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レベルアップ②

 取りあえずレベルが上がったのは良いことなのだと分かった。

 だがそれで何が変わったのか、詳しいところは海斗にも分からない。

 ここはゲームに出て来るダンジョンと同じような場所。そんなティセの言葉を思い出す。


 もしゲームの中ならばこんな時にどうするだろうか。

 海斗は腕を組み少し考えると、厨二的なポージング――足を肩幅程度に開き、片手を突き出した状態で口を開く。


「ステータスオープン!」

 期待を込めて発したのは、ゲームやアニメと言ったサブカルで定番の台詞。

 さあ、どんな感じで表示されるのだろう。わくわくとしながらその時を待つ。

 ――しかし何も起きない。


「……? えっと……マスター、どうしたの?」

 不思議そうな表情でこちらを見つめてくるティセ。


「…………」

 海斗は自らの行いを思い返し頬が熱を帯びる。

 恥ずかしさから言葉を発することが出来ず、ただ黙っていることしかできない。


 無垢な瞳でこちらを見つめてくるティセ。

 彼女にそんなつもりはないのだろう。だが海斗には早く理由を話せと言われているように思えてしまう。

 海斗は頬をぽりぽりと掻きながら恥ずかしそうに口を開く。


「……レベルアップの具体的な効果が知りたくて、な」

「なるほど、そっか~……う~ん」

 ティセは納得した様子を見せたあと、両腕を組んで考えるような仕草を取る。

 どうしたのだろう。不思議に思いながら海斗がその様子を眺めていると――


「……そうだ! ねえマスター! スマホ、スマホ出してよ!!」

 ティセは海斗のポケットをペシペシと叩きながら急かしてくる。


「これでいいのか?」

「そうそう。ちょっとまっててね~。むむむむ……」

 彼女の希望通りに取り出したスマホ。そのディスプレイをティセに向けると、彼女は画面に手を当て唸り始めた。


「これでどうかな?」

 暫く待っていると、彼女は両手を挙げ海斗にスマホを見るようにアピールしてくる。



 藤堂海斗 レベル:2

 スキル:隠密(初級) ???



 彼女の指し示すディスプレイに表示されていたのは、少し項目は少ない気もするがステータス画面と呼べるものだった。


「レベルにスキルって……本当にゲームみたいだな」

「どーよ、凄いでしょ~。マスターのやってるゲームに合わせ……ってあれ?」

 自慢げにしていたはずが、突然驚いた表情を浮かべるティセ。

 彼女は不思議そうな様子でスマホの画面を指で指し示す。

 その箇所は『???』ではなく――


「レベルがどうかしたのか?」

 スキルの部分ではなく、特に表示上問題ないように見えるレベルを指差され困惑する海斗。

 ティセの目を見て問いかけると、彼女はゆっくりと口を開く。


「……えっとね、何でか分かんないんだけどレベルが2になってるの」

「……? それがどうかしたのか」

 ゴブリンを倒し、レベル一つ上がって二になる。そう考えれば特に問題は見当たらない。

 彼女が何を気にしているのか分からず、再度問いかける。


「えっとね……レベルって最初はゼロのはずなんだ。だからレベルが上がったなら、今はレベル1になる……はずなんだけど」

 ティセの言葉に海斗は納得する。海斗はまだ一度しか戦闘を行っていない。ならば表示されているレベルは1でなければおかしい。

 この場所で目覚めた時から彼女はずっと側にいた。だからこそティセも驚いているのだろう。

 腕を胸の下で汲みながら考える様子を見せる彼女を見つめていると――


「う~ん……考えても分かんないし、まぁいっか!」

「おい、軽すぎないか?」

「だって分かんないもんは分かんないんだもん。仕方なくない?」

 驚いていた割には軽すぎる。そう考え問いかけるが、確かにティセの言う通りかもしれない。

 彼女に分からないことが、海斗に分かるはずもないのだから、気にするだけ時間の無駄だろう。


「それで……このレベルが1と2でどんな風に違うんだ?」

 数字が見えると、やはり少しでも詳しい情報が欲しくなる。

 明確な答えは帰って来ないかもしれない。だがどうしても知りたい気持ちがあふれ問いかけてしまった。


「うん。レベルはさっきも少し話したけど位階……って言葉で分かるかな? 今のマスターがどのぐらい凄いのかって指針になる感じなんだけど」

 取りあえずの質問だったが、非常に明確な答えが返ってきた。

 もっと知りたいと思った海斗は、軽く頷きティセに続きを話すよう促す。


「レベルが1になるとマナを取り込めるようになって、レベルが上がるほど一度に取り込めるマナが増える感じかな」

「あーマナを取り込むとどうなるんだ?」

 単語の細かい意味はスルーしつつ、より細かい仕様を確認するため質問を重ねる。


「簡単に言っちゃえば、マナがある場所で凄く早く走れるようになったり、力が強くなったりするって感じかな」

 なるほど。身体能力がアップするという認識で問題なさそうだ。


「それでスキルってのは何なんだ?」

「あーこれは今のマスターがどんな事が出来るのかって事だね。マスター、スキルの名前をクリックしてみて」

 ――『気配を感じ取られ難くなる』

 彼女の言う通り『隠密(初級)』をクリックすると文字が切り替わった。


 どうやらスキルの説明が表示されているらしい。

 初級と言うことは恐らく中級や上級もあるのだろう。つくづくゲームみたいな状況に、少し呆れてしまいそうになる。

 ちなみに『???』はクリックしても何も反応を示さなかった。


「それでこの『???』ってのは何なんだ?」

 ティセは気にせずスルーしていたが、我慢できずに質問を行う。


「え? 『???』って何?」

 しかし彼女から返ってきた答えに困惑する。

 どうやらスキル欄に表示されている『???』の表記は海斗にしか見えないものらしい。

 凄く気になりはするが、ここで話を止めても何の意味もないだろう。


「いや、何でもない。気にしないでくれ」

「……うん? まぁマスターがそう言うなら……そいでスキルはレベルが上がったり、何か切っ掛けがあると覚えられる感じだね」

「本当にゲームみたいだな……」

 素直に感想を語ると、ティセは満面の笑みを浮かべ――


「まぁアタシもガチャで当ててる訳だしね♪」

 確かにその通りだ。最初からまるでゲームのようだった。

 だが少しティセの言い方が気になり海斗は口を開く。


「確かに最初はガチャかもしれないけど、ティセは大事なパートナーだぞ?」

「も~マスターったら、アタシを喜ばせても何も出ないよぉ~♪」

 少し照れながら笑うティセに、海斗も笑みを返した。

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