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目覚めは檻の中で


意識が覚醒し始めたときいつも布団が柔らかく程よく甘い香りが漂っておりなんと寝心地が良いのだろうー再び眠りに落ちようとした時、中途半端に覚醒していた頭が眠る前の事を思い出した。

その衝撃により半ば強制的に睡魔の誘惑が吹き飛んだ。


見知らぬ部屋、見知らぬべットの上、そしてそのベットごと俺が入れられている鳥籠を人用に大きくした檻。そんな異質な事が気にならないくらいに俺は檻の外にいた人物に目を奪われていた。

檻の外には二人の人物がいた。目を奪われたのはその一方、銀髪のセミロングに黒いカチューシャ、吸い込まれそうな碧い大きな瞳とラインの通った鼻、小柄な身体に合った慎ましやかな胸。これ程の美少女は見たことが無いしこれからも見る事が無いだろう、そう思った。


「ねーちゃん!起きた!」


もう一方、前者を10ほど若くした幼女が興奮した様子で檻にへばりついていた


「大声を上げないの、はしたない


呆気に取られていると


「あなたが蓮かしら」


「ひゃ、ひゃい!」


意識の外から話しかけられ驚いてしまった。カッコ悪い。


「そう、ようこそ、我が家へ。私はサラ・リアス・コンフュードそしてこの子が」


「リザだよ!」


元気よく挨拶をしたリザはまたサラに窘められている。この二人が姉妹ということはわかった。とりあえず


「ところでサラさん、この檻は何ですか?」


愛玩奴隷ペットには籠が必要でしょ?」


「ペットって俺のことです?」


「そうよ、他に誰も入っていないでしょ」


「えーと、出してもらえたりしませんかね?」


ダメ元で聞いてみる


「そうね、檻に入れっぱなしって言うのも可哀想ね」


そう言って扉の位置にある取手を横にずらしてピンを抜く…要する動物用の鍵であった。

人扱いされてねぇ


「ありがとう?」


「なんで疑問形なのかしら」


そりゃ監禁?していた本人に扉を開けられてもねぇ


「ねぇ蓮、新しく家族になったのだし他の皆さんに紹介しようと思うの」


紹介ね…ん?家族?あれ、えっと、もしかして姉さんはここに拉致されたのでは?あれだけ探しても手掛かり一つなかったのだ。ここに居る可能性も十分あるだろう。何はともあれ


「ああ、よろしく頼む」


今の生活に馴染むことか始めよう


ーーー


さて、挨拶周りも終わり分かったことが二つ。

一つはここが相当な豪邸だと言うことだ。来賓者を魅せ、自分の権利を誇示する為の豪奢な調度品の数々。それを持って見劣りしない屋敷の外観は圧巻だった。

二つ目は使用人全てが奴隷ということだ。一般人?は姉妹と今はいなかったが彼女らの父だけだと。

さらに言うなら肌の色、白黒黄の他に赤青緑と、髪の色も他種多用。さらに訳の分からない指輪と首輪、そしてサインの時のあの言動


「あなたの世界の文字でいいのだわ」


マジで異世界なんじゃね?と


「食べないの?」


少し考えていたせいで食事の手が止まっていたようだ。


「いや、少し考えごとをしていただけだよ」


「そう?お口に合わなかったのなら別の物を用意しますわ」


「いやいやとんでもない」


とっさにそうコメントが出るぐらいに料理は美味しかった。


「まあ、お嬢様方、蓮殿も突然環境が変わったので落ち着かないのでしょう。私もこちらへ来た時は食事は進まなかったものです」


と対面に座る老紳士が答えた。

彼はジェフリーさん。この家の家令の様な存在だ。白と黒が混ざり灰色に見える髪、スーツの上からでも体格が良いと分かる。まるで老人とは思え無い。


「そうだったかしら?」


「ええ、かれこれ10年程前です。お嬢様も小さな頃でしたので先程のリザお嬢様と同じように心配されたものです」


「…忘れなさい」


そういうサラの頬は赤くなっていた。


「おねーちゃん可愛い」


「……」


黙々とサラは料理を口に運んでいるがその頬は更に赤くなっていた


「可愛い」


思わず口に出してしまった


「ええ、お嬢様は可愛いらしいですよ。きらびやかな銀髪、吸い込まれる様な青い瞳、小さなお口、胸はちょっと残念ですけどそれでも万人を魅了しかねない身体をお持ちなのです!そんな方が滅多に見せない照れを見せいるのです。それはもう可愛いらしいこと事欠かないですよ!」


と隣に座っていたレイシアさんがまくし立てる。

この家のメイド長みたいな方だ。

緑の髪と目を持ち一番の特徴は尻尾だろう、トカゲ…イメージとしては竜人の尻尾という感じの尻尾だ。尻尾には緑の鱗が覆っており、規則的にトゲが生えている。聞いた話だと体の所々に鱗があるらしい。


