潰し?」


「ああ、なんせ奴隷用の娼館なり賭博場なりいろいろ娯楽は豊富だぜ」


「おい、ウェン、小さい子が居る前で娼館とか言ってんじゃねーよ」


「お、娼館が気になったか」


「なってねーよ」


「まあ気にするなよ、コイツ何やっても反応しねぇからよ」


そう言ってアリスに殴りかかる


「おい、ウェン!」


思わず語気が荒くなる


「心配すんなって、俺だってガキ殴る趣味はねーよ」


拳は顔のすんでのところで止まっていた


「見てみろよ、瞬き一つしやしない」


そうアリスは避けることさえしなかった


「まあ、そんなこった、俺は奴隷街の方行ってくるわ」


「あ、おい、ウェン」


後ろ手を振り飄飄として出て行く

そして俺はよろしくと頼まれた手前、アリスを一人にするわけもいかずに色々な対話を試みるのだった。



ーーー



「終わったー」


放課後まで何もなかった、マジで教師さえこなかった。昼頃四角形の鮮やかな固形物が昼食として出てきただけだった。ウェンはどっか行ったまま帰ってこず、アリスとコミュニケーションを取ろうとしたが、うんともすんともも反応せず、本を読もうとしても何が書いてあるか分からなかった。


「アリス、お待たせ、寂しかったかい?お腹空いてないかい?おーよしよし」


シュルクが秒で来た。わしゃわしゃとアリスの頭を撫でている


「やあ、蓮君、アリスと仲良くしてくれたかい?」


「ええと、まあその…」


すいません、途中で諦めました


「まあアリスは恥ずかしがり屋だからね。頑張ってくれただけでありがたいよ」


「はぁ…」


「それじゃあ僕達は先に失礼するよ」


シュルク達が帰って少し経った後にミシェルとサラが教室を訪れた


「あら、またウェンは勝手に何処かへ行きましたの。全く、仕方のない子ですわ。わたくし探して来ますわ」


ミシェルがウェンを探しに立ち去る


「蓮、それじゃあ行きましょうか」



ーーー



それは鉄の柱を思わせるデザインだった。ビルと言うには窓は少なく入り口は開きっぱなしであるが閉めると本当に馬鹿でかい柱に見えるだろう

闘技場と聞いてコロッセオみたいな見た目を思い浮かべていただけに呆気に取られていた


「さあ、こっちよ」


とサラに導かれ受付と思わしき所へ、受付嬢も首輪を着けていた


「こんにちは、闘技場へ登録に来たのだけれど」


「はい、それでしたらこちらを」


とタブレットの様なものをサラは受け取りなんらかの操作を行い


「はい、日畑蓮、登録完了しました。十分後に試合を組めますがどうなさいますか」


「遠慮しておくわ、だって最初の相手は決まっているもの」


「そうですわ!」


と背後からミシェルの声が聞こえた


「ご機嫌よう、そこの蓮の最初の対戦相手はわたくしのウェンですわ」


「ええ、それで対戦は組めるかしら」


「はい、第3会場をお使いください」


と女性陣の後ろで


「なあウェン、その背負っているのって…」


「おう、俺の得物だ」


と自身満々に宣言された得物、槍を思わせる長身の柄、その先端に取り付けられたのは突く事より切る事に特化した刃物だ。それに該当する武器種は


「偃月刀か」


メジャー所の武器では無いが三国志の関羽が使っていた事で有名だ。


「おう、良く知ってるな。こいつはミシェルに貰ったんだよ。向こうで使ってた奴より良く切れるし軽いんだ」


「出来ればそれを向けられたくないな」


「それは無理な相談だな」


「蓮、控室に行くわよ」


「不戦敗にできません?」


「できないわ」



ーーー



「ここが控室ね」


ロッカールームと言うべきか、片方の壁に幾つかのロッカーがあり正面に恐らく会場への扉であろう大きな扉、中央には大きな台がありそしてロッカーの対面に


「なんです、これ」


「見ればわかると思うけど…貸し出しの武装ね」


剣や槍などはもちろん鉄球や鉄の爪などマイナーそうなもの、防具など戦うための物が広告の如く映されたディスプレイがあった


「画面をタッチするとその武器がそこの台から出てくるから」


と中央の台を指差した


「準備ができたらそこのエレベーターに乗って頂戴、そしたら会場に着くわ」


と正面の扉を指差す


「なあ、本当にやらないとダメなのか?」


「ええ、だってエッチな事を期待して約束したじゃない」


「約束はしたが期待はしてねーよ。つかその話は約束した後だろ」


「ほら、約束はしたでしょ、だから頑張って」


「はぁ〜、所で異能の使い方はどうすればいいんですか」


「ごめんなさい、メリルと連絡がつかなかったの」


「つまり異能の使い方は不明だと?」


「大丈夫よ、そんな顔しないで、ピンチで覚醒する事ってよくあるじゃない」


大丈夫っておい


「はぁ〜、この実験が終わったら帰る方法を探してくれるんだな」


「ええ、約束するわ。貴方を必ず元の世界に返すと」


「やれるだけやってみるよ」


「ええ、勝った時のご褒美も期待してていいのよ」


そう言って彼女は立ち去った


「さて」


不本意だけど戦わなければいけない、どのような力か分からないが異能の力を植えつけられたと言うことだ。もしかしたら彼にも勝てるかも知れない。

武器を選ぶ、当たり前だが使った事のある武器なんて無いのだから


「これでいいか」


剣を選ぶ。すると中央の台が開きそこから刃渡り50cmぐらいの剣が出てくる。

それを手に取り振ってみる。


「思ったより重いな」


創作物で剣は軽く扱い安いイメージがあったがそれは創作の中だけのようだ。


防具を選ぶ。ああは言っていたがもしがあると困る、なのでもっとも硬そうな鎧を選ぶ。また中央の台が開きそこからまるで鉄の塊りのような鎧が現れた


「おっも」


こんな物を着込んでいたら動けないだろうと、それの代わりに鎖でできた鎧を選んだ


「これならいけそうだな」


多少動き辛いがさっきのよりかはだいぶマシだった。

これも元の世界に帰るためだと言い聞かせてエレベーターに乗る。扉が閉まると同時に上昇を始める。動力となる機械音が静かに鳴り響く何らかのトラブルで止まってしまえと願ったが無情にも重低音を鳴らして扉が開いた。

四方の鉄の壁、おおよそ10メートルぐらいの高さに観客席と思われるものがある、断言出来ないのはそこに居るのがサラとミシェルだけだからだ


「蓮、似合ってねぇな」


「うるせえ」


対峙するウェン、先程見た偃月刀、そして鎧は金属ではなく恐らく皮製、全体的に青い装飾をしており動き安い印象を受ける。


「それじゃあ始めるか!」


「こい!」


そう宣言した瞬間ウェンはこちらに駆け出した。速い。そう思ったがもう遅い。偃月刀を受けるために振るった剣は空を切りその偃月刀は


「がっ…はぁっ…」


軽々と鎧ごと俺を引き裂いた。


意識を失う前に見たウェンの顔は「嘘だろお前」とでも言いたげに見えた。

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