第78話》スピードが勝負の最終戦
階段を駆け上がると、少女がいた。なんていうか、魔法使いの様な。でもカラフルな服で、プレイヤーではなさそうだ。
「何惚けてるのよ! 魔法!」
「え?? あ、えーと、オールシールド、オールマジックシールド」
リラさんに言われ慌ててシールドを展開する。
「私のアトリエにようこそ。歓迎するわ」
たぶんクリスタルで出来た杖……ロッド? それを掲げそこで円を描くようにグルグルとしている。
「クリスタルショット!」
「え? 嘘!」
リラさんが驚いて声を上げた。
シールド無視で、攻撃を食らった! って、HPが半分になった。この攻撃が、クリスタルがないとHPがゼロになる攻撃かな? クリスタルがあったから半分ですんだ。
「オールヒール!」
一応、回復しておく。
「ありがとう。エット」
「じゃ行くわよ」
さあ、ここから総攻撃だ!
あらかじめ、ナビから対策を聞いている。魔法を反射するので、攻撃魔法もデバフの魔法も相手には掛けられないので、物理でしか攻撃方法はない。因みに、スキルは大丈夫らしい。
「スピードチェンジ!」
これで、魔力の半分が素早さに変換された。勿論、次に掛けるシールド系も数値が半分になる。って、俺のHPがちょっとしかないから、壊されたら掛け直す暇なんてないと思うけどね。
素早さは、36,000超えている。ダブルボウの攻撃は、素早さ×80%+ダブルボウの追加攻撃。これを2回連続で行う攻撃だ。なので、58,000強ダメージを与えられる事にはなる。ただ、防御とかあるだろうからそれ以下になるけど。
リラさんの話だと、防御はあっても3,000ぐらいだろうって事だ。じゃないと初心者は、ダメージを与えられない。こういうイベントの敵は、HPが凄いらしい。
「今回も当たらないよう!」
ママルさんが、嘆いている。彼女の場合は、攻撃力より素早さが足りない様だ。そういう装備品を見つけないとダメかもしれない。
相手は、魔法攻撃をしてきている。でも素早さは俺達の方が上らしく、ママルさん以外は交わせている。
思ったけど、やっぱりEランクも凄いのかも。ランクによって差が出てる。まあ、バディを手に入れれば差は埋まるかもだけど。
「ボス戦で死んでも、倒せば復活だから大丈夫よ」
リラさんが、ママルさんに言った。
そうらしい。全滅しない限り死んだ事にはならい。だからHPが0になってもその場に倒れるだけ。
今回はママルさんには悪いけど、相手の攻撃を避けられないならどうにもならない。
「うわぁん。素早さがほしいよう」
ママルさんが、そう言って倒れた。
「本当に消えないのね」
ミチさんが驚いて言っている。
「ジャンプ!」
「いいわね。私もジャンプで攻撃出来れば、もう少し威力上がるのになぁ」
俺のジャンプを見てミチさんが零した。
そうだった。ジャンプも攻撃力に関係あった。今、2.9あるので、2.9倍……あれ? 俺の攻撃凄い?
総合一回に17万越え!!
それでも全然倒れないボスって一体なんなんだ~!
でも考えれば、レベル高い人はこれぐらいの攻撃与えてるよな。
「きゃ……」
ミチさんが、敵に攻撃を与えられた。今まで避けていたのになんで?
「敵のスピードが上がった?」
『いえ、スロー攻撃が始まりました。敵のHPが10%を切ったようです』
「げ、スロー攻撃!」
俺が呟くと、嫌な回答がナビから返って来た。早々に倒さないと、俺達はスピードを半分にされる!
「まずいわね。これこのままだと攻撃が当たらなくなるわ」
リラさんが言った。彼女は、元は素早さが低い。攻撃力を落として素早さを上げている。下げられたら上げられるけど、その分攻撃力が下がる。
俺もガッツリ下がる事になるよな。攻撃が当たらなくなる事も、敵の攻撃が当たる様になる事もないだろうけど、俺一人になりそうだ。
その予想は的中する。ミチさんが攻撃を避けられなくなって倒れ、そしてリラさんも倒れた。
「ジャンプ!」
「お見事です。あなた達になら私の財産を差し上げましょう――」
そう言って、ラ・ラビーレはクリスタルのロッドを残しやっと倒れた。そのロッドが、光り輝きそして光は、俺達に飛んできて体を包んだ。
「! びっくりした」
――おめでとうございます。錬金術師ラ・ラビーレの秘密のアトリエの島をクリアしました。
――クリスタルが、クリスタルダイスになりました。
――クリスタルダンジョンに行けるようになりました。
「え~~」
むくっと起き上がったママルさんが叫んだ。
びっくりした。復活したのか。
でもまさか、クリスタルがクリスタルダイスになるなんて!




