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カフェ奪還戦①

 気配を殺し、壁伝いに広間へと踏み込む。

 ゴブリンの配置は建物ドアの前に二匹。残り四匹の位置はバラバラに散っている。


 位置的に一斉に殲滅することは出来そうにない。

 少しずつ数を減らす必要があるだろう。

 壁際で眠っているゴブリンの口元を押さえ、音を立てず一撃で首を切り落とす。


 ――まずは一。

 息を殺し周囲を見回すが、こちらの動きに気付いた様子はない。

 室内を窺っていた時に感じていたが、ヤツらは完全に油断しきっている。

 まだ眠っていないと言うだけで、かなり注意力散漫になっていた。


 血の臭いで気付かれる可能性も考えていたが、それは杞憂のままで終わった。

 心の中でホッと一息吐く。一つ目の条件はクリア。

 このまま戦闘を続けるべきか判断を下すために、もう一つ確認しておかなければいけない事がある。

 もし自身の考えが間違っているのなら、可能な限り敵の戦力を削りながら即座に離脱する必要があった。


 確認すべきこと。それは後で思い返した時に気が付いた。

 歌恋を助け、ゴブリンを倒した時の様子を。

 確実とは言えない、しかし決して低い可能性ではないと考えている。


 海斗は息絶えたゴブリンを姿を視界に入れながら数を数える。

 一、二、三、四――

 その間も周囲に異変がないか、注意を切らすことはない。

 ――八、九、一〇。

 変わることなくその場に存在し続ける緑色の体。


 ――よし。

 海斗は静かにガッツポーズを取る。それは自らの考えが正しかったと確信できたからだ。

 倒されたモンスターは淡い光を残して消える。しかし目の前のゴブリンはその姿を残したままだ。


 あの時、歌恋を襲っていたゴブリンは三匹。

 最初の一匹目と残り二匹を倒すまで時間差があったはず。だが消えるタイミングは三匹とも殆ど同じだったのだ。

 ダンジョンは戦闘が終了するまで、マナの捕食を行わないのではないか。

 どういった仕組みなのかは分からない。

 だが今はそれでよかった。何故なら海斗にとってそちらの方が都合の良い状態なのだから。



 問題がないことを確認し、海斗は再び壁伝いに動き出す。

 ――ゴブリンを処理するために。

 二、三、四、五、六。順調に数を減らしていくと、建物の死角に入った。


 ここまでは順調だ。まだヤツらが気付いた様子もない。

 残された敵。眠っているゴブリンは残り六。

 起きているゴブリンと足せば標的は一二。どうやらこの部屋の中にいたゴブリンは全部で一八匹だったようだ。


 気配を感じられる様になったのは非常に便利なのだが、これだけ密集していると正確な数までは分からない。

 例えるならレーダーに赤い大きな点がある様なイメージだ。

 周囲のゴブリン達を確認する。

 もっともベストなのは眠っているゴブリンの殲滅。


 しかし残された敵は壁際ではなく床に背を付けて眠っている。

 始末するためには起きているゴブリンの視界に入らざる得ない。

 ――楽を出来るのはここまでか。


 ここからは運とスピードが重要になるだろう。

 建物の影で屈み込み、足元に落ちている小石を三つ手に取った。

 入って来た方とは逆側にある通路に向かって拾った小石を二つ投げる。

 コツンコツンと石の落ちる音が時間差で響き――


「ギギッ?」

 ゴブリン達が反応する。


「ギッ、ギギ?」

「ギギッ、ギッギギッ!」

 何を言っているのか理解は出来ないが、話し合っているように思える。

 ヤツらは暫くやり取りを行うと、門番ゴブリン以外の四匹が通路に向かって歩き出す。

 どこか面倒くさそうな気配を漂わせている様にも感じる。


 恐らく『様子を見て来い』と言った所だろう。

 理由はともかく海斗にとって都合の良い展開だ。

 仮に面と向かっての戦闘になっても六匹程度であれば何とかなると考えていた。


 だが、数が少なければより安全に戦うことが出来る。

 通路へと警戒心なく移動していくゴブリン達の様子を窺う。

 少しずつ距離が近づく。気付かれないよう壁に身体を貼り付け息を潜める。

 じっと身を隠し、ヤツらが通り過ぎるのを待つ。

 海斗の横をゴブリン達が通り過ぎた次の瞬間――


「……ッ」

 一足でヤツらの背後へと近づき、次々に首を刎ね飛ばしていく。

 周囲で寝ているゴブリンのことは気にしない、仮に途中で乱入されても良い。その前に門番を含め起きているゴブリンを全て始末する。


 軽く踏み切りプレハブの屋根に指先を引っ掛けると、一気に身体を引き上げる。

 四つの首がまだ空にある内に、一息の間に屋根を駆け抜け、門番の正面に降り立つ。

 驚き固まるゴブリンが二匹。反撃の間も与えず一閃。

 首元に赤い線が走り、ゴトリと二匹の頭が地面に落ちた。


 海斗はドアを背に、海斗は油断なく周囲に視線を飛ばす。

 残り六匹のゴブリン達は眠ったまま動き出す様子はない。


「はぁ……上手く行ったみたいだな」

 少し出来過ぎな気もするが、ここまでの動きは完璧だ。

 あとは目覚める前に残りのゴブリンを始末すればいい。

 ほっと一息吐き、警戒を緩め――



 ――突如、背中に強い衝撃を受け、身体が宙を舞う。

 音を立ててドアが吹き飛ぶ。

 空中で体を捻りながら着地。扉があった方に視線を飛ばす。


「グォォォォオオオオオ!!」

 雄叫びを上げ建物の奥から現れたのは――

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