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ヒーローの正体

 なぜここに?

 海斗は一瞬考える仕草を見せる。

 しかしその直後に浮かんだのは納得の表情。


 あの路地裏で遭遇した時のことを思い出す。

 ヒーローだからモンスターと戦っていてもおかしくない。

 そんな理由でついスルーしてしまったが、彼女は当たり前のように戦っていた。


 対多数での戦いに押されてはいたものの、戦闘には慣れている。

 つまり既に何度かゴブリンと戦っていたと言うことだ。


 状況から見て、あの異形の存在を理解し対峙していたと考えられる。

 そうなると――ヤツらの発生源と思われる――この場所に関わりがあってもおかしくない。

 いや何かしら関係があると考える方が自然だろう。


 少しふらついた様子を見せるヒーロー。

 注意深く様子を窺っていると、彼女は頭を振りながらゲートに背を向け歩き出す。


 擦れ違い際に敬礼する自衛官。

 そこにはあるのは、目上の者に対するような緊張感。

 彼らの対応から、あのヒーローはこの場所で、それなりの立場なのだと分かった。


 彼女に声をかけるべきだろうか。

 海斗は自身の考えをまとめるため、状況を整理する。


 自衛官に接触したとしても、説得できる可能性は低い。

 あちらからしてみれば、海斗はただの怪しい侵入者。

 恐らく話をする間もなく、普通に拘束されて終わりだろう。


 ならは貸しのある彼女であればどうか?

 もしかすると助けられた負い目から、協力を取り付けることができるかもしれない。

 ふいに浮かんが考えだったが、意外と良いアイデアではないかと思える。


 しかし問題は周囲を警戒中の自衛官だ。

 海斗は周囲に視線を飛ばしながら考える。

 なんとか二人で話せる状況を作れるといいのだが。


 機会を探りながら様子を窺っていると――

 彼女がいくつかあるコンテナハウスの中へと入っていく。


 今がチャンスだ!

 海斗は物音を立てぬよう、警戒の間を縫いながらコンテナハウスに接近。

 気付かれぬように移動を完了させる。


「やっぱ……アイ……倒せな……たみたい……」

「仕方……だろ? いくら強い……言っても、一人で……」


 壁面に背をつけた海斗、そこに微かに聞こえてくる話し声。

 集中すればギリギリ聞き取ることが出来そうな声量に耳を澄ませる。


「……な若い……任せなきゃ…………はな」

「ああ、本当……俺達が戦え……良いんだが……」


 断片的に拾えた会話によると、あのヒーローがここで何かと戦っていること。

 そしてこの地下に何か――恐らくダンジョンが健在で――あることが確認できた。


 ゲートまで存在しているのだ。

 恐らく間違いないだろうとは思っていたが、可能性が高まったことは大きい。


 何としてもこの場所の地下へ侵入しなくては。

 そして自らの目で確認するのだと、海斗は強く決意を固めた。


 とは言え、そのためにもまずは彼女に接触しなくてはいけない。

 コンテナに取り付けられた窓から、こっそりと中を覗き込む。

 しかし薄暗く室内の様子を窺うことはできなかった。


 『気配察知』では室内の様子を知ることはできない。

 そのため原始的な手ではあるが、壁面に耳を当て中の気配を探る。


 詳細までは分からないが、話し声や大きな物音はしない。

 彼女一人である可能性が低くないだろう。

 それにもし室内に他の人がいたとしても、多くはないと思われる。


「……今しかチャンスはなさそうだな」


 少人数であれば、最悪の場合でもなんとかできる。

 そう考えれば多少のリスクは覚悟のして、即座に行動を起こすべきだろう。


 周囲を見回した海斗は、足元に落ちていた小石を拾い上げる。

 ギリギリ姿が隠せる位置で、警備を行っている自衛官の様子を窺う。


 彼らの視線がこちらから逸れた瞬間、狙いを定め小石を投擲。

 弧を描く飛礫が、真っ直ぐに標的へと吸い込まれていき――

 少し離れた場所にあるコンテナに音を発生させる。


「おい、今何か聞こえなかった?」


 自衛官が気を取られ背を向けた瞬間――

 静かに扉を開きコンテナ内へと侵入する。


 素早く行動したとは言え、僅かに光が室内へと差し込んでしまった。

 警戒しながらコンテナ内を見回す海斗。


 少し先に、こちらに背を向けている人影が一つ。

 即座に発動した『気配察知』で確認した数とも一致する。

 どうやら気付かれてはいないようだ。


 相手はごそごそと身動ぎしているように見える。

 しかし薄暗く室内では詳しい状況を窺いしることはできない。


 状況を判断するため様子を窺う。

 唯一の光源である窓から、僅かに月明かりが射し込み――


「……!?」


 接触するため一歩踏み出した海斗は――

 唖然とした表情で立ち止まる。


 なぜ、どうして。

 様々な疑問が海斗の脳裏に渦巻く。

 それは予想していなかった出来事によって発生した感情。


 海斗は確かに、このコンテナハウスにヒーローが入ったところを確認した。

 そして自身が侵入するまで誰もここから出ていない。


 つまり今室内にいるのは例のヒーローで間違いないはずだ。

 確定した事実に驚き、思わず一歩後退り――背が扉に触れ音を立てる。


「……誰っ!!」


 発せられる鋭い声。

 そして構えを取りながら慌てて振り向く女性。


「えっ……センパ……」


 月光に照らし出された女性の横顔。

 ヘルメットを脱ぎ去ったその素顔は――

 見慣れた後輩、鵜坂のものだった。

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