脱出②
淡い薄紅色の光を残し消えていく宝玉に、海斗は唖然とした表情のまま固まってしまう。
すると目の前で更に驚くべき事象が発生する。
残された輝きが収束し、ティセの身体に吸い込まれていったのだ。
「今のって、一体……」
困惑に満ちた表情で呟く歌恋。はっと顔を見合わせた二人はティセに視線を向ける。
「そ……そんな目で見られてもアタシだって分かんないよぉ……」
ぶつかる三者の視線。しかし誰も答えとなるものを持ち合わせていない。
何も話すことが出来ず見つめ合っていると――
「……ぬぉっ!?」
「……きゃっ!?」
ダンジョンを軽い揺れが襲い――
目の前で存在を主張していた女神像が崩れ落ち、白い光が湧きあがる。
「えっと、今の光って……」
「見た感じなにも……ッ!?」
歌恋の言葉に返す答えが思い浮かばず、無難なことを話そうとした瞬間――海斗の視線の先で大きな変化が起こった。
「マスター、あれって!」
ティセが指差したのは女神像のあった場所。
崩れ去った像の跡地に――不可思議な紋様が浮かび上がっていた。
円形に広がる紋様を凝視する海斗。その脳裏に一つの言葉が浮かんでくる。
「ボスを倒したら魔方陣って……ゲームみたいな演出しやがって」
そうそれは魔方陣と言う言葉。本当にここはゲームのような場所だ。
恐らくこの上に乗ることでダンジョンの入り口まで転送される、と言った感じだろうか。
「やっぱりこれって……そういうことなんですかね?」
どうやら歌恋も同じ考えに至ったようだ。
海斗も初めて見るものである以上、本当にこの魔方陣が地上に通じているのかは分からない。
隣に視線を向けるが、ティセは左右に首を振る。彼女もこの魔方陣が何なのか詳細は分からないようだ。
だが確認した限り他の場所に出口らしきものはなかった。
他に選択肢がない以上、リスクがあったとしてもこの魔方陣に賭けてみるしかないだろう。
「ああ。多分……。仮に罠だとしても他に選択肢もないしな」
コクリと頷き、歌恋は同意の意思を示す。
とは言え、言葉にした通り罠の可能性もある。ならばまずは――
「それじゃあ、俺が先……ッ!?」
海斗の足元がぐらつき、言葉が途中で遮られる。
最初は小さな揺れ。しかしそれは段々と大きくなっていく。
じっと立っていることが困難に思えるほどの地揺れ。
「……ッ。海斗さ……」
海斗は手を伸ばし歌恋を引き寄せる。
地面に突き立てた大剣で、身体を支えるが揺れが収まる気配はない。
ダンジョンが崩壊するのではないか。そう思えるほどの激しい振動。
ふと海斗の脳裏に嫌な想像が過ぎる。
「ね……ねえ、マスターこれって不味いんじゃ……」
首元に抱きつきながら、不安の声を上げるティセ。
「か、海斗さん……もしかして……」
抱き抱える歌恋の顔色も良くない。
二人も海斗と同じ想像――ダンジョンの崩壊を予感しているのだろう。
どうやら悩んでいる時間はない。
もしコアの破壊によってダンジョンが崩壊するのであれば、逃げ場などなかった。
目の前の魔方陣が出口に繋がっているかどうかは分からない。しかし他に選択肢などない。
覚悟を決め、海斗は二人に目配せする。
「…………」
無言で頷く二人に連れて、一歩前に踏み出す。
三人が魔方陣の上に達すると紋様が輝きを放ち――室内を眩い閃光が包んだ。




