第88話》ソロでもいけました
「あ、私もやる」
「そうっとよ」
ママルさんとリラさんが、両手を握り合っている……正確には、たまごを二人で温めている。
ここがギルド部屋でよかった。これ注目の的だよ。
ミチさんとモアレさんもそのたまごをジーッと見つめている。つまり、四人で向き合って何やらやっている怪しい集団だ。
ギルドコインを使ってたまごの孵化の仕方の情報を手に入れると、ずっと人肌で温めるだった。
これは、しばらくは、四人はたまごに釘づけだな。
あ、そうだ。一人でドラゴン退治に行こうかな?
ただキャンセルするぐらいならチャレンジしてみてもいいだろう。
「ねえ、ナビ。さっきのドラゴンって俺だけでも倒せる?」
『はい。可能かと思われます。さきほど手に入れた結界のナイフ2本と、もう一度入った時に2本手に入れて、4本で結界を張ればドラゴンに魔法の効きがよくなると思われます』
「え! そういうの出来たの?」
『はい』
はいって……。
ナイフを確認してみると、
結界のナイフ――一回限りだが結界を張り、ドラゴンの能力を下げる。1本で10%、2本で25%、3本で50%、4本で80%。
うん? 80%って凄いな。取りあえずチャレンジだ。
「あ、あのさ、ちょっと出かけて来ていいかな?」
「いいよ~」
「「いってらっしゃい」」
快く承諾してくれた。って、こっちすら見てないんですけど……。
まあ、取り合いするよりはいいか。
「行ってきます」
□ ◇ □ ◇ □
ドラゴンは、すやすや寝ている。
再挑戦した俺は、目の前の敵を倒して一直線にボスの所まで来た。うん。走ったから10分程だと思う。長期戦になっても何とかなる時間はあるはずだ。
ボスは、物理も魔法もほとんど効かないので、本来ならドラゴンキラーを使って倒す。持ってない俺達は、倒せなかったらたまごだけ持ち帰る事にしていた。
本当は、もっとレベルが上がってから来る場所だからね。
「よし。オールシールド。オールマジックシールド」
ナイフを手に、ドラゴンに近づいた。そして、ナイフを投げる。動かない的なので、4本とも命中だ!
さすがにドラゴンが目を覚ます。戦闘開始だ!
「オールファイヤー、オールファイヤー、オールファイヤー、オールファイヤー、オールファイヤー、オールファイヤー……」
俺は、ひたすらファイヤーを唱え続けた。
相手の攻撃は、ブレス以外は届かない位置から攻撃だ。後は逃げ回りながら攻撃なので、なんとかならないかな……。
魔法の威力なら100レベル相当だとリラさんが言っていたし。
オールで攻撃力1.5倍のファイヤーで、なんと5分程であっけなく終了してしまった。
たぶん、全ての攻撃を受けていれば、こっちが倒されていたと思うけど、ナビの話では、相手の守備も攻撃もスピードもダウンするナイフなので、効果抜群だったんだ。
まあ普通は魔法攻撃にクールダウンがあるから、10倍時間がかかる事になるけどね。
――ボスを討伐しました。
――経験値500取得しました。
――ダイス2で、ドラゴンの皮を取得しました。
――一人で討伐したので、ダイスを7回振れます。
――ダイス1で、ドラゴンの鱗を取得しました。
――ダイス4で、ドラゴンの牙を取得しました。
――ダイス3で、ドラゴンの爪を取得しました。
――ダイス2で、ドラゴンの瞳を取得しました。
――ダイス4で、ドラゴンの牙を取得しました。
――ダイス5で、魔法の石を取得しました。
――ダイス3で、ドラゴンの爪を取得しました。
経験値500でも上がらなかった。しかし見事にドラゴンのモノだな。
あとは戻るだけ……うん? あ、宝箱!?
いつの間に!
「あの宝箱って、倒したから出現したの? マップになかったと思うんだけど」
『シークレットチェストです。マップに表示されない宝箱です』
「そんなのもあるのか……」
戦闘に夢中だったから目に入らなかったんだ。
どれどれ、鉱石だ!
ドーラゴ鉱石――ドラゴンを倒せる武器や装備の材料の一部。レア。
倒す為の素材がここにあるって……。まあ討伐イベントにも使えるからいいか。
俺は、脱出魔法陣で脱出した。
――ドラゴンの谷間ダンジョンをクリアしましたました。
――クリアおめでとうございます。初クリア報酬で、ドラゴンの鱗を取得しました。
――クリア1回目で、1回ダイスを振れます。
――ダイス4で、ドラゴンの牙を取得しました。
――経験値570取得しました。
――おめでとうございます。レベル23になりました。
――ダンジョンポイントを100取得しました。
「「一人で倒したの!?」」
みんな一斉に驚いて、俺に振り向いた。彼女達にもダンジョンポイントが入ったようだ。
「うん。まあね……」
「さすがだわ」
ぼそりとリラさんが言った。