第89話》心を奪われています
「かわいい!!」
「え? うっそ~。もふもふ!」
驚いた事にリラさんが、目を輝かせてかわいいと叫んだ!
ミチさんが、寝ころんだ!?
とうとう生まれたのですが、これはドラゴンなのか?
真っ白でふわふわの毛。鱗じゃないんだけど?
でも、羽はあるようだ。
たまごから出て来たのは、片手サイズの見た目子犬。
四人共寝ころんで、子犬目線で見つめてる。この図はなんだろう? しかも、ママルさんが俺を手招きしている。
「エットも見てみなよ。同じ目線になれば、ちょっと迫力あるよ!」
「お、俺はいいかなぁ……」
迫力なんてこれっぽちもないと思う。
「そうだ。エサは? エット調べて見て!」
ギルドコインを使って調べろと、リラさんからお達しが……。
「あ、連れて行って直接食べさせる事も可能だって。ギルドメンバーのみでパーティーを組んで、ダンジョンに挑めばエサが自動的にドロップすると書いてある」
「え? ドラと一緒にダンジョン行けるの?」
「何よその、ドラって!」
「名前だよ」
「名前だよ。じゃないわ! 勝手に決めないでよ」
「え~~。ドラでいいよね?」
と、ママルさんが同意を求めるも誰も頷かない。
「そうね。出掛ける前に名前を決めましょうか」
とミチさん。
「では、一人ずつ案を出して、エットに決めてもらいましょう」
「え? 俺が決めるの?」
リラさんの言葉に驚くと、みんな頷いた。公平にって事何だろうけど、ブーブー言われるの俺なんじゃないか?
「そうね。白いからホワイトで『ワイト』なんてどうかしら?」
これはリラさん。
「小さいから『ミニ』なんてどう?」
と、ミチさん。
「……眠りのドラゴンの所から持って来たので、『ネンネ』がいいと思う」
モアレさんも意見を出してくれた。
「私は、ドラがいい!」
「で、どれにするの?」
と、今すぐ決めろとリラさんが迫って来る。
「えーと……」
ドラは既に却下されているので、ママルさんには悪いけど外すとして、ミニでもいいけど大きくなると思うからなぁ。ワイトもかっこいいけど、ネンネもかわいい。見た目がかわいいから、ネンネがいいかな?
「ネンネがいいかな」
「やったわ!」
モアレさんが嬉しそうに呟いた。
「ネンネかぁ。まあ、ドラよりはマシよね」
「ネンネもかわいいわよね」
リラさんとミチさんもOKしてくれた。
「君は、ネンネだよ。私は、ママル宜しくね!」
ドラでなくてもママルさんもOKの様です。
ふう。思ったよりもめなかったな。
「では、ダンジョンに行きますよ!」
「どこにしましょうか?」
「敵を倒すと、エサがドロップするのならいっぱいいる方がいいわよね?」
って、ミチさん? 別にいっぺんに集めなくてもいいと思います!
「あの。まずは様子みで、簡単なところにしない?」
「そうね。アイテム集めとかにしましょうか?」
とミチさん。
「あぁ、それならクリスタルダンジョンにしない?」
「あ、では私はお留守番を……」
リラさんが言うと、モアレさんがそう言った。そっか。ギルドに入っていなかったし、イベントに参加していなかったんだ。
「今ならクリスタルダイスを売っているんじゃないかしら?」
とリラさん。
「かなり高いとは思うけどね」
と付け加えたけどね。
早速書く事にしたけど、思ったより安いらしい。ちょっと不安なんだけど……。
「ねえナビ。クリスタルダンジョンって宝箱とかそういうのないの?」
人気がない理由がそれしか浮かばなかった。
「いえ、あります」
「え? じゃ、何故人気がないの?」
「それは、出店している者に聞かないとわかりません」
だよね……。
「買ったわよ! 行きましょう!」
「え! 買っちゃったの?」
リラさんの行動の早さに驚いた。
「その為に来たのでしょう?」
「そうだけどさぁ」
「エサいっぱいドロップするといいわね」
とミチさん。
いつも冷静なミチさんまでも、ネンネに心を奪われています。恐るべしペット!