第82話》モアレの語り
モアレさんが語った話は、もしかしたら俺もそうなるかもしれないものだった。違いはきっと、ランクではなく最小値だ。彼女は、魔力が最小値で、10だったんだ――。
「レベル15の時に、ダンジョンクリア時にラックが増えるバディを手に入れたわ。ダンジョン開始時、MP1になる物だったけど、回復薬を持って私は、一人でダンジョンを周ってラックを上げた。でも150までしか上がらなかった」
そっか。レベルの10倍だとその時は、知らなかったんだ。
「そして、その時にカースド・バディを手に入れた。でもそれがそういう物だと知らなかった。他の人からMPをもらうものだからどうしようかと思ったんだけど、吸収の量がパーティーメンバーの人数分だったの。リーダーからしか吸収しないようだし、それなら大丈夫かなって装備しちゃったんだよね」
そこまで話すと、モアレさんは俯いた。
「でもレベルが上がると、吸収の量が増えていったの。メンバー×エンチャントだったのよ。レベルが上がった分、増えて行く。おかしいと思ったリーダーもいるけど、10程なのでそこまで問題視されなかったの」
「なるほど、安易に考えていたって事ね」
リラさんが頷いて言った。
そう言えば、それまでは剣士系だったんだ。いつ魔法使い系になったんだ?
「そうなの。安易に考えていた。ううん。考え無しだった。レベルが20になって、また一人でラックを上げている時に、魔導士のローブというバディを手に入れたの。これは、攻撃力と魔力の初期値を入れ替えるモノだった。★1だったけど杖もちょうど手に入っていて、魔が差したというか、レベルが上がる度に魔力と最大MPが増えるからこれで強くなれるって思っちゃったんだよね。このローブさえ装備しなければ、よかったんだけど……」
「つまり飛躍的にMPを吸収するようになってしまったというわけね」
ミチさんが言うと、モアレさんが頷く。
「それってどれくらい?」
「……今だと、一人につき30」
「あなたがリーダーになれば解決じゃない?」
リラさんが言うと、モアレさんは首を横に振った。
「条件にリーダになれないってあったの。しかもギルドマスターにもなれなくて……」
「なるほどね」
リラさんは、それなら無理かと頷いた。
これがバディの恐ろしい所なのかもしれない。
彼女がどこのギルドにも所属しなかったのは、普通はギルド内でパーティーを組むからだろう。
「で、ついさっき、とうとう私がカースド・バディの持ち主だってばれちゃって。ダメだとわかっていても、レベルを上げるのには一人では無理で、リーダーがかぶらないようにと選んでパーティーに参加していたんだけど、私かもと目星をつけてパーティーに誘ったみたいなの」
「なるほどね。あなた以外は知り合いのパーティーだったのね」
リラさんの言葉に、そうだったとモアレさんが頷く。
「悪いのは私だから。隠してパーティーに参加したんだし。ごめんなさいって謝ってMP回復薬をおいて逃げて来たの。だからきっと、噂は広まっているわ。誰も私をパーティーに入れてくれないでしょう?」
「へえ。そんなバディもあるんだね! でも解決だね、エット!」
「え? 解決?」
ママルさんの言葉に不思議そうにモアレさんはしている。
「俺のMPなら大丈夫って事だよ」
「ちょっと待って! そういう問題でもないわよ。エットわかってる? この人は、恨まれているのよ。そんな人を入れたらこのギルドに誰もこなくなるわ!」
このごもっともな意見は、リラさんだ。
確かにそうだけど、このままだとかわいそうだ。だってこれは、仕様なんだし。
「ねえ、バディって二面性あるわよね? リーダーはMPを取られるだけなの?」
聞いて来たのは、ミチさんだ。言われればそうかも。
「ねえナビ。MP取られて終わりなの?」
『何か別に条件があるはずですが、わかりかねます』
「ねえモアレさん、リーダーは、他に増えるとか減るとかないの?」
「え? あぁ、MPに気を取られてちゃんと見てなかったわ。……最大値の数値をMP1につき、0.1%増やすって書いてあるわ」
「それって、MPを消費して最大値を増やすって事よね?」
リラさんの言葉に全員頷く。
「ねえ、ナビ。リーダー側には何も通知ないの?」
『あります。最大値がいくら増えたかの通知はあるはずです』
「え? そっちの通知があるの?」
「何それ。マイナスなだけじゃないじゃない。しかもリーダーには通知いっているんじゃない」
リラさんもナビに聞いたようだ。
「増えた方の通知がいっているみたいだよ」
「え? でもやっぱりMPが減ったって言われて……」
俺の言葉に驚いてモアレさんは言った。どうやらそのプレイヤーに聞いた方がよさそうだ。