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拉致

2年前、大学生だった姉さんが行方不明になった。

友達と一緒にドライブに行ったっきり帰ってこなかった。

警察の方も最初は親身になってくれていたが、最近は余り連絡も来なくなった。

男手一つで僕らを育ててくれた父は最初は荒れていたが今はもう見るからに消沈している

それでも諦めきれていない父は姉さんの車が残されていた場所へ毎週行き姉さんを探し、帰ってきては酒に溺れている。

そんな父が見ていられなくて週末の夜は家にいられなかった。


行方不明になった姉さんと同い年になった。

コンビニで飲料と軽食を買い深夜徘徊、すでに生活サイクルに組み込まれていた。こんな俺を姉さんはどう思うだろうか。ただ当て所なく彷徨い時間を浪費していた。


それはただ唐突でそして鮮やかに行われた。


目が開けていられ無いほどに周囲が眩しくなり反射適に目を閉じた瞬間に全身を衝撃が襲った。軽い酩酊感と吐き気と共に目の前の景色が全くの別物へと変化していた。


SFチックな実験室と言えば良いのだろうか、コンピュータ、科学者みたいな人、そしてロボットみたいな奴。それらがガラス越しにこちらを見ていると認識した瞬間意識が途絶えた。


次に意識を取り戻したとき俺は白を基調とした牢屋の様な場所にいた。

様なと言うのは、牢屋と言うには清潔感に溢れていて、トイレは個室、水道もあり、寝具もホテルの様に整っていた通路に面する壁が鉄格子でなければ旅先の宿としては悪くないと思えるほどだ。

拘束具の類いもなく唯一取り付けられたのが黒い首輪である。ピッタリと首に隙間なく取り付けられているが苦しさ、違和感など無い。


さて、軽い状況確認は終わった所で


「はぁぁぁぁ‼︎なんじゃこりゃぁぁぁぁ‼︎」


状況の確認が終わり頭が痛くなった、パッと見てかなり良い施設に閉じ込められている、つまり金持ちに誘拐されたということだろう。理由?知るか


「おう、元気そうじゃねーか」


対面の牢屋から赤毛の偉丈夫から話しかけられる。


「ああ、すまない、驚かせたか?」


赤毛の男はケラケラ笑いながら


「なに謝ってるんだよお前。それよりここがどこか心当たりないか?俺は都会には疎くてよ、こんな施設見たことねぇんだわ」


「すまない、わからない。酔狂な金持ちが俺たちに何かさせるために用意したか、俺たちの頭がおかしくて病院に入れられたことを忘れているかかーー」


「両方ねぇだろ、金持ちだろうがこんな豪華な寝室奴隷に用意しねぇよ病院はもっとねぇな。なんてったって俺は無一文だよ」


赤毛の男は肩を竦めて見せた


「親切な誰かが病院に連れて行ったとか無い?」


「ハハッ、それこそそいつがここにいるべきだな、頭が逝かれてやがる」


「なあ、そう言えば名前を聞いてなかったな、俺はレフだ。お前は?」


「俺は日畑 蓮だよろしく頼む」


「よろしく頼むよ、しかしヒバタレンて珍しい名前だな」


「いや日畑が苗字で蓮が名前だよ」


やけに日本語がうまかったので二世なのかと思ったがなにやら常識がズレているような


「ってこたぁやっぱそれなりに良い家の出か」


「いやいや、そんなことはないよ」


どちらかというと貧しい部類のような、


「謙遜すんなよ旦那。こう対面の牢屋なのも何かの縁だ、だからよ一緒に脱走の算段でも立てようぜ」


「はい?」


「なに気にするな、ただ旦那の脱走を手伝ったって父上に報告してくださりゃいいですよ」


なんか調子良くなってきやがった


「ちょっとちょっと!待って待って!」


「はい!なんでしょう旦那!」


「いや、あの、俺は…」


その時、カツンと足音が聞こえた。

レフとの会話で弛緩していた空気が一気に締め付けられる。

俺たちをここへ連れてきた何者かがこちらへ向かって来ているのだ。

足音が聞こえるたび自分の中で緊張と不安と期待が増していく。

そして、


「お前、名前は?」


現れたのは金髪の少女だった。

そう、少女だった。


「え?」


成金小太りのおっさん、白衣を着た怪しい科学者。予想していたことが多かった訳では無いがこれは無いだろ。白衣は着ているけども…


「お前、えという名前なのか?」


こちらに指を指して再度問われた。


「いや、違う違う。俺は日畑 蓮っていう名前だ」


「ああ、蓮と言うのか、よしついて来い」


そう言われると牢を開けられて呆気に取られていると


「旦那‼︎やっちまえ‼︎」


レフが叫ぶ。そうだ手錠をされている訳ではなかった。相手は少女。素人の俺でも制圧できるだろう。鍵を奪って二人で逃げて、警察に駆け込む。そうと決まれば…


「おおおお‼︎」


全力で掴みかかろうとするが


「お前…アホか?」


掴みかかろうとした瞬間に動きが止められた。

誰かに組み付かれた訳でもなしに。

麻痺、見えない壁とかでもなく動けない。


「旦那?遊んでないで俺も出してくださいよ」


「いやあの動けないんですけど…」


口意外がピクリとも動けない。


少女が溜息を吐きながら右手を差し出し、

その人差し指から光の線が俺の首輪に繋がった。


「ついて来い」


少女が歩き出すと同時に俺も歩き出す。


「え、あの、ちょっと、これどうなってんの‼︎」


少女は答えず歩みも止めない。


「レン!戻ってきたら何があったか教えてくれよ!」


やっぱあいつは調子良すぎる。


ーーー


やってきたるは何やら研究室チック…研究室だな。ゴチャゴチャした機材、少女以外にも白衣を着た男女数名。その中で俺と少女は机を挟んで対面に座っていた。


「それじゃこれにサインして頂戴」


少女から紙とペンが渡される。ただその紙に書いてある文字が読めない、英語とかそんなことでは無く全く見覚えがないのだ。


「あの、これ読めないのですけど…」


「ああ、気にしなくていいのだわ。ただ組合に対する言い訳だから」


「いや、何のサインかわからないと書けないんですが…」


「…あなたを改造しても良いかの確認だわ」


改造ってなんだよ


「え、改造ってなんか俺なんか臓器とかに病気とかあるんですか?」


ここ病院説を展開してみるが


「は?あなたに病気とかないわよ。むしろ健康だからこそ選ばれたのだわ」


一瞬で瓦解する。


「じゃあなんで改造なんでするんだよ」


「スポンサーの要望」


バッサリと


「牧場で死ぬまで働くか金持ちの家で飼われるかどっちがいい?」


サインの位置を指でトントンと…結局選択指は無い訳で


「はあぁ…ここの文字で名前が書けないんですけど…」


「あなたの世界の文字でいいのだわ」


あなたの世界とか言い出したぞこの女

仕方無く日畑蓮とサインする


「そう、それじゃあ麻酔をするから。起きたら飼い主の所へ送っておくからくれぐれも粗相のないように」


「えっ!もう!」


その言葉と共に俺は意識を失った。

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