第86話》彼女達に苦手なモノがありました
「では、いきましょう」
いつも通りリラさんが先頭で歩き出す。
――ダイス7で、岩が7つ出現しました。
目の前に岩が本当に7つ出現した。
「きゃー!」
「いやぁ!」
驚いた! リラさんがきゃーっという悲鳴を上げた! そして、ミチさんと一緒に俺の後ろに隠れる。モアレさんに至っては、最初から様子みで俺の後ろに居た。
「何よあれ! まだモンスターの方がいい!」
「えぇ。かわいいじゃん!」
「いや、リラさん、あれモンスターだから……」
穴から出て来たモンスターは、見た目トカゲそのもののだった。蛇というかそういう模様にギョロっとした目。色は、薄茶色。それが、一斉に穴から出て来た。
正直、穴からぞろぞろ出て来て気持ち悪い。
穴は、模様の様に開いている。大きさは、片足がスポッと入るぐらい。落ちはしないと思う。それがずっと続いていて、見える範囲の穴から出て来るからみんな悲鳴を上げ、俺の後ろに避難した。
数がはんぱないな。
「あのさ、とりあえず、穴に蓋をしよう! そうしないと五分後に倍だよ?」
「……そ、そうね。とりあえず、減らしてもらえる?」
リラさんが言った。どうやらあれには近づきたくないようだ。
「オールファイヤー」
「一体も倒れないね?」
唯一喜んでいたママルさんが言った。
「あのさ、ナビ。もしかしてオールって、目に見える敵全部だったりする?」
『はい。そうです』
「げ、30体ぐらいいるんだけど……」
のっそのっそと歩いているので、ママルさんでも逃げられそうな速さだ。仕方がない。一体ずつ倒そう。
「ねえ、ママルさん。悪いけど岩で穴を塞いでくれない? 俺は、敵を倒して行くからさ」
「了解!」
「あ、あまり遠く行かないでね。エリア出ちゃったら困るから」
「わかったよう」
「ファイヤー」
うん、一体ずつなら倒せるようだ。
「ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー。周りの倒すから、岩で穴埋められる?」
後ろに隠れる三人に聞いたら全員首を横に振った。
君達、ドラゴンを飼育できるんですか? はぁ……仕方がない。倒しつつ穴を塞いでいこう。
「ファイヤー、ファイヤー」
これ、90分でクリアできるのかな?
突っ切って行きたいけど、穴があるのでジグザグに進まないといけない上に、モンスターがいるので邪魔で倒して行かないといけない。
その前に、多数決で反対されるだろうから無理だろう。
「90分経ったらゲームオーバーだよ。また最初から挑戦になるよ? 一度で済ませたいなら、頑張って穴を塞いでほしいんだけど……」
「やるわ!」
「リラさん、いつも通りお先にどうぞ」
「……あ、モアレ先に行く?」
「いえ。私は一番最後で大丈夫です」
ダメだこりゃ……。
「ママルさん、ちょっとだけ作戦変更! 直線状にある穴だけ埋めて進もう! じゃないと間に合わない! 俺も塞ぎに行くから塞いだらついて来て!」
最後の台詞は三人に言った。
「わかったわ! ファイトよ」
「なぜかエットさんが、頼もしく見えるわ!」
「宜しくお願いします」
「うん……」
頼もしく見えるって……いつもはそうではないんですかぁ?
って、これ岩足りなくない?
「ファイヤー、ファイヤー」
岩を持って穴を塞いで……。
「ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤーファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー」
って、見えても魔法が届かないや。
「みんな、遠いから大丈夫でしょう! 埋めよう」
三人は頷いて、岩を持って穴を埋め始めた。
よかったぁ。これで何とかなりそうだ。
――ダイス5で、岩が5つ出現しました。
どうやら岩がすべて穴にセットされたら、次のサイコロが振られるようだ。
自分達の目の前に出現するから出来るだけ皆前に出て欲しいけど……無理だな。