束の間の休息②
食料が確保され空腹が満たされると、棚上げにしていたことが気にかかる。
そう歌恋が気にしていた『レベルアップ』に関してのことだ。
海斗はここに辿り着くまで、ティセに確認した内容を少しづつ頭の中で整理していた。
もしかすると他にもあるかもしれない。だが現状判明しているレベルアップによる大きな変化は三つ。
一つ目は身体能力の向上。
記憶にある限り経験した『レベルアップ』は二度。たったそれだけのレベル上昇で既に海斗は超人的な身体能力を得ている。
そこから考えるとレベルが上昇することによる能力の上昇幅は非常に大きい。
二つ目は特殊能力の発現。
今の海斗が所持している能力は『隠密』と『気配察知』そしてよく分からない『???』の三つ。
『???』がどんなものなのかは未だに分からない。しかし残り二つの能力が有用であることは間違いない。
確実ではないものの、レベルアップを切っ掛けにして何かしらの能力が発現する可能性は非常に高そうだ。
そして三つ目は見た目の変化。
詳しいことは分からないとティセは言っていたが、これに関しては何となく納得出来そうな仮定があった。
それは身体能力の向上と関係しているのではないかと言う考え。
恐らく上昇した能力に合わせて、最適な状態に肉体が変化している。
簡単に言ってしまえば某戦闘民族のようなイメージだと考えていいだろう。
もしかすると見えないデメリットがあるのかもしれない。
しかし現状考えられるレベルアップのメリットは非常に大きい。
恐らく個人差はあると思うが、歌恋もレベルを上げることで海斗と同じような動きが出来る可能性があった。
今後のことを考えるなら、彼女のレベル上げも検討した方がいいだろう。
ただどのような行動を取るにしても歌恋の意思を無視したくはない。
方針を決めるためにも取りあえずレベルアップに関して意見を交換するのが良さそうだ。
「なあ、歌恋はレベルアップに関してどう思う?」
「レベルアップですか? そうですね……ゲームとかラノベの知識になっちゃいますけど、レベルが上がると強くなるってイメージでしょうか?」
「うんうん。そのイメージで大丈夫だと思うよ!」
ティセの言葉に合わせて海斗が頷くと、歌恋は確認するように口を開く。
「海斗さんはレベルが上がった実感とかって何かあったりしますか?」
確かにレベルアップに関する変化は気になる所だろう。
彼女の質問に先程まで考えていた情報を伝えてみることにする。
「そうだね。今分かっている限りだと、身体能力の上昇、見た目の変化……あと特殊な能力が身につく可能性がある、って所かな」
「特殊能力! それって例えば……魔法みたいな?」
前のめりになって問いかけてくる歌恋。
キラキラとした目を向けられてしまい、続きを話すのがはばかられる。
もし海斗の考えが正しければ今後の活動を左右するかもしれない要素。期待を裏切ることになるかも知れないが、希望的観測や嘘を吐くことは出来ない。
「いや、そんな凄い物じゃなくて……ほら、ここに入る前の……」
「あっ! なるほど。気配が分かるってヤツですね!!」
「魔法が使える、何てことがあると面白いかもしれないけど。……そうなると敵もそれを使ってくる可能性がある。出来れば避けたい感じかな」
「うーん。確かに海斗さんの言う通りかもですね」
納得の様子を見せる歌恋を視界に納めながら、他に何か不足はないかと視線でティセに問いかける。
彼女は胸を張り、腕を組みながら何度も頷きを繰り返していた。
どうやら今の説明で過不足はなさそうで安心する。
「……あっそうだ!」
海斗がホッと一息吐いていると、歌恋は何か思いついたようにポンと手を打ち――
「ステータスオープン!!」
――大きな声で定番の台詞を叫んだ。