第76話》便利な魔法エクスプロージョン
俺達はしばし、うち寄せる波を見つめていた。
「あれもないわよね~。超めんどくさい迷路を作らないでほしい」
うんうんとリラさんの言葉に、俺達は頷いた。
確かにある程度の強さがあれば、クリアできるかもしれない。しかし、根気も必要だ。
クリスタルの欠片もここに来る洞窟で手に入れる事も出来るので、必ずしも洞窟のダンジョンでなくてもいい。強かったら一番距離が短いコースを行けばいい。でも結局、クリスタルの欠片が必要なので、敵を倒しに行かなくてはいけない。
そして、ここでクリスタルを作る。
もしかしたら、ボスと対戦してからクリスタルの事を知るかもしれない。
「あ、そうだ。ジャンプして、エクスプロージョンを放つと、壊れる樽を全部壊せたから、俺が部屋を周って樽を壊して行くよ。取りあえず全部宝箱か確かめよう! 開けたらスイッチって事もあるかもしれなし」
「何その便利なやり方!」
リラさんが、ずるいと言う感じで言った。
「じゃ、樽の道作りは、エットさんに任せるわね」
「はーい! 私、頑張って宝箱あけるね!」
「全員でチェックしていくのよ! 宝箱を開けたかどうか、わかる印も必要よね」
リラさんの言う通りだ。ジャンプして確認出来るけど、正面からだと宝箱が見えないからわからない。
「うーん。ナビ。宝箱って持ち上げられる? っていうか、動かせる?」
『はい。部屋からは出せませんが、動かせます』
「だったら、開けた宝箱は樽の上に上げよう。そうしたら見えるよね?」
「エット、頭いい!」
「あら、いい考えね」
「では今回は、エットが樽を壊して、私達が宝箱の中身を手に入れた後、樽の上に宝箱を上げて行きましょう。一応仕掛けが無いかも見てね」
リラさんに言われて、ミチさんとママルさんは頷いた。
俺達が地下室にワープすると、セーフティエリアが発動した状態で、異次元の入り口も健在だ。そこにリラさんが入って行く。俺達も続いた。
出た場所はミチさんの読み通り、さっきとは違う面だ。4つ目のドアが壊れているから、最初の所から右に曲がった所の方に出た。
「やっぱりね」
ミチさんが呟いた。
「じゃ俺、壊して行くね。あ、そこの壊した部屋は宝箱開けた所だから」
「じゃ、そっちに向かってやっていって。そこに辿り着いたらその宝箱も一応、上げておくわ」
リラさんの言葉に頷き、俺は目の前の部屋に入った。
「ジャンプ、エクスプロージョン!」
三人が見守る中、俺は樽に向け放った。ここもやっぱり一番奥の壁側に宝箱がある。そして、入り口も真ん中と一緒だ。
「じゃ、次に行くね!」
「ここは私がやるわ」
リラさんが、するようだ。
こうして、部屋に入りエクスプロージョンを放って行った――。
「ここが最後、ジャンプ、エクスプロージョン!」
すとんと着地する。結構時間かかったな。まあドアを開け、一歩入ってジャンプして、だもんな。
カーン。
時間か! 気づけば砂浜だ。
「ねね、何が入ってた?」
ママルさんが、みんなに聞いて来た。
「クリスタルキーね」
「私もよ」
「やっぱりそうなんだ~」
ミチさんが答えると、リラさんも答えキーを出した。リラさんが13個、ミチさんが7個、ママルさんが4個。随分と差があるな。俺も1個持っているから全部で25個か。それを全部俺がもらって、鞄にしまった。
「宝箱の回収だけで、2回もかかちゃうのね」
リラさんが言う。
確かにそうだ。俺も加わるから次で全部開けられると思う。
さて、三度目のチャレンジだ。まあ、まだ宝箱しか開けてないけど……。
今回は、3つ目のドアが壊れている面に出た。
「どうやら右回りになっているようね。今の所はだけど。私とママルは左に進むわ。エットとミチは右からお願い。終わったらそっちに行くわ」
俺達は頷いて、行動開始だ。ミチさんが先に入ったので、俺はさらに左の部屋へ向かう。
「疾風弾! 疾風弾……」
リラさんが、スキルを使う声が聞こえた。なるほど、素早さを上げていたのか。一番素早さが少ないママルさんが、時間が掛かっていたから回収に差があったんだ。
樽の間をすり抜け宝箱に到着すると、開けてクリスタルキーを取り出す。やはりこのカギしか入っていないようだ。
「ねえ、このカギってこのアトリエにある宝箱のカギなの?」
宝箱をの中や外側を確認しながらナビに聞いた。
『いえ、宝箱ではなく、仕掛けのスイッチのキーです』
「え!?」
じゃこれ、全部回収しないといけないのかもしれない。
一応、宝箱が置いてあった場所も確認したけど、仕掛けは何もなさそうだ。宝箱を樽の上に上げ、次の部屋に向かう。
そうして11個目のカギをゲットした時だった。辺りからガガガっと大きな音が響き渡った! 振動もある! これってきっと、俺のが最後のカギで仕掛けが発動したんだ!!