「レイシア、黙って」


「ん!んんん!んんん!」


命令によって黙らされるレイシアさん。

その表情は…おいなんか恍惚としてるぞ。


「蓮、あなたも黙りたい?」


笑顔で恐ろしい事を言われた。


「いいえ結構です」


即答である。

この家での最初の食事は静かに終わった。



ーーー



浴場、まるで銭湯かと思う程広く複数の洗い場、湯船があった。これで使用人用らしいから驚きだ。彼女達の浴場はいったいどれ程なのだろうかと湯船に浸かって考えていると


「よう新入、この浴場はどうだ」


俺の隣に浸かり、声をかけてきたのはボルテさん

緑色の皮膚にスキンヘッド、2mは優に超えている身長にそれに見合う体軀。その体には様々な傷痕があった。まあオークという感じの男だ。


「ああ、最高だよ。今日の疲れがぶっ飛ぶぐらい心地よいよ。このまま家にぶっ飛べたらいいんだが」


「ははは、まあそれは諦めな。なんせここはお前のいた世界とは違うんだからな、ぶっ飛んだって家には帰れないよ」


違ったらいいなと思っていた事実があっさりと叩きつけられる。


「あ〜ですよね〜見たこと無い人種とかこの首輪だけで動きを完璧に制御されるとか訳の分からないものばっかりでしたもん。あ〜別世界か〜マジか〜」


「まあここも悪い所じゃない。飯も美味いし労働も酷いものじゃない、綺麗なベッドにそこそこ好きな物が買える給料。それにこんなにデカい風呂があるんだ。元の生活よりこっちのがいい暮らしができているんじゃないか?」


「まあ、確かに寝室が籠じゃなきゃ最高だな」


というか奴隷なのに給料でるのか。


「籠?なんだそりゃ?」


「いや籠だよ籠。デカい鳥籠の中にベッドがあってそこで寝るんだろ?」


「いやいや、一人一人個室が与えられているが」


「はぁぁぁ?!」


おいおいおいおい俺だけ籠の鳥?プライベートもクソもないあの寝室?


「まあ、その、頑張れよ」


哀れまれた


「まあ、彼はお嬢様方の愛玩奴隷ペットとして飼われたのですから扱いはどうかと思いますが我々とお嬢様方の価値観が違うということはボルテ殿もご存知でしょう」


隣よろしいですか。と俺の隣にジェフリーさんが浸かりにきた。


「分かってはいるが…観賞用の人というのは悪趣味だろう」


「そうだな」


「御二方、その話はくれぐれも市民の皆様の前では話さないように」


「市民って言うのは」


「私共奴隷以外のこの世界で生まれた方、奴隷の子息以外のこの世界の出身者でございます」


つまり奴隷はどう頑張っても市民にはなれないと


「話は変わりますが、蓮殿、明日からの仕事ですが、サラお嬢様の学園までの道中で彼女を楽しませてください」


「マジでペット扱い?」


「はい、左様でございます」


左様ですか


「蓮、家の事は任せてくれよ」


「代わってくれません?」


「無理だな」


はぁ〜と溜息が出る。あーそう言えば


「そう言えばなんで俺の首輪銀色なの?」


洗い場で鏡を見たとき何故か黒色だった首輪が銀色に変わっていたのだ。他の人の首輪を見ても黒色だったので疑問に思っていたのだ。


「わかんね」


ボルテよ少しは考えてくれ


「そうですね、愛玩奴隷ペットなので装飾品にこだわりたかった、ということでしょうか…力に慣れなくてすみません」


「いやいいんですよ謝らなくたって、それにその可能性も十分ありますよ、なんせ悪趣味なんですから。…よし、この話やめましょう。俺この家の事よく知らないんで聞きたいなー」


気まずい空気が流れたので無理矢理話題を変える。

その後屋敷の事を二人から聞いていたら出るタイミングを見失った。のぼせた。



ーーー



「ボルテさん、ありがとうございます」


のぼせてフラフラしてた俺はボルテさんに寝室まで肩を貸してもらった


「おう、気にすんな。だけどここお嬢様の部屋だぜ」


「へ?」


いやまあ籠の外にもベッドはあったけれども…マジか


「お嬢様、蓮を連れて来た」


コンコンとノックすると入っていいわよとのこと。


「お邪魔しま…」


開けたドアを閉める。なぜなら


「あの…サラさん…その格好は」


ネグリジェというのだろうその格好はその容姿と合わせて年頃の野郎には中々くるものがあった。


「寝巻きよ」


との事で…


「ねぇ蓮」


「なんですか?」


「貴方、元の世界に帰りたい?」


「え?」


素っ頓狂な声が出た。まさか向こうからそのような事が聞かれるなんて思ってもいなかった。


「ごめんなさいね、変な事を聞いてしまって。貴方が今日1日をここで過ごして、ここに居たいと思ったのか、それとも帰りたいと思ったのか聞かせて欲しいの」


真剣な表情でこちらに迫ってくるそれは、二重の緊張を催させる


「いや、あの、えと、ここだと良い暮らしが出来そうだし他の皆とも仲良くやって行けそうだしそれに…」


「それに?」


「…可愛い女の子と相部屋だし」


勢いに任せて言ってしまった言葉に顔が熱くなる


「くすくす、ありがとう。じゃあここに居たいと言うことかしら」


「いや…」


だけど、でも


「俺は帰りたいんだ、俺には父さんがいて母さんを亡くしてる。それに2年前に姉さんが行方不明になってて、それで今度は俺が居なくなって…父さんが何をするかわからないから早く戻ってやりたいんだ」


「そう」


そして紡がれる彼女の言葉は予想出来る言葉ではなく


「貴方が帰れる様に協力してあげる」

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