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ブヒートの実力

「な、なあティセ……俺の顔って、オークみたいに見えるのか?」


 思わず浮かんだ不安。

 海斗は恐る恐るティセに問いかける。


「そ、そんなことないよ! 全然オークになんて似てないって! アタシは普通に……カッコイイと思うよ!!」


 彼女の言葉を聞き、こわばった身体から力が抜ける。

 格好いいかは別として、自分がちゃんと人間であったことに安堵した。


 普通なら発想が飛躍しすぎていると思われてしまうだろう。

 しかしそのような考えに至るには明確な理由があった。


 海斗はレベルと言う概念と共に、圧倒的な身体能力を得た。

 だが獲得したモノは、それだけではない。


 会社では、なぜか誰も突っ込んで来ないので忘れそうになってしまう。

 しかし海斗は確かに変化している。

 鏡を見れば一目瞭然――見た目が、二〇代前半まで若返っているのだ。


 そもそも見た目がこれほど変化するのは明らかに異常。

 もしかしたら、若返りの次はモンスター化してしまうのでは?


 そんな恐怖に襲われたとしても、ある意味では仕方ないと言える。

 レベルアップにはよくわからないことも多いのだから。


「そうか、それならよかった……」

「私もカッ……イって……ってま……ど……」


 安堵の息を吐く海斗の耳に、鵜坂の発した小さな声が届く。

 上手く聞き取れなかったため視線で問い返すと、彼女は顔を真っ赤にしながら両手を顔の前で振る。

 女性の気持ちを察することは難しいが、恐らく聞くなと言うことだろう。


「あー……どうして俺を仲間に?」


 気を取り直し、ブヒートへと向き直った海斗は質問をぶつける。


「簡単なことぶひ。オーク族は強さを尊ぶんだぶひー。お前はあのアレゼルが認めたほどの戦士。多少? そこそこ……いや、相当性格に難があったとしても、敬意を持って迎えるのがオークの流儀ぶひー」

「そ、そうか……」


 驚くほどにこちらを認めていたブヒート。

 多少引っかかりは感じるものの、彼の言葉に『オークの戦士になるのも悪くないかも』と少しだけ思ってしまう。


 今まで職場でこき使われ、全く認められなかったことによる弊害なのかもしれない。

 昨日までの海斗であれば、戦わずにオークたちへと下っていた可能性もある。

 しかし今の海斗には守らなければいけない相手がいた。


 地面に突き立てていた漆黒の大剣を引き抜き、ブヒートの元へと歩いて行く。

 ある程度の距離を空け、黒光りする刃を中段に構えた。


「準備はいいぶひな?」

「ああ……」


 ブヒートはこちらが頷いたのを確認すると、配下へ視線で合図を送る。


「これを頼むぶひ」


 オークの側近は彼からなにか赤い球状のモノを受け取ると、そのまま玉座の方へと下がっていく。

 そして受け取ったモノを、この部屋の最奥――壁面に空いた穴へとはめ込んだ。


 ブヒートはそれを見届けると、片手を天に向かって突き上げる。

 すると手の平から眩い光が溢れ出し、次の瞬間その手には――強大な大剣が握られていた。


 ギザギザになった荒いノコギリのような刃。

 その刀身そのものからは、怪しいオーラが立ち上っており、見るからに魔剣と言った気配を漂わせている。


 海斗の持つ漆黒の大剣を一回り大きくしたようなエモノ。

 それを軽々と上段に構えたブヒートは、一分の隙もなく海斗に鋭い視線を向ける。


「「…………」」


 武器を構えた両者の視線がぶつかり――二人は同時に前方へと走り出した。


「これでも喰らうぶひー!!」

「くっ!?」


 けたたましい音と共にぶつかり合う刃。

 見た目から想像していた以上の激しい衝撃。

 海斗は押し負けぬようにと必死に抗う。


 ブヒートの纏う気配から、ヤツが強いことはわかっていた。

 しかしその実力は、海斗の想像を上回っている。


 一太刀交えただけで理解できた。

 このオークの王は、あの日戦った漆黒の騎士『アレゼル』以上の力を持っているのだと。

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