第84話》それは模様替えとは言わないと思う
「あぁ、もう! 頭にくる!」
ギルド部屋に戻って来た途端、リラさんは叫んだ。
「モアレ、あなた、やめないわよね? ここに入るわよね!?」
「え……」
「リラさん、落ち着いて」
リラさんは、モアレさんにぐいぐい迫って言うから、彼女はたじろいでいる。
「思うに誰もカースド・バディだと思ってなかったと思うわよ。MP減っただろうけど、増えた通知が来たのなら文句言わないでしょう。まあ一人30だと結構減るけどね」
俺もミチさんと同じ意見だ。魔力の初期値が100以下なら0になるだろうけど、組んだ相手はきっとレベルがあるプレイヤーだからかなり恩恵があるパッシブだ。
「俺もそう思うよ」
「うん……」
「それよりモアレは、ナビを使ってないの? あなたも持ってるでしょう?」
「ナビ?」
「ナビゲーションっていう魔法だよ」
俺が教えると、あぁとモアレさんはわかったようだ。
「最初MP少なかったし、使った事なかったわ」
「そう。使っていれば、結果が違ったかもしれないわね」
「あの、本当に私が入って大丈夫でしょうか? 噂流さないって言っていたけど……」
「流さないと思うわよ。彼らにメリットはないからね。私達のギルドにもデメリットはないし」
リラさんが言うと、全員頷く。
「でもMP減るけど大丈夫ですか?」
「問題ないよ。俺、MP4桁だから」
「え!?」
「ね、だから問題解決って言ったでしょう?」
ママルさんが、どや顔だ。
「よ、宜しくお願いします!」
モアレさんが、深々とお辞儀をした。
「よかった。では改めて、俺達のギルドにようこそ!」
「じゃ、観賞植物よ!」
「ねね、ペットとかいないの?」
ミチさんが地図のテーブルに向かうと、ママルさんがペット~と言いながら向かう。
「ペット!? ちょっとそれ、模様替えと言わないよね?」
俺が慌てていると、モアレさんが不思議そうに俺達を見ている。
「私、クッションみたいのもほしいわ。あ、かわいいライトもいいわね」
とリラさんも飾る気満々だ。
「あ、モアレも選びなよ」
ママルさんが、モアレさんを手招きする。戸惑うも皆の元へ彼女が向かった。
まあいいか。仲良くやっていけそうだし。
「エット!!」
叫んだのは、ママルさんだ。
なんだろう? 嫌な予感がする。
「な、何?」
「「「これがいい!」」」
ママルさんに呼ばれ行くと、モアレさんを覗く三人が声を揃え指差した。それは、ペット! 結局それになったんですか……。
ギルドペット――
□ギルド部屋内でペットを飼う事が出来ます。
□リアルにいる動物の場合は、ギルドコインで購入できます。その場合、合わせてエサも必要になります。
□空想ペットは、イベントをクリアして手に入れる事が可能です。条件もあり必ず捕まえられるわけではありません。また、エサも自分で手に入れないといけません。
□ペットは、世話をしないと狂暴になったり死亡したりします。また、成長はしますが、寿命はありません。お世話をする限り、一緒に生活できます。
□意思の疎通――芸を教える事も出来ます。また空想ペットは、話せるようになる事があります。
□空想ペットには、レベルがありペットの種類によって色々な恩恵があります。
どうやら彼女らは、空想ペットが欲しい様だ。
いいよね? という表情で俺を見る。
「クリスタルダンジョンには行かないの?」
空想ペットは、イベントでゲットする事になっている。
「大丈夫よ。今、ナビに聞いたらクリスタルダンジョン自体は消えないんだって。私達はクリアしているからいつでも挑戦できるわ!」
「そ、そうなんだ。因みにどれがいいの?」
「九尾!」
「ドラゴン!」
「フェンリルがいいわ」
九尾がリラさん、ドラゴンがママルさんでフェンリルがミチさん。見事に分かれたな。
「ママル、ドラゴンって討伐対象でしょう?」
「え~~。でもあるし! かっこいいじゃん!」
「もふもふできるのは、フェンリルよ」
「もふもふなら九尾もできるわよ!」
「ドラゴンだときっと空を飛べるよ」
って、また言い争いが……。
はぁ。
「喧嘩になるならペットはいらないよ」
俺がそう言うと、三人がモアレさんを見た。彼女に決めてもらうつもりらしい。これで、違うペットが出て来たら更に大変な事になりそうだけど。
「……ド、ドラゴンがいいです。空を飛びたい」
まさかのドラゴンですか?!
「やったぁ!」
ママルさんは、大喜び。二人はまさかの意見にがっくりしていた。