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レベルアップ?③

 レベルやステータスの確認はもう十分だろう。そう考え意識を切り替えた海斗は、室内の違和感に気付く。

 何かが足りない。そう考え周囲に視線を飛ばすと――


「ゴブリンの遺体がなくなってる……」

 先程倒したはずのゴブリンの遺体が消失していた。

 今までの出来事は夢だった。いやそんなはずはない。すぐ側にいるティセの存在、そして手の平にあるスマホに表示されているステータス画面。

 様々な事象が今までの出来事は現実であると伝えていた。


 ゴブリンを倒したことによる心理的なストレス、そしてレベルアップによる困惑。驚きの連続で視野は狭くなっていたと思う。

 だがそれにしても理由が分からない。一体ゴブリンはどこへいったのか。

 腕を組み思考を巡らせていると、海斗の目の前にやってきたティセが口を開く。


「まぁダンジョンだからね~」

「んっ? ティセ、それってどう言うことだ」

「えっとね、モンスターってマナで出来てるって言ったでしょ? 倒すとマナに戻って消えちゃうんだよね~」

 確かにティセはモンスターがマナで出来ていると言っていた。

 本当にゲームの世界かと思ってしまうような状況。しかしまだ僅かに残る嫌な感触が、自身の体験したことが紛れもない現実だと伝えていた。


「そいでダンジョンに吸収されてぐるぐるしてるんだよ~」

 腕を組み考えていたせいだろう。ティセは更に自身の知る詳しい内容を伝えてくれる。


 何となくではあるものの、モンスターやダンジョンに関して分かってきた。

 まだまだ不明点はあるものの、倒した後に消えると分かっていれば少しだけ罪悪感が薄れる気がする。

 これからも戦いは続くだろう。少しでも精神的に楽になるのはありがたい。


「そっか、色々教えてくれてありがとうな」

「気にしなくて良いよぉ~。マスターのサポートをするのがアタシの役目なんだしね♪」

 笑顔を浮かべるティセを見ながら、海斗は探索を再開するために気合いを入れ直す。


「それじゃあ、そろそ……」

「……あっ!!」

 探索を再開するため声をかけようとしたところで、ティセは声を上げる。彼女は何かに気付いた様子で、ゴブリンが存在していた辺りへと飛んで行く。


「ほら見てよ! 流石マスター、ツイてるね♪」

「えっと? これって……」

 ティセが指差す先に線を向けると、そこには刃渡り一〇㎝程度の短刀が落ちている。

 なぜこんな場所に短刀が? 不思議に思い首を傾げていると、ティセが海斗の疑問を察したかのように口を開く。


「マナがダンジョンに吸収される時に、たま~にあるんだよ」

 なるほど。この短刀を簡単に言い表すならば、ドロップアイテムと言うところだろうか。

 つくづつゲームのような状況に何と言葉を発して良いのか、海斗は戸惑いを覚える。

-

 平時であれば銃刀法違反なのかもしれない。しかし今は緊急時、一つでも多く戦う術が必要だろう。


 取りあえず手に取ってみるべきか。歩を進め屈み込み、ソレを意識を向けた瞬間――『小鬼の短刀』そんな言葉が脳裏に浮かび上がった。

 本来ならば驚くべき事態。しかしこれまでに起こったことを思い返せば、大したことでもない。

 目の前のモノが『小鬼の短刀』なのだと当たり前のように理解した海斗は、短刀を手に取り覚悟を込めて握り締める。


 光に翳してその刃に視線を向ける海斗。曇り一つない刀身には使用された形跡はなく、この短刀が新品であることが伝わってきた。

 食事も外食やコンビニ弁当が殆どの海斗は、普段刃物を持つことなどない。だがこの状況では美しい波紋を描く短刀に頼もしさを感じてしまう。

 軽く刃を振るうと、まるで自分の身体の一部であるかのように思い通りに動く。


「うんうん。マスターにピッタリだね♪」

 すぐ側で言葉を発したティセに視線を向けると、彼女はとても嬉しそうな満面の笑みを浮かべている。

 きっと戦いに慣れることはないのだろう。

 だが大切なものを護るためには戦わなくてはならない。


 顔を出しそうになる安心に蓋をして――海斗は本当の意味で戦うことを決意した。

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